給付型と貸与型の奨学金は何が違うのか 複雑化する修学支援制度の賢い利用方法

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大学や専門学校への進学を考える家庭にとって、奨学金は教育費を準備する重要な手段です。しかし、日本の奨学金制度は年々複雑になっており、利用できる支援を十分に理解していない学生や保護者も少なくありません。

日本学生支援機構の奨学金には、返済不要の給付型奨学金、無利子の第1種奨学金、有利子の第2種奨学金があります。

さらに、2020年度に始まった高等教育の修学支援新制度では、給付型奨学金と授業料等の減免が組み合わされました。2025年度からは多子世帯に対する授業料等減免も拡充されています。

一方、日本経済が金利のある世界に移行したことで、有利子奨学金の返済負担は増加しています。

2026年夏には、第2種奨学金の利率固定方式が上限の3%に達しました。

こうした状況では、奨学金を単に借りられるかどうかではなく、どの制度を優先的に利用するかが重要になります。

今回は、給付型と貸与型の違い、修学支援新制度の仕組み、多子世帯への支援、奨学金を利用する際の注意点について詳しく解説します。

奨学金には返済不要と返済必要の2種類がある

日本の奨学金制度を理解するうえで、最も重要なのは給付型と貸与型の違いです。

給付型奨学金は、原則として返済する必要がありません。

経済的な理由で進学が難しい学生に対して、国などが修学に必要な資金を支給する制度です。

一方、貸与型奨学金は、学生本人がお金を借り、卒業後に返還する仕組みです。

貸与型には無利子の第1種奨学金と、有利子の第2種奨学金があります。

第1種奨学金は利息が発生しないため、借りた元金を返還することが基本です。

第2種奨学金は元金に加えて利息を支払う必要があります。

例えば、300万円を借りた場合、第1種奨学金では原則として300万円を返還します。

第2種奨学金では、適用利率や返還期間によって返還総額が300万円を上回ります。

この違いは、卒業後の家計に大きな影響を与えます。

奨学金を検討する際には、まず返済不要の制度を確認し、次に無利子の制度、最後に有利子の制度を検討することが基本になります。

給付型奨学金は家計の経済状況が重要

日本学生支援機構の給付型奨学金は、主に経済的に修学が困難な学生を支援する制度です。

対象となるかどうかは、世帯の所得や資産、扶養状況などによって判断されます。

また、学修意欲や学業成績などに関する要件もあります。

重要なのは、単純に保護者の年収だけで支援対象が決まるわけではないことです。

同じ年収500万円の家庭でも、扶養する子どもの人数や世帯構成によって判定結果が異なる場合があります。

また、給与所得者と自営業者では、所得の計算方法が異なります。

そのため、年収だけを見て給付型奨学金の対象外だと判断することは適切ではありません。

実際の判定では、住民税の課税情報などが用いられます。

学生や保護者は、日本学生支援機構が提供する進学資金シミュレーターなどを活用し、対象となる可能性を確認することが重要です。

ただし、シミュレーションはあくまで目安であり、最終的な採用結果を保証するものではありません。

修学支援新制度は給付と授業料減免を組み合わせる

2020年度に始まった高等教育の修学支援新制度は、日本の教育費支援を大きく変えました。

この制度では、給付型奨学金と授業料等の減免を組み合わせています。

給付型奨学金は、主に学生の生活費などを支援する役割を持ちます。

一方、授業料等減免は、大学や専門学校などに支払う授業料や入学金の負担を軽減する仕組みです。

例えば、住民税非課税世帯の学生が私立大学に進学する場合、一定の要件を満たせば、授業料について年間最大70万円、入学金について最大26万円の減免を受けられる仕組みがあります。

