会社の売上が1000万円あるからといって、銀行口座に1000万円が入っているとは限りません。
商品を販売したりサービスを提供したりすれば売上は発生しますが、代金を後から受け取る取引では、売上と現金の入金に時間差が生じます。
このように、商品やサービスをすでに提供して売上が発生しているものの、まだ受け取っていない代金を考えるうえで重要になるのが売掛金です。
今回の参考記事では、決済サービス会社の破産によって、サービスを利用していた加盟店の中に最大で1カ月分の売上代金が入金されない店舗が出たとされています。
キャッシュレス決済が普及すると、店舗にとって売上が発生したことと、その売上代金を現金として受け取ったことを分けて考える重要性が高まります。
売上と売掛金
売掛金とは、商品を販売したりサービスを提供したりして売上が発生したものの、まだ受け取っていない代金を表すものです。
たとえば会社が取引先に100万円の商品を販売し、代金は翌月に受け取る契約だったとします。
商品を引き渡して売上を計上しても、その日に100万円が銀行口座へ入るわけではありません。
会社には100万円を後から受け取る権利が残ります。
このような代金が売掛金です。
つまり、売上と売掛金は別のものです。
売上は商品やサービスを販売したことによって生じる収益です。
売掛金は、その売上についてまだ回収していない代金です。
売上が増えているからといって、それと同じ金額だけ現金が増えているとは限らない理由がここにあります。
現金売上との違い
現金売上と比較すると、売掛金の意味が分かりやすくなります。
飲食店で顧客が5000円の食事をして、現金で5000円を支払ったとします。
店舗には5000円の売上が発生すると同時に、5000円の現金が入ります。
売上と代金回収がほぼ同時に行われます。
一方、商品やサービスを提供した時点では代金を受け取らず、後から受け取る取引では、売上と現金回収の間に時間差ができます。
会社から見ると、売上は計上されているものの、まだ自由に使える現金にはなっていません。
この違いは会社の資金繰りを考えるうえで非常に重要です。
利益を計算するときには売上として認識されていても、実際の支払いに使えるのは現金だからです。
売掛金が現金になるまで
売掛金は、取引先などから代金を回収することで現金になります。
たとえば100万円の商品を販売して売掛金100万円が発生したとします。
翌月に取引先から100万円が銀行口座へ振り込まれれば、売掛金を回収したことになります。
会社から見ると、まだ受け取っていなかった100万円が現金に変わったわけです。
重要なのは、売上が増えたのではないということです。
売上は商品を販売した時点ですでに発生しています。
後日の入金は、その売上によって生じていた未回収代金を現金として回収する動きです。
そのため会社経営では、売上高だけを見るのではなく、まだ回収していない代金がどれくらいあるのかも確認する必要があります。
キャッシュレス決済でも売上と入金に時間差がある
今回の参考記事は、キャッシュレス決済における売上と入金の時間差を考える材料になります。
記事で取り上げられた全東信は、飲食店を中心とするクレジットカード加盟店に対して、カード会社に先行して売上代金を入金するサービスを提供していました。
この事例から分かるのは、顧客がカードを使った時点と、店舗が売上代金を受け取る時点が必ずしも同じではないということです。
顧客はすでに料理や商品を受け取っています。
店舗側にも売上が発生しています。
しかし、売上代金が実際に店舗へ入るのは後になります。
なお、参考記事では、このカード売上の未入金額を会計上どの勘定科目で処理していたのかまでは説明されていません。
したがって今回の記事では、参考記事の未入金問題そのものをすべて売掛金と断定するのではなく、売上と現金回収には時間差があるという点から売掛金の基本的な考え方を理解することが重要です。
売掛金が多い会社ほど現金が必要になる
売掛金は会社にとって資産ですが、現金と同じようにすぐ支払いに使えるわけではありません。
たとえば会社に1000万円の売掛金があるとします。
将来的に1000万円を受け取れるとしても、今日の銀行口座残高が100万円しかなければ、今日500万円を支払うことはできません。
そのため売掛金が増えるほど、その代金を回収するまでをつなぐ資金が必要になる場合があります。
売上が急激に増えた会社で資金繰りが苦しくなることがあるのも、このためです。
商品をたくさん販売すれば売上は増えます。
しかし、代金を後から受け取るのであれば、未回収の金額も増えていきます。
その間にも仕入代金や人件費などを支払わなければなりません。
売上の増加と現金の増加は必ずしも同じではないのです。
回収できない場合のリスク
売掛金について最も注意しなければならないのが、予定していた代金を回収できないリスクです。
取引先が経営破綻すれば、売掛金の全部または一部を回収できなくなる可能性があります。
会社はすでに商品やサービスを提供しています。
そのため代金を回収できなければ、単に利益が減るだけでなく資金繰りにも影響します。
今回の参考記事でも、決済サービス会社の破産によって、サービス利用者である加盟店の中には最大で1カ月分の売上代金が入金されない店舗が出たとされています。
さらにカード決済が利用できないことで客離れを招き、資金繰りに支障を来す事業者が多数出る可能性も指摘されています。
顧客に商品やサービスを提供したことと、売上代金を確実に回収できることは別問題だということが分かります。
売掛金は金額だけでなく回収予定日を見る
会社が売掛金を管理するときには、合計額だけを確認するのでは十分ではありません。
誰から受け取るのか。
いくら受け取るのか。
いつ受け取るのか。
予定日に入金されたのか。
こうした内容を確認することが重要です。
特に資金繰りでは、回収予定日が重要になります。
来月1000万円入る予定だから安心というだけでは不十分です。
その1000万円が入る前に1200万円の支払いがあれば、途中で資金が不足する可能性があります。
また、予定日になっても入金されなければ、早い段階で原因を確認する必要があります。
売掛金管理と資金繰り管理は密接につながっているのです。
キャッシュレス時代は未入金のお金を見る
現金商売が中心であれば、売上と現金の動きは比較的分かりやすくなります。
しかしキャッシュレス決済が増えると、日々の売上と実際に入金される金額には時間差が生まれます。
店舗経営者は今日いくら売れたのかだけではなく、そのうちいくらがすでに現金になっていて、いくらがまだ入金されていないのかを把握する必要があります。
そして、未入金のお金が予定通り入ってくることを当然と考えないことも重要です。
今回の参考記事のように、決済に関係する事業者の経営破綻によって、予定していた売上代金が入らなくなる事態も起こり得るからです。
売上を作ることと、売上代金を回収すること。
会社経営では、この二つを最後まで管理する必要があります。
結論
売掛金とは、商品やサービスをすでに提供して売上が発生しているものの、まだ受け取っていない代金を表すものです。
現金売上であれば、売上と代金回収は基本的にほぼ同時です。
一方、後払いの取引では売上が発生してから現金を受け取るまで時間差があります。
そのため会社に多額の売上や売掛金があっても、手元に十分な現金があるとは限りません。
さらに取引先の経営破綻などによって代金を回収できなくなれば、利益だけでなく資金繰りにも大きな影響が及びます。
キャッシュレス決済でも、顧客が支払う時点と店舗への入金時点には時間差があります。
会社経営では、いくら売ったのかを見るだけでは十分ではありません。
その売上代金がいつ、確実に現金として回収されるのかまで管理することが重要なのです。
参考
企業実務 2026年9月 キャッシュレス時代の盲点 懸念される小規模飲食店の連鎖倒産