地方が自力で税収を増やすには何が必要か 再配分から稼ぐ地域経済へ

税理士
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東京都と地方の財政力格差が再び拡大しています。

そのため2027年度税制改正では、東京などに集中する地方税収を地方へ再配分する仕組みの拡大が検討されています。

財政力の弱い自治体に財源を移すことは必要です。

しかし、地方財政を長期的に強くするためには、再配分だけでは十分ではありません。

重要なのは、地方自身が企業、雇用、所得を生み出し、その結果として税収が増える仕組みをつくることです。

地方財政を再配分される財源から、自ら稼ぐ財源へ転換するためには何が必要なのでしょうか。

東京の税収が多い本当の理由

東京都の2026年度の税収は7兆3,856億円が見込まれています。

2008年度の5兆2,801億円から約4割増えました。

東京に税収が集中する理由は、単に税制が東京に有利だからではありません。

企業が集まっています。

本社機能が集まっています。

高所得の雇用が集まっています。

人口が集まり、消費も集まっています。

さらに高額な土地や建物も集中しています。

こうした経済活動の集積が、最終的に大きな地方税収となって表れています。

地方が税収を増やすためにも、税金そのものではなく、その前段階にある経済活動を見る必要があります。

税収は地域経済の結果として生まれる

税収だけを直接増やそうとしても限界があります。

税率を上げれば企業や住民の負担が重くなります。

それより重要なのは、課税対象となる所得や利益そのものを増やすことです。

企業の利益が増えれば法人関係税が増えます。

住民の所得が増えれば住民税が増えます。

消費が増えれば関連する税収も増えます。

住宅や事業用資産への投資が増えれば、固定資産税などにもつながります。

税収は地域経済が成長した結果として生まれるものです。

地方財政政策と地域経済政策を別々に考えないことが重要になります。

企業誘致から企業育成へ

地方経済政策では企業誘致が重視されてきました。

大企業の工場や物流施設を誘致できれば、雇用や税収が生まれます。

もちろん企業誘致は重要です。

しかし、それだけに依存することにはリスクがあります。

誘致した企業が撤退すれば、雇用も税収も一気に失われる可能性があるからです。

これから重要になるのは、地域の中から企業を育てることです。

地域企業が成長し、全国や海外から売上高を獲得できれば、その利益や雇用が地域に残ります。

外から企業を連れてくるだけでなく、地域から企業を育てる政策が必要です。

高付加価値の仕事を地方につくる

企業の数だけでなく、どのような仕事があるかも重要です。

同じ100人の雇用でも、所得水準によって地域にもたらす経済効果は変わります。

研究開発、情報通信、金融、経営企画、専門サービスなど、高い付加価値を生み出す仕事が増えれば、住民所得も上がりやすくなります。

住民所得が増えれば地域での消費も増えます。

さらに住宅や教育、サービスなどへの需要が生まれます。

その結果として地域企業の売上高が増え、自治体の税収にもつながります。

地方創生では雇用者数だけではなく、1人あたりの付加価値を高める視点が重要です。

本社機能を地方に残す

地方に工場があっても、本社は東京という企業は少なくありません。

この違いは地域経済に大きな影響を与えます。

本社には経営、財務、人事、法務、研究開発などの機能が集まります。

こうした部門には比較的所得水準の高い人材も集まりやすくなります。

本社機能が東京へ移れば、意思決定だけでなく高所得の雇用も地域から失われる可能性があります。

地方に企業を誘致するだけではなく、既存企業の本社機能を地域に残し、地域企業が成長しても本社を東京へ移さなくて済む環境を整えることが重要です。

若者が残れる仕事をつくる

地方の税収を考えるうえで避けられないのが人口問題です。

地方では進学や就職をきっかけに若者が都市部へ移動するケースが多くあります。

問題は若者が一度東京へ行くことではありません。

戻りたいと思っても、希望する仕事が地域にないことです。

所得水準やキャリア形成の機会に大きな差があれば、若い世代を呼び戻すことは難しくなります。

子育て支援や移住補助だけでは限界があります。

