住宅を自宅として利用しながら、将来の売却も視野に入れる「半投半住」という考え方があります。
購入した住宅の価格が上昇すれば、売却によって得た資金を次の住宅の頭金に使うことができます。
より広い住宅へ住み替える。
より便利な地域へ移る。
家族構成に合わせて住宅を変える。
住宅価格が上昇している局面では、こうした住み替え戦略がうまく機能することがあります。
しかし、住宅価格は必ず上昇するわけではありません。
半投半住を考えるなら、「値上がりしたらどうするか」だけではなく、「値下がりしたらどうするか」を購入時から考えておく必要があります。
住宅価格は上がり続けるとは限らない
住宅価格が上昇している時期が長く続くと、住宅は値上がりするものだと感じやすくなります。
しかし住宅市場には上昇局面もあれば下落局面もあります。
景気。
金利。
人口。
住宅供給。
地域の人気。
さまざまな要因によって価格は変化します。
全国の住宅価格が同じ方向に動くわけでもありません。
都市部では価格が維持されていても、人口減少が進む地域では住宅需要が弱まることがあります。
同じ都市でも駅前と郊外で異なる動きをする可能性があります。
住宅購入では、値上がりを期待するよりも値下がりする可能性を最初から受け入れておくことが重要です。
最大の問題はローン残高
住宅価格が下落したとき、特に問題になるのが住宅ローン残高です。
例えば7,000万円で住宅を購入したとします。
数年後の住宅ローン残高が6,000万円だったとします。
ところが、その住宅が5,500万円でしか売れないとします。
単純に考えれば、売却代金だけでは住宅ローンを完済できません。
さらに売却時には仲介手数料などの費用が発生する場合があります。
住宅を売りたいのにローンを整理できない。
この状態になると、住み替えの自由度が大きく低下します。
頭金が少ないほど影響が出やすい
住宅価格の下落に対する耐久力を考えるとき、購入時の自己資金も関係します。
住宅価格の大部分を住宅ローンで賄えば、購入直後は住宅価格とローン残高が近い状態になります。
その時期に住宅価格が下落すると、売却価格がローン残高を下回りやすくなります。
一方、一定の自己資金を入れて借入額を抑えていれば、価格が多少下落してもローン残高を上回る価格で売却できる余地が広がります。
ただし頭金を入れすぎて手元資金を失うことにも注意が必要です。
重要なのは、住宅価格下落への備えと家計の現金余力のバランスです。
元本返済が時間を味方につける
住宅価格が下落しても、必ず住み替えができなくなるわけではありません。
住宅ローンを返済していけば、通常は元本残高も減っていきます。
購入直後には住宅価格を下回る価格でしか売れなかったとしても、数年後にはローン残高が減り、売却しやすくなる場合があります。
その意味では、住宅価格だけを見るのではなく、住宅価格とローン残高の差を見ることが重要です。
半投半住では「住宅がいくらになったか」だけではなく、「売ったらローンを返した後にいくら残るか」を考える必要があります。
売らないという選択肢もある
住宅価格が下落している時期に、必ず売却する必要はありません。
家族の生活に問題がなく、住宅ローンも無理なく返済できているのであれば、そのまま住み続けることもできます。
住宅は株式とは違い、価格が下落したからといって日常生活で直ちに損失が発生するわけではありません。
5,000万円で購入した住宅の市場価格が4,000万円になったとしても、そこで快適に生活できているなら住宅としての利用価値は残っています。
半投半住では資産価値を意識しますが、住宅には住む価値があることを忘れてはいけません。
売却時期を選べる家計が強い
住宅価格下落への重要な備えの1つは、売却を急がなくてもよい家計を作ることです。
住宅ローン返済が限界に近ければ、収入減少などによって住宅を急いで売らなければならなくなる可能性があります。
市場環境が悪い時期でも売却せざるを得ません。
一方、住宅ローン返済に余裕があり、十分な手元資金があれば、市場が悪いときに無理に売却しないという選択ができます。
資産運用でも不動産でも、売却時期を自分で選べることは大きな強みです。
