会社がマンションやアパートを借り、それを従業員の社宅として利用することがあります。
いわゆる借上げ社宅です。
この場合、会社は大家に家賃を支払い、従業員から社宅家賃を受け取るという2つの取引が発生します。
では、それぞれの家賃に消費税はかかるのでしょうか。
ポイントになるのが、消費税では住宅の貸付けが原則として非課税とされていることです。
住宅家賃には原則として消費税がかからない
建物を貸した場合、その賃貸料は原則として消費税の課税対象になります。
しかし、住宅として使用される建物の貸付けについては、消費税が非課税とされています。
住宅は生活の基盤となるため、その家賃に消費税を課さない仕組みになっています。
したがって、一般的なマンションやアパートを居住目的で借りる場合、その住宅家賃には原則として消費税はかかりません。
会社が借りても住宅であることは変わらない
借上げ社宅では、賃貸借契約の借主が従業員本人ではなく会社になります。
例えば、大家と会社が賃貸借契約を締結し、会社が月額10万円の家賃を支払うケースを考えてみます。
実際に住むのは会社の従業員です。
契約名義が法人だからといって、それだけで事務所や店舗の賃貸になるわけではありません。
会社が従業員を居住させるために住宅として借りていることが明らかであれば、大家から会社への住宅の貸付けは非課税となります。
会社から従業員への転貸も非課税になる
借上げ社宅では、もう1つの取引があります。
会社が借りた住宅を従業員へ使用させる取引です。
これは住宅の転貸という形になります。
住宅を転貸する場合でも、その物件を住宅として転貸することが契約書などによって明らかになっていれば、住宅の貸付けとして非課税になります。
つまり、借上げ社宅では、大家から会社への貸付けと、会社から従業員への転貸の両方が非課税になることがあります。
従業員が家賃を全額負担しても変わらない
会社によっては、借上げ社宅の家賃を会社が負担するのではなく、従業員に全額負担させることがあります。
例えば、会社が大家に月額10万円を支払い、従業員からも月額10万円を受け取るケースです。
会社が利益を上乗せしていなくても、会社から従業員への転貸という取引は存在します。
しかし、その住宅を従業員の居住用として貸していることが明らかであれば、従業員から受け取る家賃についても住宅の貸付けとして非課税になります。
従業員が家賃の全額を負担しているか、一部だけを負担しているかによって住宅家賃の消費税の基本的な性格が変わるわけではありません。
契約書で住宅として使用することを明確にする
実務上重要なのが、住宅として使用することを契約関係から確認できるようにしておくことです。
住宅の貸付けとして非課税になるかどうかを判断するときには、実際に人が住んでいるという事実だけではなく、契約上どのような用途で貸しているのかも重要になります。
借上げ社宅であれば、会社が従業員の居住用として借りることや、会社が従業員に住宅として使用させることを契約書などで明らかにしておくことが大切です。
会社名義で契約する場合ほど、使用目的を明確にしておく意味があります。
事務所として使えば取扱いが変わることがある
住宅の貸付けが非課税になるのは、住宅として使用されることが前提です。
例えば、会社がマンションを借りても、実際には営業所や事務所として使用する契約になっているのであれば、住宅の貸付けとしての非課税とは異なる取扱いになります。
同じマンションという建物でも、何のために貸しているのかによって消費税の課税関係が変わる可能性があります。
建物の種類だけではなく、契約上の用途を確認することが重要です。
非課税なら仕入税額控除にも注意する
会社が大家へ支払う住宅家賃が非課税であれば、その家賃には消費税が含まれていません。
したがって、会社が家賃を支払っているからといって、その金額から消費税を計算して仕入税額控除することはできません。
一方、社宅に関連して支払う費用の中には、住宅家賃とは別の取引として消費税が課税されるものが含まれることがあります。
そのため、社宅関係の支払いをすべて一括して非課税と考えるのではなく、何に対する支払いなのかを確認する必要があります。
結論
会社が住宅を借りて従業員に転貸する借上げ社宅では、住宅として使用することが契約書などから明らかであれば、大家から会社への貸付けは住宅の貸付けとして非課税になります。
さらに、会社から従業員への転貸についても、住宅として転貸することが明らかであれば非課税になります。
従業員が家賃を全額負担している場合でも、住宅としての貸付けであるという基本的な考え方は変わりません。
借上げ社宅の消費税を判断するときには、誰が契約しているのかだけではなく、その建物を何の用途で借り、何の用途で従業員に貸しているのかを確認することが重要です。
参考
税のしるべ 2026年9月7日 令和8年・役に立つ消費税実務問答集