60代から始まる第2の住宅すごろく 老後の住み替えを考える

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住宅すごろくというと、若い世代の話を思い浮かべるかもしれません。

就職して賃貸住宅に住む。

結婚して少し広い住宅へ移る。

子どもが生まれてマンションを購入する。

さらに広い戸建て住宅へ住み替える。

昭和の住宅すごろくには、このような一定の方向性がありました。

しかし人生100年時代には、住宅すごろくは60代で終わりません。

むしろ子どもの独立や退職をきっかけとして、第2の住宅すごろくが始まります。

60代から80代、さらにその先まで、どこでどのように暮らすのか。

老後の住み替えは、これからの住宅選択における大きなテーマになります。

子育てのための住宅が広すぎる

40代や50代では、子どもと暮らすことを前提に住宅を選んでいる家庭が多いでしょう。

3LDKや4LDKのマンション。

郊外の戸建て住宅。

子ども部屋。

広いリビング。

家族4人で暮らすには必要だった住宅も、子どもが独立すれば夫婦2人になります。

さらに将来1人暮らしになる可能性もあります。

家族構成が変わっているのに、住宅だけが子育て期のまま残っている。

60代は、この不一致を見直す時期になります。

広い住宅には維持費がかかる

住宅は広ければよいとは限りません。

広い戸建て住宅なら、外壁や屋根など修繕する面積も大きくなります。

庭があれば手入れも必要です。

使わない部屋にも固定資産税などの負担はかかります。

マンションでも専有面積が広ければ、物件によっては管理費や修繕積立金の負担が大きくなります。

現役時代には問題にならなかった住宅維持費も、年金生活に入れば重く感じることがあります。

老後の住み替えは、住宅の大きさを生活規模に合わせ直す機会でもあります。

通勤しなくなれば住宅の条件も変わる

現役時代の住宅選びでは、勤務先への通勤時間が重要です。

しかし退職すれば、毎朝会社へ通う必要はなくなります。

それなら郊外へ移ってもよいと考える人もいるでしょう。

一方で、通勤がなくなったからこそ駅近住宅の価値が高まるという考え方もあります。

高齢になれば自動車を運転しなくなる可能性があるからです。

駅。

スーパー。

病院。

金融機関。

飲食店。

日常生活に必要な施設へ歩いて行けることが重要になります。

現役時代の「会社に近い住宅」から、高齢期の「生活に近い住宅」へ。

住宅選びの基準が変わります。

階段が老後の負担になる

若いころには何でもなかった段差や階段が、高齢になると大きな問題になることがあります。

2階建てや3階建ての戸建て住宅では、寝室と浴室、トイレなどが別の階にある場合があります。

毎日の階段移動が負担になる可能性があります。

玄関の段差。

浴室の段差。

廊下の幅。

住宅設備の位置。

60代では問題なくても、80代になったときにどうかを考える必要があります。

老後の住宅では、現在の身体能力ではなく将来の身体変化を前提にすることが重要です。

60代は住み替えを実行しやすい時期

老後の住み替えを考えるなら、身体が十分に動く時期に実行するという考え方があります。

住宅を売却する。

荷物を整理する。

新しい住宅を探す。

契約する。

引っ越す。

住所変更などの手続きをする。

住み替えには想像以上の作業があります。

80代になってからすべてを行うより、60代や70代前半のほうが対応しやすい場合があります。

「困ってから引っ越す」のではなく、「困る前に住み替える」という発想です。

住宅ローンをどうするか

60代の住み替えでは、住宅ローンとの関係も重要です。

現在の住宅ローンが残っている場合、売却代金で完済できるかを確認する必要があります。

一方、住宅ローンを完済している住宅なら、売却代金を次の住宅購入に利用できます。

例えば郊外の広い戸建てを売却して、より小さなマンションへ移る。

売却代金の範囲内で次の住宅を購入できれば、新たな大きな借入れを避けられる可能性があります。

老後の住み替えでは、「より高い住宅へ進む」必要はありません。

住宅規模を縮小しながら、生活利便性を高める住み替えもあります。

住み替えで金融資産を増やす

自宅の価値が次の住宅価格を上回れば、差額を金融資産として残せる可能性があります。

例えば現在の住宅を5,000万円で売却し、3,500万円の住宅へ住み替えるとします。

売却費用や購入費用などを考慮する必要はありますが、差額の一部を老後資金として確保できる可能性があります。

住宅に偏っていた資産を、住宅資産と金融資産に分け直すわけです。

高齢期には医療や介護など、住宅以外にも資金が必要になる可能性があります。

住み替えは単なる引っ越しではなく、資産構成を見直す機会でもあります。

高額な住宅を持ち続ける必要はない

