年末になると、給与の手取り額がいつもより増える人がいます。
年末調整によって所得税が還付されるためです。
特に令和8年分は、基礎控除の引上げや給与所得控除の最低保障額の引上げなどの税制改正があり、12月の年末調整で新しい制度を反映して一年間の所得税を計算します。
では、なぜ年末調整で税金が戻ってくるのでしょうか。
その仕組みを理解するためには、毎月給与から差し引かれている所得税と、一年間で本来納める所得税は必ずしも同じではないことを知っておく必要があります。
毎月の所得税は最終的な税額ではない
会社員は毎月の給与を受け取る際に所得税が差し引かれています。
これが源泉徴収です。
会社は源泉徴収税額表などに基づいて所得税を計算し、従業員の給与から差し引いて国へ納付します。
ただし、この段階ではその人の一年間の所得税額を完全に確定することはできません。
一年間の給与総額が最終的にいくらになるのか、扶養親族の状況がどうなるのか、生命保険料をいくら支払ったのかなど、年末にならなければ確定しない情報があるからです。
そのため、毎月の源泉徴収は一年間の所得税を前払いしているような仕組みと考えると分かりやすいでしょう。
年末に本来の所得税を計算する
年末調整では、一年間の給与額などを基にその年に本来納めるべき所得税を計算します。
まず給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得を求めます。
そこから基礎控除、社会保険料控除、扶養控除、生命保険料控除などを差し引きます。
こうして求めた課税所得を基に所得税額を計算します。
さらに年末調整で必要となる調整を行い、その人が一年間に納めるべき所得税額を確定させます。
この税額と、それまで毎月の給与や賞与から源泉徴収されてきた所得税の合計額を比較します。
払い過ぎていれば税金が戻ってくる
すでに源泉徴収された所得税の合計額が、年末調整で計算した一年間の所得税額より多ければ差額が還付されます。
反対に、源泉徴収された金額だけでは足りなければ、不足額が追加で徴収されます。
つまり、年末調整でお金が戻ってくるのは会社から臨時のお金をもらっているわけではありません。
自分が給与からすでに支払っていた所得税のうち、結果として払い過ぎていた部分が戻っているのです。
年末調整の還付金をボーナスのように考えないことが大切です。
令和8年は税制改正が精算に影響する
令和8年分が特徴的なのは、所得税の制度改正が年末調整に反映されることです。
令和8年度税制改正による基礎控除の引上げなどは、原則として令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税について適用されます。
一方、令和8年中の給与等の源泉徴収では、改正前の源泉徴収税額表によって所得税が計算されてきました。
そこで12月の年末調整では、引上げ後の基礎控除額などを使って一年間の所得税を計算します。
その税額と、それまで改正前の税額表によって源泉徴収されてきた所得税を精算することになります。
給与所得控除の変更も反映される
令和8年度税制改正では、基礎控除だけでなく給与所得控除の最低保障額も引き上げられています。
年末調整では、令和8年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表に基づいて計算します。
給与所得控除が増える対象者では給与所得が小さくなります。
さらに基礎控除の引上げなどが加われば、課税所得が従来より小さくなる場合があります。
その結果として一年間の所得税額が、それまで源泉徴収されてきた税額より少なくなれば差額が還付されることになります。
還付額は人によって違う
税制改正があるからといって、すべての会社員が同じ金額の還付を受けるわけではありません。
給与収入、所得金額、扶養親族の有無、社会保険料、生命保険料など、それぞれの状況によって一年間の所得税額は異なります。
また、住宅借入金等特別控除を年末調整で受ける人などでは、別の要素も税額に影響します。
同じ年収であっても家族構成や利用する控除が違えば、年末調整の結果も変わります。
年収だけから還付額を判断することはできません。
扶養親族の見直しも確認する
令和8年度税制改正では、扶養親族などの所得要件も見直されています。
この改正によって、新たに扶養控除などの対象となる親族がいる場合があります。
その場合には、給与所得者の扶養控除等異動申告書など必要な書類を会社へ提出する必要があります。
要件を満たしていても、会社がその事実を把握できなければ年末調整に正しく反映できない可能性があります。
特に家族がパートやアルバイトなどで働いている場合には、令和8年分の所得がいくらになるのかを確認しておくことが重要です。
12月の手取りだけで判断しない
年末調整で大きな還付を受けると、税金が大幅に安くなったように感じることがあります。
しかし、還付額には税制改正だけでなく、一年間の源泉徴収額や各種控除など複数の要因が影響します。
大切なのは12月にいくら戻ってきたかだけを見るのではなく、一年間で最終的にいくら所得税を負担したのかを見ることです。
年末調整とは、還付金を受け取る制度ではなく、一年間の所得税を正しい金額に合わせる制度だからです。
結論
令和8年12月の年末調整で税金が戻る人がいるのは、それまで給与や賞与から源泉徴収されてきた所得税と、一年間で本来納めるべき所得税との間に差が生じるためです。
令和8年分では、基礎控除の引上げや給与所得控除の最低保障額の引上げなどを反映して一年間の所得税額を計算します。
その結果、すでに源泉徴収された所得税が年税額より多ければ差額が還付されます。
反対に不足していれば追加で徴収されます。
したがって、年末調整で戻ってくるお金は臨時収入ではありません。
一年間にいったん給与から支払った所得税を、最終的な正しい税額に合わせるための精算です。
令和8年は税制改正が年末調整に反映される年だからこそ、還付額だけではなく、その背景にある一年間の税額計算の仕組みまで理解しておくことが大切です。
参考
税のしるべ 2026年9月7日 8年分年末調整のしかたを公表、昨年との変更点や留意事項など掲載
国税庁 2026年8月31日 令和8年分 年末調整のしかた