令和8年分の年末調整には、少し分かりにくい特徴があります。
一年の途中まで給与から差し引かれてきた所得税は改正前の源泉徴収税額表を基に計算されている一方、12月の年末調整では改正後の基礎控除額などを使って一年間の所得税を計算することです。
なぜ同じ令和8年の所得税なのに、古い仕組みと新しい仕組みが混在するのでしょうか。
ポイントとなるのが、令和8年度税制改正による基礎控除の引上げなどが原則として令和8年12月1日に施行されることです。
税制改正には施行日がある
税制改正が決まったからといって、その瞬間からすべての税務処理が新制度へ切り替わるわけではありません。
税制には、いつから新しい制度を実際に動かすのかを定める施行日があります。
さらに、どの年分の所得税から新制度を適用するのかという適用関係も重要です。
令和8年度税制改正による基礎控除の引上げなどは、原則として令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税について適用されます。
ここに令和8年分の年末調整が例年より分かりにくくなる理由があります。
一月からの給与計算はすでに進んでいる
会社は毎月、従業員へ給与を支払う際に所得税を源泉徴収しています。
令和8年についても、一月から毎月の給与計算が続いてきました。
その際の源泉徴収事務では、改正前の源泉徴収税額表によって税額が計算されています。
年の途中まで進んだ給与計算について、後から税制改正が行われたからといって、すべての月の給与計算を最初からやり直す仕組みにはなっていません。
そこで重要な役割を果たすのが年末調整です。
年末調整で新しい控除額を反映する
令和8年12月に行う年末調整では、引上げ後の基礎控除額を使います。
給与所得控除についても、令和8年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表を使って一年間の所得を計算します。
つまり、毎月の源泉徴収は改正前の仕組みで進めながら、最後に一年間の税額を計算するときには改正後の制度を使うことになります。
ここだけを見ると二つの制度が混在しているように見えます。
しかし、年末調整で一年間の税額を最終的に精算することを考えれば、制度としてつながっています。
一月までさかのぼって計算し直す必要はない
たとえば一月から十一月までに給与から源泉徴収された所得税があります。
税制改正後の控除額が令和8年分に適用されるからといって、それぞれの月の源泉徴収税額を新しい制度で一件ずつ計算し直すわけではありません。
12月の年末調整で改正後の制度に基づいて一年間で本来納めるべき所得税を計算します。
そして、一月以降にすでに源泉徴収された所得税の合計額と比較します。
多く徴収されていれば還付し、不足していれば追加で徴収します。
年末調整には、こうした年途中の源泉徴収と年間の最終税額との違いを合わせる役割があります。
基礎控除だけが変わるわけではない
令和8年分について注意したいのは、基礎控除だけを確認すればよいわけではないことです。
給与所得控除の最低保障額も引き上げられています。
さらに扶養親族などの所得要件も改正されています。
年齢23歳未満の扶養親族を有する場合には、生命保険料控除についての特例もあります。
そのため、令和8年12月の年末調整では、単に基礎控除の数字を新しいものへ変更するだけではありません。
本人や家族の状況を確認しながら、複数の改正事項を正しく反映させる必要があります。
扶養親族の改正は12月の給与にも注意する
扶養親族などの所得要件の改正については、令和8年12月1日以後に支払う給与などから適用されます。
改正によって新たに扶養親族などの要件を満たすことになった親族がいる場合には、扶養控除などを受けるために給与所得者の扶養控除等異動申告書などを提出する必要があります。
会社が家族の所得状況を自動的に把握できるわけではありません。
従業員側から必要な情報を申告することが重要です。
給与担当者にとっても、従業員への周知と申告書の確認が重要な実務になります。
令和9年になると考え方が分かりやすくなる
令和8年は改正前の源泉徴収と改正後の年末調整が同じ年に存在するため、制度が複雑に見えます。
しかし、令和9年になると状況は変わります。
国税庁は令和9年分の源泉徴収税額表を公表しています。
令和9年からは、新しい制度を前提として毎月の源泉徴収事務が行われます。
令和8年は旧制度から新制度へ移る橋渡しの年と考えると、今回の特殊な年末調整を理解しやすくなります。
施行日と適用年分を区別する
今回の改正から学べる重要なポイントがあります。
税制改正を見るときには、改正内容だけでなく施行日と適用年分を確認することです。
いつ法律が施行されるのか。
どの年分の所得税から適用されるのか。
毎月の源泉徴収にはいつから反映されるのか。
年末調整ではどのように精算されるのか。
これらは必ずしも同じタイミングではありません。
税制改正のニュースを読むときに、この時間軸を意識すると制度をより正確に理解できるようになります。
結論
令和8年に改正前の源泉徴収税額表と改正後の控除が混在するのは、税制改正の施行時期と年末調整の仕組みが関係しているためです。
令和8年中の給与などについては改正前の源泉徴収税額表によって所得税が徴収されます。
一方、12月の年末調整では引上げ後の基礎控除額や新しい給与所得控除後の給与等の金額の表などを使い、一年間の所得税を計算します。
そして、それまで源泉徴収してきた所得税との過不足を精算します。
したがって、古い制度と新しい制度が矛盾して存在しているわけではありません。
毎月の源泉徴収と年間の年末調整という二つの段階を使って、新しい税制へ移行する仕組みになっています。
令和8年は、所得税制度において旧制度から新制度へ切り替わる途中の年として理解すると分かりやすいでしょう。
参考
税のしるべ 2026年9月7日 8年分年末調整のしかたを公表、昨年との変更点や留意事項など掲載
国税庁 2026年8月31日 令和8年分 年末調整のしかた