地方債に元本割れはあるのか 預金や国債とは違うリスクを理解する編

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地方債は都道府県や市区町村などの地方自治体が発行する債券です。

自治体が発行するのだから、預金と同じように元本が保証されていると思う人もいるかもしれません。

しかし、地方債は預金ではありません。

債券という金融商品です。

満期まで保有した場合と途中で売却した場合では、元本に対する考え方も違います。

さらに2027年4月からデジタル地方債が始まれば、これまで地方債を購入したことがない個人が参加する可能性があります。

1万円など少額から購入できるようになったとしても、金融商品である以上、リスクを理解しておく必要があります。

地方債は自治体への貸付けと考えると分かりやすい

地方債の基本的な仕組みは、お金を貸すことです。

例えば自治体が地方債を発行し、個人が10万円分を購入したとします。

個人は自治体に10万円を貸していると考えることができます。

自治体は発行条件に従って利息を支払います。

そして満期を迎えると、原則として元本を償還します。

株式とは仕組みが異なります。

株式には満期がなく、株価が上がることも下がることもあります。

地方債はあらかじめ償還期限が定められ、満期になれば元本を返済するという仕組みです。

満期まで持てば元本はどうなるのか

地方債を満期まで保有した場合、発行条件に従って元本が償還されるのが基本です。

例えば額面10万円の地方債を購入し、そのまま満期まで保有すれば、原則として10万円が償還されます。

途中の市場価格が上下しても、満期まで保有するのであれば日々の価格変動をそのまま損失として確定するわけではありません。

この点は債券投資を理解するうえで非常に重要です。

ただし、発行体が約束どおり元本や利息を支払うことが前提です。

地方債であっても、金融商品である以上、リスクが完全にゼロという意味ではありません。

預金と地方債は同じではない

地方債を考えるときに混同しやすいのが銀行預金です。

銀行預金には預金保険制度があります。

一定の要件のもとで、金融機関が破綻した場合でも預金者を保護する仕組みがあります。

地方債は銀行預金ではありません。

したがって、預金保険制度によって守られる商品ではありません。

地方自治体が発行しているという安心感と、預金の元本保護の仕組みを同じものとして考えないことが重要です。

地方債には地方債としての信用力や制度がありますが、預金とは異なる金融商品です。

途中で売れば元本割れすることがある

地方債で特に理解しておきたいのが、満期前に売却する場合です。

債券には市場価格があります。

購入したときと同じ価格でいつでも売却できるとは限りません。

例えば10万円で購入した地方債が、市場では9万8,000円でしか売れない状態になっていたとします。

その時点で売却すれば、2,000円の損失が生じます。

反対に市場価格が購入価格より上昇していれば、売却益が生じる場合もあります。

債券は満期まで持てば額面で償還されることが基本ですが、途中売却では市場価格によって損益が発生します。

なぜ債券価格は変動するのか

債券価格が動く大きな理由の一つが市場金利です。

例えば年1%の利息が付く地方債を持っているとします。

その後、市場金利が上昇して、新しく発行される同程度の債券が年2%になったとします。

投資家から見れば、新しく発行される年2%の債券の方が魅力的です。

そのため、すでに発行されている年1%の債券を売ろうとすれば、価格を下げなければ買い手が付きにくくなります。

反対に市場金利が低下すれば、既存の高い金利が付いた債券の価値が上昇することがあります。

債券価格と市場金利は反対方向に動きやすいという特徴があります。

金利上昇局面では途中売却に注意する

日本が超低金利から金利のある世界へ移る局面では、この仕組みが特に重要になります。

今後、市場金利がさらに上昇した場合、それ以前に低い金利で発行された債券の市場価格には下落圧力がかかる可能性があります。

満期まで保有するのであれば、途中の価格変動を必ずしも気にする必要はありません。

しかし、満期前にお金が必要になって売却する可能性がある人にとっては重要です。

地方債を購入するときには、金利だけでなく償還まで何年間あるのかも確認する必要があります。

自治体の信用リスクも考える必要がある

債券には信用リスクがあります。

お金を借りた発行体が、約束どおり利息や元本を支払えるかというリスクです。

地方債の場合、発行体は地方自治体です。

自治体には税収があります。

国との財政制度上の関係もあります。