さらに、自宅外通学などの条件に応じて給付型奨学金を受けられる場合があります。

ただし、減免額には上限があり、実際の授業料が全額免除されるとは限りません。

また、学校が制度の対象機関であることや、学生本人が学業要件などを満たすことも必要です。

授業料減免と給付型奨学金は、それぞれの支援内容を確認することが重要です。

多子世帯への支援拡充で何が変わったのか

2025年度から、高等教育の修学支援新制度における多子世帯への授業料等減免が拡充されました。

扶養する子どもが3人以上いる世帯について、所得制限を設けずに一定額まで授業料と入学金を減免する仕組みです。

例えば、私立大学の場合、授業料は年間最大70万円、入学金は最大26万円が減免の対象になります。

国公立大学についても、所定の上限額まで減免されます。

ただし、所得制限がないということは、すべての家庭が無条件で支援を受けられるという意味ではありません。

多子世帯に該当するかどうかは、扶養している子どもの人数などによって判定されます。

例えば、3人の子どもがいる家庭でも、長男が就職して親の扶養から外れた場合には、扶養する子どもの人数が変わります。

その結果、多子世帯としての要件を満たさなくなる可能性があります。

また、授業料等減免に所得制限がない場合でも、給付型奨学金の支給については別途所得要件などが適用されます。

授業料等減免と給付型奨学金を同じ制度として理解してしまうと、実際に受けられる支援額を誤認する可能性があります。

制度の利用にあたっては、扶養状況と支援内容を個別に確認する必要があります。

無利子の第1種奨学金を優先する理由

給付型奨学金の対象とならない場合でも、第1種奨学金を利用できる可能性があります。

第1種奨学金は無利子の貸与制度です。

借りた元金を返還する必要はありますが、利息が発生しないことが大きな特徴です。

例えば、毎月5万円を4年間借りると、借入元金は240万円になります。

第1種奨学金であれば、原則として返還する金額は240万円です。

一方、第2種奨学金では、適用利率に応じて利息が発生します。

金利上昇局面では、この違いが重要になります。

ただし、第1種奨学金には家計基準や学力基準などがあり、希望するすべての学生が利用できるわけではありません。

また、給付型奨学金と第1種奨学金を併用する場合には、第1種奨学金の貸与月額が調整されることがあります。

これを併給調整といいます。

給付型奨学金を受けられるからといって、第1種奨学金も希望額をそのまま借りられるとは限りません。

実際に利用できる金額を確認したうえで、教育資金計画を立てる必要があります。

有利子の第2種奨学金は借入額に注意する

第2種奨学金は、第1種奨学金と比較して利用条件が緩やかに設定されています。

そのため、多くの学生が利用しています。

しかし、有利子である以上、金利上昇による返還負担を考える必要があります。

例えば、毎月8万円を4年間借りる場合、借入元金は384万円になります。

毎月10万円であれば480万円です。

毎月の借入額が2万円違うだけでも、4年間では96万円の差になります。

さらに、利息負担を含めると返還総額の差は大きくなります。

第2種奨学金の利率には上限3%が設定されていますが、借入額が大きければ返還負担も大きくなります。

また、適用利率は原則として貸与終了時に決定されるため、申込時点で将来の返還総額を確定することはできません。

学生と保護者は、利率3%の場合でも無理なく返還できるかを試算しておくことが重要です。

特に、自宅外通学の場合には、授業料だけでなく家賃や生活費も必要になります。

生活費をすべて奨学金で賄おうとすると、卒業時の借入額が想定以上に膨らむ可能性があります。

奨学金は利用できる上限額ではなく、必要な金額を基準に借りることが基本です。

奨学金と教育ローンは借りる人が違う

奨学金と混同されやすい制度に教育ローンがあります。

両者の大きな違いは、原則として誰が借入れを行うかという点です。

日本学生支援機構の貸与奨学金は、学生本人が借り、学生本人が返還します。

一方、一般的な教育ローンは、保護者などが借入れを行い、返済義務を負います。

また、資金を受け取る時期も異なります。

奨学金は原則として進学後に振り込まれます。

そのため、受験料や入学前に必要となるまとまった資金については、奨学金だけでは対応できない場合があります。

教育ローンは、商品や審査条件によっては入学前の費用に利用できます。

