役員貸付金というと、会社が社長に正式にお金を貸し、返済期限などを決めているケースを想像するかもしれません。
しかし、参考記事では、それとは違う理由で役員貸付金が発生するケースを紹介しています。
原因は、ずさんな現金管理です。
会社の預金口座から引き出した現金を経営者が個人の財布に入れ、会社の経費と個人的な支出の両方に使っていると、帳簿と実際のお金が合わなくなることがあります。
その差額が役員貸付金として処理され、知らないうちに残高が膨らんでいくことがあるのです。
会社の現金と社長のお金は分ける
法人と経営者個人は別の存在です。
そのため、会社のお金と経営者個人のお金も分けて管理する必要があります。
会社の預金から現金を引き出したのであれば、その現金を何に使ったのかを会社の帳簿に記録します。
会社の経費として使ったのであれば、その内容を確認できる領収書などを保存し、適切に経理処理します。
ところが、小規模な会社では会社のお金と経営者個人のお金の境界が曖昧になることがあります。
参考記事では、このような日常的な経理管理の問題から貸付金が発生するケースを取り上げています。
預金から現金を引き出したところから始まる
参考記事では、現金管理がずさんなケースとして、会社の預金口座から出金した現金を経営者個人の財布に入れる例を挙げています。
ここで重要なのは、預金から現金を引き出しただけでは会社のお金がなくなったわけではないことです。
預金という形から現金という形に変わっただけです。
したがって、その現金が会社のために使われたのか、それとも経営者個人のために使われたのかを明確にする必要があります。
この管理ができていないと、帳簿と実際のお金に差が生じる原因になります。
個人的な支出が混ざると分からなくなる
経営者個人の財布に会社のお金を入れると、会社のお金と個人のお金が混ざりやすくなります。
たとえば、その財布から会社で使う文房具を購入します。
取引先への交通費を支払います。
その一方で、経営者個人の買い物にも使います。
このような使い方を続ければ、どこまでが会社の支出で、どこからが個人の支出なのか分からなくなります。
会社の経費について領収書などが残っていれば経理処理できます。
しかし、使途を説明できない金額が残れば、その処理が問題になります。
帳簿との差額が役員貸付金になる
参考記事では、預金口座から引き出した金額と会社の経費として確認できる金額との差額を、経営者への貸付金として処理するケースが多いと説明しています。
たとえば、会社の預金口座から50万円を引き出したとします。
そのうち会社の経費として確認できる支出が30万円だったとします。
残りの20万円について会社のために使ったことが確認できず、経営者個人が使っていたのであれば、会社から経営者へ資金が移ったことになります。
その結果、経営者への貸付金として処理されることがあります。
正式に20万円を貸す契約をしたわけではなくても、結果として役員貸付金が発生するわけです。
少額でも繰り返せば大きくなる
こうした現金管理の問題で注意したいのは、1回の金額が小さくても繰り返せば貸付金残高が大きくなることです。
たとえば、毎月10万円ずつ使途不明の金額が発生するとします。
1年間続けば120万円です。
3年間続けば360万円です。
5年間続けば600万円になります。
その間に返済がなければ、貸借対照表には役員貸付金として残り続けることになります。
最初は小さな現金管理の問題でも、長期間続けば会社の財務状態に影響する金額まで膨らむ可能性があります。
貸付金が増えると資金繰りにも影響する
役員貸付金は貸借対照表では資産です。
しかし、その金額に相当する現金は会社の外へ出ています。
参考記事では、貸付金が返済されず計上されたままになっていることが多く、貸付金が塩漬けになれば、その分だけ資金繰りが悪化すると説明しています。
たとえば、役員貸付金600万円が残っているのであれば、会社が本来事業に使えた可能性のある600万円が経営者側に移っていることになります。
帳簿上では資産があるから問題ない、と考えることはできません。
重要なのは、その貸付金が実際に返済されるかどうかです。
銀行からも厳しく見られる
参考記事では、銀行は多額の貸付金がある決算書について厳しい見方をすると説明しています。
経営者への貸付金が多額にある場合には、なぜ会社のお金が経営者へ流れているのかという疑問が生じます。
さらに、会社と経営者個人の資産や経理が明確に区分されているかという問題にもつながります。
参考記事では、経営者保証を求めない融資を考える際にも、法人と個人の分離が重要だとしています。
現金管理がずさんなために役員貸付金が増えている状態は、単なる経理上の問題ではありません。
銀行との関係にも影響する可能性があります。
現金管理そのものを減らす
では、どうすれば役員貸付金の発生を防げるのでしょうか。
参考記事では、日常の経理業務に問題があれば見直すことに加えて、現金管理を減らすことを対応策として挙げています。
現金は預金と比べて、お金の流れを追いにくくなることがあります。
特に会社の現金と経営者個人の現金を同じ財布で管理すれば、区別が難しくなります。
だからこそ、会社のお金と個人のお金を最初から明確に分けることが重要です。
経営者が会社のお金を使った場合には、その目的と金額を確認できる状態にしておく必要があります。
すでにある貸付金は増やさない
参考記事では、貸付金への対応として、まず発生させないことを挙げています。
すでに発生している場合には、それ以上残高を増やさないことが重要です。
過去に発生した役員貸付金を毎月返済していても、新しい使途不明金が発生すれば残高はなかなか減りません。
既存の貸付金を返済することと、新しい貸付金を発生させないことを同時に進める必要があります。
そのためには、貸付金という勘定科目だけを管理するのではなく、その原因となった日常の現金管理まで見直すことが重要になります。
結論
役員貸付金は、会社が経営者に正式にお金を貸した場合だけに発生するものではありません。
参考記事では、会社の預金口座から引き出した現金を経営者個人の財布に入れ、個人的な支出にも使った結果、帳簿との差額が経営者への貸付金として処理されるケースを紹介しています。
つまり、役員貸付金の原因が日常のずさんな現金管理にあることもあります。
少額の使途不明金でも、毎月繰り返せば大きな貸付金になります。
貸付金が返済されなければ会社の資金繰りを悪化させ、銀行からも厳しく見られる可能性があります。
重要なのは、役員貸付金が発生した後の経理処理だけではありません。
会社のお金と経営者個人のお金を明確に分けること。
現金管理を見直すこと。
そして、新しい貸付金を発生させないことです。
役員貸付金を防ぐためには、決算時の対応よりも、毎日のお金の管理を正しくすることが重要なのです。
参考
企業実務 2026年9月号 貸付金の発生に注意を