資産運用というと、株式や債券への投資を思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし、世界の機関投資家の間では、株式や債券以外の資産に投資する「オルタナティブ投資」の存在感が大きくなっています。
代表的なものがプライベートエクイティや不動産です。
英調査会社プレキンによると、機関投資家のオルタナティブ資産への投資比率は約25%に達しています。
では、なぜわざわざ株式や債券以外の資産に投資するのでしょうか。
重要なのは、オルタナティブ投資そのものを目的にするのではなく、何のために組み入れるのかを考えることです。
オルタナティブ投資とは何か
オルタナティブとは「代替的な」という意味です。
資産運用の世界では、上場株式や債券を伝統的資産と呼び、それ以外の投資対象をオルタナティブ資産と呼びます。
代表的なものとして、プライベートエクイティ、非上場企業への投資、不動産、インフラなどがあります。
最近では機関投資家だけではなく、個人投資家がオルタナティブ資産へ投資できる商品も増えています。
ただし、株式や債券とは異なる特徴を持っているため、「人気があるから」という理由だけで投資するのは適切ではありません。
何を目的として投資するのかを明確にする必要があります。
目的の1つは高いリターンを狙うこと
オルタナティブ投資の大きな目的の1つが、より高いリターンを狙うことです。
代表例がプライベートエクイティです。
プライベートエクイティは、主として非上場企業の株式などへ投資します。
上場株式であれば証券取引所で売買できますが、非上場株式は簡単には売却できません。
そのため、投資家は資金を長期間動かせなくなる可能性があります。
これが流動性リスクです。
投資家は、このような追加的なリスクを負担する代わりに、追加的なリターンを期待します。
これを流動性プレミアムと考えることができます。
つまり、単純に「PEは儲かる」という話ではありません。
高いリターンを期待できる背景には、それに対応するリスクが存在するのです。
長期投資家ほど流動性リスクを取りやすい
流動性リスクを取れるかどうかは、投資家によって大きく異なります。
近いうちに使う予定のお金を運用している人であれば、必要なときに売却できることが重要です。
一方、長期間運用できる資金であれば、短期間で換金できなくても問題にならない場合があります。
大学基金などがその代表例です。
寄付金などを原資として長期間運用する大学基金は、短期的な相場変動に左右されにくい資金を持っています。
記事では、米ハーバード大学の運用資産ではPEへの配分比率が約40%に達し、上場株式より高いことが紹介されています。
長期間使わない資金だからこそ、流動性を犠牲にして、その対価となるリターンを狙うことができるわけです。
もう1つの目的はリスク分散
オルタナティブ投資には、もう1つ重要な目的があります。
資産全体のリスクを分散することです。
投資では、異なる値動きをする資産を組み合わせることが重要です。
例えば、株式だけを保有している場合、株式市場が大幅に下落すれば資産全体が大きく減少する可能性があります。
そこで、株式とは異なる値動きをする資産を組み合わせます。
不動産などは、上場株式や債券との相関が比較的低い資産として利用されることがあります。
異なる値動きをする資産を組み合わせることで、ポートフォリオ全体の値動きを抑えることが期待できます。
オルタナティブ投資は、高いリターンを狙うためだけのものではありません。
資産全体を安定させるために利用するという考え方もあるのです。
低相関に見えるだけの場合がある
ただし、ここには注意点があります。
オルタナティブ資産は、上場株式のように毎日市場価格がつくとは限りません。
例えば、株式市場が急落したとします。
上場株式は市場で取引されているため、価格はすぐに下落します。
ところが、非上場株式や不動産などは毎日売買されるわけではありません。
評価額の見直しにも時間がかかることがあります。
その結果、
「株式は20%下落したのに、オルタナティブ資産はほとんど下落していない」
という状態が生じることがあります。
これだけを見ると、株式とはまったく違う値動きをしているように見えます。
しかし、実際には価格変動が存在しないのではなく、価格に反映されるまで時間がかかっているだけかもしれません。
つまり、見かけ上の相関が実態より低くなる可能性があります。
個人投資家ほど換金性を確認する必要がある
個人投資家がオルタナティブ投資を考える場合には、特に換金性が重要になります。
老後資金や住宅購入資金、教育資金など、将来使う時期が決まっているお金を運用する場合、必要なときに換金できなければ困ります。
したがって、
高いリターンが期待できるか
だけでは不十分です。
いつ売却できるのか。
途中解約できるのか。
売却するときに価格が大きく下がる可能性はないのか。
手数料はどの程度かかるのか。
こうした条件まで確認する必要があります。
特に流動性の低い商品では、「売りたいときに売れない」というリスクそのものを理解することが重要です。
オルタナ投資は目的から逆算する
オルタナティブ投資を考えるときに最初に決めるべきなのは、商品ではありません。
目的です。
より高いリターンを狙うためなのか。
株式や債券との分散効果を期待するためなのか。
長期間使わない資金を有効活用するためなのか。
目的によって選ぶべき資産は変わります。
「機関投資家が増やしているから」
「富裕層が投資しているから」
という理由だけで投資するのではなく、自分の資産全体の中でどのような役割を持たせるのかを考えることが重要です。
結論
オルタナティブ投資とは、上場株式や債券以外の非伝統的資産へ投資する方法です。
主な目的は、より高いリターンを狙うことと、資産全体のリスクを分散することです。
PEでは、資金を簡単に換金できない流動性リスクを引き受けることで、追加的なリターンを期待する考え方があります。
一方、不動産などを組み入れることで、株式や債券とは異なる値動きを利用した分散効果も期待できます。
ただし、オルタナティブ資産は価格が頻繁につかないため、実際以上に値動きが小さく、伝統的資産との相関も低く見える可能性があります。
大切なのは、「オルタナティブ投資をするかどうか」から考えることではありません。
高いリターン、分散、長期運用など、自分が何を実現したいのかを決め、その目的から投資対象を選ぶことです。
参考
日本経済新聞 2026年9月26日朝刊 何のためのオルタナ投資か