また、地方財政の健全性を確保するためのさまざまな制度があります。

そのため、一般企業が発行する社債とは信用リスクの性格が異なります。

ただし、「自治体だから何も確認しなくてよい」と考えるのではなく、地方債も発行体の信用力を前提とした債券であることを理解しておく必要があります。

デジタル地方債だから安全になるわけではない

2027年4月から始まるデジタル地方債では、ブロックチェーンなどの技術を利用して地方債の権利を管理します。

ここで注意したいのは、デジタル化と金融商品の安全性は別の問題だということです。

デジタル地方債になったから、地方債の価格変動リスクがなくなるわけではありません。

自治体の信用リスクがなくなるわけでもありません。

ブロックチェーンは地方債の発行や管理方法に関する技術です。

地方債そのものが持つ金融商品としての性質まで消えるわけではありません。

「デジタルだから安全」という理解は避ける必要があります。

小口化してもリスクの基本は同じ

デジタル地方債では、1万円単位などの小口で販売しやすくなることが期待されています。

10万円や100万円ではなく、1万円なら気軽に購入できる人は増えるでしょう。

しかし、最低購入金額が小さくなっても債券の基本的なリスクは変わりません。

金利が変動すれば市場価格が変わる。

途中売却すれば購入価格を下回る可能性がある。

発行条件を確認する必要がある。

こうした基本は同じです。

むしろ、地方債を初めて購入する人が増えるのであれば、分かりやすい説明がこれまで以上に重要になります。

利回りだけで選ばない

地方債を購入するときに、どうしても目に入りやすいのが金利です。

同じ10万円を投資するなら、少しでも高い利息を受け取りたいと考えるのは自然です。

しかし、確認すべきなのは金利だけではありません。

満期まで何年あるのか。

途中売却できるのか。

途中売却する場合の価格はどのように決まるのか。

どの自治体が発行しているのか。

調達した資金を何に使うのか。

こうした条件を確認したうえで購入を判断する必要があります。

特に長期間使う予定のない資金で購入できるかどうかは重要です。

地域貢献と投資判断は分けて考える

デジタル地方債では「地域への投資」という側面が強調される可能性があります。

例えば、自分が住む地域の防災設備を整備する地方債であれば、応援したいと考える人もいるでしょう。

学校や子育て施設、地域交通なども同様です。

しかし、地域を応援したいという気持ちと、金融商品としての判断は分けて考えることが大切です。

地方債は寄付ではありません。

投資です。

どれだけ資金使途に共感しても、商品の仕組みやリスクを理解する必要があります。

反対に、金融商品だからこそ、利息を受け取りながら地域を応援できるという特徴があります。

元本割れという言葉だけでは判断できない

地方債のリスクを考えるときに、「元本割れするか、しないか」という二択だけで考えると本質を見失います。

重要なのは、どのような場合に損失が発生する可能性があるのかを理解することです。

満期まで保有するのか。

途中で売却するのか。

市場金利がどう変化するのか。

発行体の信用力はどうなのか。

こうした条件によってリスクは変わります。

地方債を預金と同じものと考えるのも、株式と同じように大きく価格が動く商品と考えるのも適切ではありません。

債券には債券特有の仕組みがあります。

結論

地方債は地方自治体が発行する債券であり、銀行預金とは異なります。

満期まで保有した場合には、発行条件に従って元本が償還されるのが基本です。

一方、満期前に売却する場合には市場価格で取引されるため、購入価格を下回って元本割れする可能性があります。

特に市場金利が上昇すると、それ以前に低い金利で発行された債券の価格には下落圧力がかかります。

また、地方債にも発行体である自治体の信用力に関するリスクがあります。

2027年4月から始まるデジタル地方債でも、この基本は変わりません。

ブロックチェーンを使うことや1万円から購入できることは、地方債そのものの金融リスクをなくすものではないからです。

デジタル地方債によって地方債を初めて購入する人が増えるのであれば、「地域を応援できる」という魅力と同時に、満期、金利、途中売却、信用リスクなどを分かりやすく伝えることが重要になります。

地方債は預金ではありません。

だからこそ、仕組みを理解したうえで「投資」として地域にお金を出すという視点が必要になります。

参考

日本経済新聞 2026年9月29日朝刊 「デジタル地方債の可能性 地域に投資、裾野広げる 個人の購入、増やす契機」

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