半投半住では住宅の資産価値だけでなく、家計の余力も住み替えの自由度を左右します。
貸すという選択肢も検討する
住み替える必要があるものの、現在の住宅価格では売却したくない場合、条件によっては賃貸に出すという選択肢も考えられます。
例えば転勤によって別の地域へ移る場合です。
賃貸需要のある住宅なら、家賃収入を得ながら保有を続けられる可能性があります。
ただし簡単ではありません。
住宅ローンの契約条件を確認する必要があります。
空室になる可能性があります。
管理費や修繕積立金、固定資産税などの負担も続きます。
設備が故障すれば修理費も必要です。
「売れないなら貸せばよい」と単純に考えるのではなく、賃貸住宅として収支が成り立つかを確認する必要があります。
住み替え先も値下がりしている可能性がある
住宅価格下落には別の見方もあります。
自宅の価格が下落しているとき、住み替え先の住宅価格も下落している可能性があります。
例えば現在の住宅が6,000万円から5,000万円へ下落したとします。
一方、購入したい住宅が1億円から8,000万円へ下落していれば、価格差はむしろ小さくなっています。
自宅の値下がりだけを見れば損をしたように感じます。
しかし住み替えでは、「売る住宅」と「買う住宅」を同時に考える必要があります。
住宅市場全体が下落している場合には、上位の住宅へ住み替える人にとって有利になるケースもあります。
同じ下落率でも影響は違う
例えば5,000万円の住宅と1億円の住宅がともに20%下落したとします。
5,000万円の住宅は4,000万円になります。
1億円の住宅は8,000万円になります。
当初の価格差は5,000万円でした。
下落後の価格差は4,000万円です。
自宅の価格は1,000万円下落していますが、住み替えに必要な価格差も1,000万円縮小しています。
このように住宅価格下落は、現在の住宅だけを見て判断すると全体像を見誤る場合があります。
住み替え戦略では、自宅価格より「次の住宅との価格差」が重要になることがあります。
下落に強い住宅を選ぶ
住宅価格の下落そのものを予測することは簡単ではありません。
そこで重要になるのが、下落局面でも需要が残りやすい住宅を選ぶことです。
交通利便性が高い。
生活施設が充実している。
管理状態がよい。
多くの世帯が使いやすい間取りである。
供給が限られている。
こうした住宅であれば、相場全体が下落しても一定の買い手を期待できる可能性があります。
半投半住では値上がり率の高さだけでなく、値下がりしたときの売りやすさも重要です。
損をしない住宅より動ける住宅
住宅購入では「損をしたくない」という気持ちが強くなります。
しかし住宅価格の将来を完全に予測することはできません。
購入価格より安く売却することになる場合もあります。
だからこそ重要なのは、絶対に値下がりしない住宅を探すことではありません。
価格が下落しても家計が破綻しない。
住宅ローンを返済できる。
必要なら住み続けられる。
条件によっては貸すこともできる。
そして売却が必要になったときには次の生活へ移れる。
こうした選択肢を持つことのほうが現実的です。
結論
半投半住には、住宅価格が上昇する局面では大きな魅力があります。
購入した住宅の値上がりを次の住宅購入につなげることができるからです。
しかし、それだけを前提に住宅すごろくを考えることにはリスクがあります。
住宅価格は下落することがあります。
そのとき重要になるのが住宅ローン残高、手元資金、返済余力、そして住宅そのものの需要です。
さらに住み替えでは、自宅の値下がりだけではなく、次に購入する住宅との価格差を見る必要があります。
半投半住の本質は、住宅価格の上昇を利用して利益を得ることではありません。
人生の変化に合わせて住まいを変えられる状態を維持することです。
値上がりしたときだけ成立する住宅計画ではなく、値下がりしても選択肢を失わない住宅計画を作る。
それこそが、長い住宅すごろくを続けるために必要な考え方ではないでしょうか。
参考
日本経済新聞 2026年10月2日朝刊 令和の住宅すごろく「半投半住」で選択多様に