現役時代に購入した住宅の価格が大きく上昇している場合があります。

資産価値が上がること自体は望ましいことです。

しかし1億円の住宅に住んでいるからといって、自由に使える現金が1億円あるわけではありません。

自宅は売却しない限り生活資金にはなりません。

高齢期には、住宅資産が大きい一方で金融資産が少ない状態になることも考えられます。

住宅を売却して小さな住宅へ移れば、住宅に固定されていた資産の一部を現金化できます。

半投半住という考え方は、老後にも利用できます。

売却価格だけで住み替えを決めない

もちろん自宅価格が高いからといって、すぐに売却すればよいわけではありません。

次に住む住宅も値上がりしている可能性があるからです。

重要なのは現在の住宅価格ではなく、住み替え先との価格差です。

自宅が3,000万円から5,000万円へ値上がりしていても、住み替え先が2,000万円から4,500万円へ上昇していれば、住み替えによる資金余力はそれほど増えていません。

老後の住み替えでも、自宅だけを見るのではなく住宅市場全体を見る必要があります。

賃貸へ住み替える選択もある

持ち家を売却した後、再び持ち家を購入する必要はありません。

賃貸住宅へ移る方法もあります。

住宅を売却してまとまった金融資産を確保し、そこから家賃を支払う考え方です。

住宅修繕の負担から離れられます。

生活環境が変われば再び引っ越すこともできます。

一方、長生きすれば家賃負担も長期間続きます。

高齢になってから新たな賃貸住宅を借りる場合の住宅確保についても考える必要があります。

持ち家を売って賃貸へ移る場合には、長期的な資金計画が欠かせません。

高齢者向け住宅という次のマスもある

第2の住宅すごろくでは、一般的な戸建てやマンションだけが選択肢ではありません。

高齢者向け住宅や介護サービスを利用できる住まいなどもあります。

元気なうちは一般住宅。

生活支援が必要になれば別の住宅。

介護が必要になればさらに別の住まい。

このように高齢期にも住宅が変わる可能性があります。

60代で選ぶ住宅を「人生最後の住宅」と決めつける必要はありません。

その次の住み替えまで考えておくことが重要です。

子どもに住宅を残すことが最善とは限らない

かつては自宅を子どもに残すことが、資産承継の1つの形でした。

しかし子どもが別の地域ですでに住宅を持っていれば、親の住宅を相続しても住まない可能性があります。

相続した住宅を売却する。

賃貸に出す。

管理する。

子どもに新たな負担が生じる場合もあります。

特に売却しにくい地域の住宅では、相続後の処分が問題になる可能性があります。

老後の住み替えでは、自分が暮らしやすいかだけでなく、最後に住宅を誰が引き継ぐのかという出口も考える必要があります。

夫婦でも希望は同じとは限らない

老後の住み替えでは、夫婦間の考え方が異なることもあります。

長年住んだ家を離れたくない。

便利なマンションへ移りたい。

子どもの近くに住みたい。

地方へ移住したい。

それぞれの希望があります。

住宅は資産であると同時に、思い出が蓄積された場所でもあります。

金銭的な合理性だけで住み替えを決めることはできません。

だからこそ、実際に住み替えが必要になる前から話し合うことが重要です。

第2の住宅すごろくには上がりがない

昭和の住宅すごろくでは、郊外の庭付き一戸建てが「上がり」と考えられることがありました。

しかし人生100年時代には、特定の住宅を最終ゴールと考える必要はありません。

60代でコンパクトなマンションへ。

70代でより生活利便性の高い住宅へ。

80代以降は生活支援や介護を受けやすい住まいへ。

住宅は人生の変化に合わせて変わっていきます。

重要なのは豪華な住宅へ進むことではありません。

その時点の自分に最も暮らしやすい住宅へ移ることです。

結論

60代は住宅すごろくのゴールではありません。

子どもの独立。

退職。

収入構造の変化。

身体能力の変化。

そして将来の介護。

これまでとは異なる条件で住宅を考え直す時期です。

広い住宅から小さな住宅へ。

郊外から生活利便性の高い場所へ。

戸建てからマンションへ。

持ち家から賃貸へ。

さらに高齢者向け住宅へ。

選択肢はいくつもあります。

半投半住の考え方を老後まで延長すれば、自宅は最後まで持ち続けるだけの資産ではありません。

必要に応じて売却し、次の住まいや老後資金へ変えることのできる資産でもあります。

人生100年時代には、60代からもう一度住宅すごろくを始める。

その発想が、長い老後の住まいと資産の両方を考えるうえで重要になるのではないでしょうか。

参考

日本経済新聞 2026年10月2日朝刊 令和の住宅すごろく「半投半住」で選択多様に

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