長年利用してきたリゾート会員権を、元気なうちに子どもや孫へ引き継ぎたいと考える人もいるでしょう。
参考記事では、リゾート会員権を親族に譲渡したり、相続したりするケースが増えていることが紹介されています。
そこで考えられる方法の1つが生前贈与です。
親が亡くなった後に相続で引き継ぐのではなく、生きているうちに会員権を子どもなどへ移します。
ただし、家族の間で会員名義を変えればそれだけで終わるとは限りません。
会員権に財産としての価値があれば、贈与税を考える必要があります。
さらに会員権の種類によっては、不動産の持ち分や預託金なども関係します。
生前贈与とは何か
生前贈与とは、自分が生きている間に財産を他の人へ無償で渡すことです。
現金や預貯金、不動産、株式などさまざまな財産が対象になります。
リゾート会員権も財産としての価値があるため、無償で子どもなどへ移せば贈与として扱われることがあります。
例えば親が保有する会員権を、対価を受け取らず子ども名義へ変更したとします。
形式上は単なる名義変更に見えても、実質的には財産を親から子へ移していることになります。
そのため、税務上の取り扱いを確認することが必要です。
名義変更と贈与は同じ意味ではない
リゾート会員権では、所有者や会員を変更するときに名義変更の手続きが必要になる場合があります。
しかし、名義変更は運営会社などに対して行う手続きです。
一方、贈与は財産を無償で移転する行為です。
両者は別の問題です。
運営会社で名義変更手続きが完了したからといって、税務上の問題まで自動的に完了するわけではありません。
誰から誰へ財産が移ったのか。
その会員権にはどの程度の価値があるのか。
対価を支払ったのか。
こうした事実によって贈与税の問題が生じる可能性があります。
贈与税は受け取った側が考える
個人から財産の贈与を受けた場合、原則として財産を受け取った側に贈与税の問題が生じます。
例えば父親から子どもへリゾート会員権を無償で移した場合には、子ども側で贈与税の対象になるかを確認する必要があります。
ここで重要なのは、親が昔いくらで購入したかだけではありません。
贈与時点でその会員権にどの程度の価値があるのかが問題になります。
500万円で購入した会員権でも、現在の価値が同じ500万円とは限りません。
反対に、人気が高まり購入時より価値が上昇している可能性もあります。
中古市場がある会員権は現在の価値を確認する
リゾート会員権には中古市場があります。
参考記事によると、8月の平均価格は404万円で、前年同月より24%上昇しました。
ただし、これは市場全体の平均です。
個別の会員権の価値は、施設の人気や築年数、客室のグレード、利用条件などによって異なります。
生前贈与を考える場合には、平均価格だけではなく、実際にその会員権がどの程度で取引されているのかを確認することが重要です。
購入時の価格や本人の感覚だけで財産価値を判断するのは適切ではありません。
共有制なら不動産の持ち分も動く
共有制のリゾート会員権では、会員がホテルなどの土地や建物について一定の持ち分を所有します。
そのため、共有制の会員権を子どもへ贈与する場合には、単なるホテル利用権だけを渡すわけではありません。
不動産の持ち分も移転することになります。
不動産の所有者が変わるため、登記などの手続きが関係する場合があります。
さらに不動産の取得に伴う税負担についても確認する必要があります。
共有制の生前贈与では、会員権と不動産の両面から考えることが重要です。
預託制では預託金などの内容を確認する
預託制では、基本的に会員がホテルの土地や建物を直接所有する仕組みではありません。
運営会社などにお金を預け、施設を利用する権利を取得します。
そのため、生前贈与するときには預託金に関する権利や会員資格などがどのように引き継がれるのかを確認する必要があります。
親族間の名義変更が認められているのか。
運営会社の承認が必要なのか。
名義変更料はいくらなのか。
こうした条件は会員権によって異なります。
名義変更料も確認する
親から子へ会員権を引き継ぐ場合、運営会社へ名義変更料などを支払う必要があることがあります。
その金額は会員権によって異なります。
したがって、生前贈与に必要な費用は贈与税だけとは限りません。
共有制なら登記などに関係する費用が生じる可能性もあります。
会員権の価値がそれほど高くなくても、名義変更などの費用が相対的に大きくなることも考えられます。
贈与を決める前に、手続き全体でいくら必要になるのかを確認しておくことが大切です。
年間110万円だけで判断しない
一般的な暦年課税では、贈与税には年間110万円の基礎控除があります。
そのため、110万円以下なら何でも問題なく贈与できると考えてしまうことがあります。
しかし、リゾート会員権の価値が110万円を超える場合には、他の贈与も含めて贈与税の検討が必要になります。
また、会員権の価値を自分で勝手に低く見積もることはできません。
共有制なら不動産部分も含め、どのように評価するのかを確認する必要があります。
金額が大きい場合には、実際に贈与する前に税務上の取り扱いを確認することが重要です。
生前贈与すれば維持費も子どもへ移る
生前贈与には税金以外の意味もあります。
会員権を子どもへ移せば、今後の年会費や管理費などを誰が負担するのかという問題が生じます。
共有制なら固定資産税なども関係する可能性があります。
親にとっては思い出のある会員権でも、子どもがほとんど利用しないのであれば、固定費だけを負担することになるかもしれません。
財産を贈与するというより、将来の支出まで一緒に引き継いでもらう側面があるのです。
相続まで待つ方法とも比較する
会員権を子どもへ引き継ぐ方法は生前贈与だけではありません。
親が保有したまま利用を続け、亡くなった後に相続してもらう方法もあります。
どちらが適しているかは、会員権の価値や親子の利用状況、他の財産の状況などによって異なります。
例えば親がまだ頻繁に施設を利用しているのであれば、急いで名義を変える必要がないこともあります。
一方、親がほとんど利用しなくなり、子どもの家族が中心になって利用しているのであれば、生前に承継する意味があるかもしれません。
税金だけではなく、実際に誰が利用しているかを見ることが大切です。
贈与する前に子どもの意思を確認する
生前贈与の大きなメリットの1つは、親子で相談しながら承継できることです。
相続では親が亡くなった後に手続きが始まります。
生前贈与なら、親が元気なうちに会員権の利用方法や維持費、将来の売却などについて説明できます。
子どもが本当に欲しいのかも確認できます。
親が一方的に「価値のあるものだから残してあげよう」と考えるのではなく、受け取る側が利用したいかを確認することが重要です。
使わない会員権であれば、生前に売却して別の形で財産を残す方法もあります。
結論
リゾート会員権は、生前に子どもや孫へ引き継ぐことができる場合があります。
ただし、家族間で名義を変更すればそれだけで終わるとは限りません。
財産としての価値がある会員権を無償で移せば、贈与税を考える必要があります。
共有制なら不動産の持ち分、預託制なら預託金や会員資格など、それぞれの権利内容も確認しなければなりません。
さらに名義変更料や、承継後の年会費、管理費なども考える必要があります。
大切なのは、税金を減らすためだけに生前贈与を考えないことです。
子どもが本当にその会員権を利用するのか。
維持費を負担してでも保有したいと思っているのか。
親子で確認したうえで、生前贈与、相続、生前売却などの方法を比較することが重要です。
リゾート会員権の承継では、財産価値だけでなく、次の世代が実際に使うかどうかまで考える必要があります。
参考
日本経済新聞 2026年9月26日朝刊 <ステップアップ>リゾート、会員権で身近に ホテル代高騰で割安感
日本経済新聞 2026年9月26日朝刊 共有制、取得後に税負担