長期的に生活できる仕事と所得が必要です。

地方の人口政策は、雇用政策と一体で考える必要があります。

デジタル化は地方にとって大きな機会になる

かつて高付加価値の仕事は、大都市に集まりやすい傾向がありました。

しかしデジタル技術の普及によって、仕事と場所の関係は少しずつ変わっています。

オンラインで仕事ができれば、必ずしもすべての業務を東京で行う必要はありません。

情報通信、コンサルティング、設計、会計、法務、教育など、場所への依存度が比較的小さい仕事もあります。

地方に住みながら全国の顧客を相手に収入を得ることができれば、地域外から所得を持ち込むことができます。

これは地方経済にとって重要です。

地域内だけでお金を回すのではなく、地域外から売上高を獲得する企業や個人を増やす必要があります。

観光も外から所得を得る産業

観光も同じ考え方です。

地域外から訪れた人が宿泊し、食事をし、買い物をすれば、その地域に外部からお金が入ります。

農林水産物や地域ブランドの商品を全国へ販売することも同じです。

地方経済を強くするためには、地域内で所得を分け合うだけではなく、地域外から所得を獲得する必要があります。

輸出、観光、デジタルサービス、地域ブランドなど方法はさまざまです。

地域外から稼ぎ、その所得を地域内で循環させる仕組みをつくることが重要です。

稼いだお金を地域内に残す

地域外から売上高を獲得しても、そのお金がすぐ地域外へ流出すれば地域経済への効果は小さくなります。

地元企業への発注を増やす。

地域で人材を雇用する。

地域金融機関が成長企業へ資金を供給する。

利益を地域で再投資する。

こうした循環が必要です。

外から稼ぐ力と、稼いだ所得を地域内で循環させる力の両方があって初めて、地域経済は持続的に成長します。

その結果として自治体の税収も安定して増えていきます。

自主財源が増えれば地方自治も強くなる

地方が自ら税収を生み出すことには、財政面以上の意味があります。

自主財源が増えれば、国からの財源に依存する割合を下げることができます。

自治体自身が地域の課題に応じて政策を選択できる余地も広がります。

子育てに重点を置く。

教育に投資する。

産業振興を進める。

高齢者福祉を充実させる。

地域によって必要な政策は違います。

自らの財源を持つことは、自ら政策を決める力を持つことでもあります。

財政的な自立は地方自治の自立につながります。

再配分は必要だがゴールではない

もちろん、すべての地域が東京と同じように稼げるわけではありません。

人口が少ない地域でも道路、医療、教育、福祉などの行政サービスは必要です。

そのため地方交付税や地方税収の再配分は今後も必要でしょう。

重要なのは、再配分を地方政策のゴールにしないことです。

再配分は現在の財政格差を調整するための仕組みです。

地方経済の成長は将来の税源をつくるための取り組みです。

両者は役割が違います。

現在を支える再配分と、将来をつくる成長政策を同時に進める必要があります。

結論

東京と地方の財政力格差が広がれば、税収再配分を強化する議論が出てくるのは当然です。

どこに住んでも一定水準の行政サービスを受けられるようにするため、財政調整は必要です。

しかし東京から地方へ税収を移すだけでは、地方経済そのものが強くなるわけではありません。

地方が本当に目指すべきなのは、企業が育ち、雇用が生まれ、所得が増え、その結果として税収が増える経済構造です。

企業誘致だけでなく地域企業を育てる。

高付加価値の仕事を増やす。

若者が働き続けられる環境をつくる。

デジタル技術を活用して地域外から所得を獲得する。

そして稼いだお金を地域内で循環させる。

こうした積み重ねが自主財源を増やします。

地方財政の強さを、東京からいくら再配分されるかだけで測る時代から、自らどれだけ継続的に所得と税収を生み出せるかで考える時代へ。

2027年度税制改正の議論では、税収をどう分けるかと同時に、地方で新しい税源をどう生み出すかという視点も欠かせないでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年10月8日朝刊 東京と地方の財政格差、08年度以来の大きさ 総務省が再配分拡大検討

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