例えば、入学金や初年度授業料などで100万円が必要になった場合、奨学金の初回振込までの資金を別途準備する必要があります。

この場合、家庭の預貯金や教育ローンなどを組み合わせることが考えられます。

ただし、教育ローンにも利息が発生します。

奨学金と教育ローンを併用すると、親と子の双方が借金を抱える可能性があります。

教育資金を準備する際には、借入れの名義、金利、返済期間、返済開始時期を比較することが重要です。

奨学金の申込みは高校在学中から準備する

奨学金を賢く利用するためには、早い段階から制度を調べることが重要です。

日本学生支援機構には、進学前に申し込む予約採用と、進学後に申し込む在学採用があります。

予約採用は、主に高校在学中などに申込みを行う仕組みです。

進学前に採用候補者となることで、進学後の資金計画を立てやすくなります。

ただし、採用候補者となっても、進学後に必要な手続きを行わなければ奨学金の振込は始まりません。

また、入学前に必要となる資金については別途準備が必要です。

在学採用は、大学などに進学した後に申し込む制度です。

予約採用で申し込まなかった場合や、進学後に家計状況が変化した場合などに利用を検討できます。

さらに、家計が急変した場合には、給付型奨学金の家計急変採用や貸与型奨学金の緊急採用、応急採用などが利用できる場合があります。

保護者の失業や死亡、災害などによって家計が急変した際には、学校の奨学金担当窓口などへ早めに相談することが重要です。

奨学金は、必要になってから初めて調べるのではなく、進学を検討する段階から準備することが望まれます。

制度を知らないことが教育格差につながる

奨学金制度が複雑になることで、新たな問題も生じています。

それは、制度を理解している家庭と理解していない家庭の間に、支援の利用格差が生まれることです。

例えば、給付型奨学金の対象となる可能性があるにもかかわらず、制度を知らずに第2種奨学金だけを利用する場合があります。

また、多子世帯への授業料等減免が拡充されたことを知らず、進学費用を過大に見積もってしまう家庭も考えられます。

一方、制度を十分に理解している家庭では、給付型奨学金、授業料減免、第1種奨学金などを組み合わせ、借入負担を抑えることができます。

同じ所得水準の家庭でも、制度に関する知識の差が卒業時の借入残高の差につながる可能性があります。

これは金融リテラシーの問題であると同時に、教育政策上の課題でもあります。

国や日本学生支援機構には、制度の簡素化と分かりやすい情報提供が求められます。

高校や大学においても、学生と保護者が具体的な返還額まで理解できるよう、金融経済教育を充実させる必要があります。

結論

日本の奨学金制度は、給付型奨学金、第1種奨学金、第2種奨学金を中心に構成されています。

さらに、高等教育の修学支援新制度による授業料等減免や、多子世帯への支援拡充が加わり、教育費を軽減する仕組みは充実してきました。

しかし、その一方で制度は複雑化しています。

所得要件、資産要件、学業要件、扶養する子どもの人数などによって利用できる制度が異なるため、学生や保護者が正確に理解することは容易ではありません。

金利のある世界を迎えた現在、奨学金の選び方は卒業後の家計に大きな影響を与えます。

そのため、まず給付型奨学金と授業料等減免の対象となるかを確認し、次に無利子の第1種奨学金を検討することが重要です。

有利子の第2種奨学金を利用する場合には、利率3%を想定した返還計画を作成し、必要以上の借入れを避ける必要があります。

また、保護者は教育費の負担を考える際に、自分たちの老後資金とのバランスにも注意しなければなりません。

子どもの進学を支援するために親が過大な借金を抱えれば、将来の家計に別の問題が生じる可能性があります。

教育は将来への重要な投資ですが、その資金調達には慎重な判断が必要です。

制度を知ることは、単に奨学金を受け取るためではなく、卒業後の経済的な自由を守ることにもつながります。

奨学金制度が複雑化する時代だからこそ、学生と保護者には正しい知識に基づく資金計画が求められているのではないでしょうか。

参考

日本経済新聞 2026年10月12日 朝刊 「日本の奨学金、『金利ある世界』どう生きるか 識者『利率上限下げも』」

日本学生支援機構 給付奨学金及び貸与奨学金に関する公表資料

文部科学省 高等教育の修学支援新制度に関する公表資料

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