大胆な投資促進税制では、一定の特定機械装置等を取得等して事業の用に供した場合に、即時償却または税額控除を選択できる仕組みが設けられています。
ここで疑問になるのが中古設備です。
税制の説明に取得という言葉が出てくると、中古の機械を購入した場合も対象になるように見えるかもしれません。
しかし、税制では取得したという事実だけで適用の可否が決まるわけではありません。
その資産が制度上の対象設備に該当するか、産業競争力強化法に基づく要件を満たすかなどを確認する必要があります。
中古設備については、取得という言葉だけから対象になると判断しないことが重要です。
取得と新品は同じ意味ではない
税務上、資産の取得という言葉は幅広く使われます。
企業がメーカーから新品の機械を購入する場合だけでなく、他社から中古の機械を購入する場合にも、一般には資産を取得したことになります。
そのため、条文や制度説明に取得と書かれているだけでは、新品だけを意味するのか、中古設備まで含めて考えられるのかを判断できません。
設備投資税制では、取得という言葉とは別に対象資産の要件を確認する必要があります。
大胆な投資促進税制には設備側の要件がある
大胆な投資促進税制は、会社が購入した減価償却資産すべてを優遇する制度ではありません。
対象となるのは、生産等設備を構成する機械装置、工具、器具備品、建物、建物附属設備、構築物、一定のソフトウエアなどのうち、制度上の要件を満たす特定機械装置等です。
さらに、産業競争力強化法に規定する特定生産性向上設備等に該当することが関係します。
したがって、中古設備についても、
中古だから対象になる
中古だから対象にならない
と取得形態だけで結論を出すことはできません。
まず制度上の対象資産としての要件を確認する必要があります。
なぜ中古設備の判断が難しいのか
設備投資税制には、政策目的があります。
大胆な投資促進税制では、企業の生産性向上につながる一定の投資を促進することが重要になります。
一方、中古設備はすでに別の企業などで使用されていた資産です。
そのため、新たな生産性向上投資を促すという制度目的と、中古資産の取得をどのように整理するのかという問題が生じます。
制度によっては新品であることなどが対象資産の要件になる場合もあります。
だからこそ、他の設備投資税制の経験だけで大胆な投資促進税制の対象可否を判断するのは避ける必要があります。
産業競争力強化法の確認が重要になる
大胆な投資促進税制では、産業競争力強化法に基づく確認が重要な要件になっています。
したがって、中古設備についても単に売買契約が成立したかを見るだけでは足りません。
その設備が産業競争力強化法に規定する特定生産性向上設備等として制度の要件を満たすのかを確認する必要があります。
税務申告の段階で、
中古設備を取得したのだから取得要件は満たしている
と考えるのでは遅い可能性があります。
設備の購入を決める前に、制度の対象となり得る資産なのかを確認しておくことが重要です。
中古設備には価格面の魅力がある
企業が中古設備を選ぶ理由の一つは、取得価格を抑えられることです。
新品なら1億円する機械でも、中古なら大幅に安く購入できる場合があります。
納期が短いこともあります。
新品設備の製造に1年かかる場合でも、既存の中古設備なら比較的早く導入できることがあります。
特に中小企業にとって、中古設備は設備投資額を抑える有力な選択肢です。
ただし、経済的に有利な設備であることと、税制優遇の対象になることは別問題です。
税制の適用を前提として投資採算を計算する場合には、対象可否を事前に確認する必要があります。
中古設備では取得価額の把握も重要になる
中古設備についても、取得価額は重要です。
購入代金だけではなく、設備を事業で使用できる状態にするまでに一定の費用が発生する場合があります。
運送費がかかることがあります。
工場への据付費用が必要になる場合もあります。
中古機械を使用するために整備や調整を行うケースもあります。
どの費用が税務上の取得価額を構成するのかを確認する必要があります。
大胆な投資促進税制には一定規模の設備という考え方があるため、対象資産の取得価額を正しく把握することが重要になります。
中古設備でも事業供用日の管理が必要になる
中古設備は新品より短期間で導入できる場合がありますが、購入した瞬間から事業の用に供しているとは限りません。
設備を工場へ搬入します。
必要に応じて修理や整備を行います。
据付工事を行います。
試運転をします。
そして実際の生産活動で使用を開始します。
前回までに見てきたように、取得日と事業供用日は必ずしも一致しません。
中古設備についても、いつ取得し、いつ事業で使用を開始したのかを区別して管理する必要があります。
新品と中古を税引後コストで比較する視点も必要になる
設備投資を判断するときには、単純な購入価格だけで新品と中古を比較しないことも重要です。
たとえば新品設備の価格が高くても、一定の税制優遇を利用できれば税引後の負担は変わります。
一方、中古設備は購入価格そのものが低い可能性があります。
さらに、耐用年数、維持修繕費、性能、電力消費量、生産能力なども異なります。
設備投資では、
購入価格
税制優遇
補助金
維持費
生産性
使用可能期間
などを総合的に比較する必要があります。
税制は投資判断の一要素であって、税制だけで設備を選ぶものではありません。
対象になると思い込んで購入するのが最大の注意点
中古設備で特に避けたいのが、税制優遇を受けられることを前提として購入し、その後で対象外だと分かるケースです。
税額控除や即時償却を投資採算へ織り込んでいれば、対象外になったときに資金計画が変わります。
大胆な投資促進税制では、産業競争力強化法の確認や対象設備の要件など複数の条件があります。
そのため、設備を購入してから税務部門へ相談するのではなく、購入を決定する前に制度の適用可能性を確認することが重要です。
結論
大胆な投資促進税制について、中古設備を取得したという事実だけから適用の可否を判断することはできません。
取得という言葉は、新品の購入だけを意味する言葉ではありません。
一方で、大胆な投資促進税制には、特定生産性向上設備等への該当性をはじめとする対象資産の要件があります。
したがって、中古だから当然に対象になるとも、中古だから当然に対象外になるとも考えず、制度の具体的な要件を確認することが重要です。
特に税制優遇を投資採算へ織り込む場合には、購入後ではなく投資決定前の確認が欠かせません。
中古設備は取得価格や納期の面で魅力的な選択肢になることがあります。
しかし、経済的に魅力のある設備と税制上優遇される設備は同じとは限りません。
設備投資では、資産を取得したかどうかだけでなく、その資産が制度の対象として求められる条件を満たしているかまで確認することが重要です。
参考
税のしるべ 2026年9月14日 8年度法人税関係法令の改正対応で措置法通達、大胆な投資促進税制関係など
国税庁 2026年9月4日 租税特別措置法関係通達 法人税編 の一部改正について