夏季冬季休暇は非正規社員にも必要なのか 仕事内容ではなく休暇の目的から判断する仕組み編

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正社員には夏季休暇や冬季休暇があるのに、契約社員やパート社員にはない。

こうした制度を設けている会社があります。

正社員と非正規社員では仕事内容や責任が違うのだから、休暇の日数が違っていても当然だと思われるかもしれません。

しかし、同一労働同一賃金では、それほど単純には判断できません。

重要になるのは、

その休暇が何のために設けられているのか

という待遇の性質と目的です。

夏季冬季休暇が、一定期間働いた従業員に休息の機会を与えるための制度であるなら、正社員より仕事の責任が軽いという理由だけで非正規社員を対象外にできるとは限りません。

特に、契約更新を繰り返して長期間勤務している非正規社員については、正社員との待遇差が不合理ではないかを慎重に検討する必要があります。

2026年の同一労働同一賃金ガイドライン改正では、夏季冬季休暇について新たに記載が設けられています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

夏季冬季休暇とは何か

夏季冬季休暇とは、会社が夏や冬の一定期間に従業員へ与える休暇です。

会社によって制度の内容は異なります。

夏季休暇だけを設けている会社もあれば、夏季休暇と冬季休暇の双方を設けている会社もあります。

ここで重要なのは、夏季冬季休暇が基本給や役職手当のように、仕事の難しさや責任に直接対応している待遇とは限らないことです。

基本給であれば、

責任が重い

高度な仕事を担当している

管理業務を行っている

といった違いが待遇差につながりやすくなります。

しかし夏季冬季休暇については、仕事の責任が重いから与えられるという制度とは限りません。

だからこそ、その休暇の目的を確認する必要があります。

休暇の目的から考える

同一労働同一賃金では、待遇の名称だけでなく、その待遇の性質や目的が重要になります。

夏季冬季休暇についても、

正社員向けの休暇だから

というだけでは十分ではありません。

なぜ正社員にその休暇を与えているのかを考えます。

一定期間勤務した従業員に休息を与えるためなのか。

長期間継続して働く従業員に一定の休暇を保障するためなのか。

従業員の継続勤務を支えるためなのか。

制度の目的によって、非正規社員を対象外とすることに合理的な理由があるかどうかも変わってきます。

仕事内容が違っても休暇の必要性はなくならない

たとえば正社員と契約社員が同じ会社で働いているとします。

正社員には管理業務があります。

全国転勤の可能性もあります。

契約社員は定型業務を中心に担当し、勤務地も限定されています。

両者の職務内容や責任、配置変更の範囲には違いがあります。

基本給や役職に関する待遇なら、この違いは重要でしょう。

しかし夏季休暇について、

全国転勤があるから夏季休暇を与える

管理責任があるから冬季休暇を与える

という制度でなければ、こうした違いだけで休暇の待遇差を説明することは難しくなります。

非正規社員にも休息を取る必要性はあるからです。

つまり、

仕事が違う

という事実だけで、すべての待遇差を合理化できるわけではありません。

待遇ごとに判断する必要がある

この点は、同一労働同一賃金の基本的な考え方につながります。

参考資料では、不合理な待遇差かどうかについて、原則として待遇ごとに個別に判断することが説明されています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

たとえば正社員と非正規社員について基本給に差があるとします。

職務内容や責任に大きな違いがあれば、基本給の差には一定の理由があるかもしれません。

しかし、

基本給の差に理由がある

だから夏季休暇にも差があってよい

とはなりません。

基本給には基本給の性質と目的があります。

夏季冬季休暇には夏季冬季休暇の性質と目的があります。

それぞれを別々に検討する必要があります。

長期勤務との関係

夏季冬季休暇では、非正規社員の継続勤務も重要になります。

有期雇用社員であっても、契約更新を繰り返して長期間働く人はいます。

1年契約だからといって、実際に1年間だけ働いて退職するとは限りません。

毎年更新し、5年、10年と勤務するケースもあります。

そのような非正規社員について、

有期雇用だから夏季冬季休暇は必要ない

と形式だけで判断することには問題が生じる場合があります。

特に、休暇の目的が継続的に勤務する従業員に休息を与えることにあるなら、長期勤務が見込まれる非正規社員にも同じ目的が当てはまる可能性があります。

日本郵便事件との関係

夏季冬季休暇を考えるうえで重要なのが、日本郵便事件です。

日本郵便をめぐる一連の訴訟では、正社員と有期契約労働者との間に設けられていた複数の待遇差が問題になりました。

2020年10月15日の最高裁判決では、年末年始勤務手当、扶養手当、病気休暇などとともに、夏期冬期休暇に関する待遇差も問題となりました。

2026年の同一労働同一賃金ガイドライン改正では、こうした最高裁判例などを踏まえ、夏季冬季休暇について新たな記載が設けられています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

ここから分かる重要なポイントは、

正社員と非正規社員では職務内容が違う

ということだけで、休暇の待遇差まで当然に認められるわけではないということです。

休暇そのものの目的を踏まえて判断する必要があります。

継続雇用確保目的との関係

夏季冬季休暇については、継続雇用確保という考え方も重要です。

継続雇用確保目的とは、従業員に長く働いてもらうことを目的として待遇を設ける考え方です。

前の記事で取り上げた家族手当や病気休職についても、この考え方が関係しました。

夏季冬季休暇についても、継続して勤務する従業員に一定の休息を与える制度であるなら、同じように継続勤務が見込まれている非正規社員を対象外にする理由が問題になります。

正社員か非正規社員かという名称ではなく、

実際にどの程度継続して勤務することが予定されているのか

を見る必要があります。

正社員人材確保目的とは分けて考える

一方、賞与や退職金では正社員人材確保目的が問題になる場合があります。

会社が正社員を将来の中核人材として採用し、幅広い配置転換や教育を行い、長期間定着してもらうために特別な待遇を設けるという考え方です。

しかし夏季冬季休暇では、同じ説明がそのまま使えるとは限りません。

正社員を中核人材として育成していることと、

夏や冬に休暇を取得できること

がどのようにつながっているのかを考える必要があるからです。

参考資料でも、正社員人材確保目的と継続雇用確保目的は区別して考える必要があることが示されています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

待遇によって考慮すべき目的が異なるのです。

休暇の日数まで必ず同じになるわけではない

ここで注意したいのは、

非正規社員にも夏季冬季休暇を認める必要がある場合がある

ということと、

すべての社員について必ず同じ日数にしなければならない

ということは同じではないという点です。

同一労働同一賃金では、それぞれの待遇について職務内容や責任、配置変更の範囲、その他の事情と、その待遇の性質や目的を踏まえて判断します。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

したがって、具体的な制度については個別の事情を確認する必要があります。

重要なのは、

正社員ではないからゼロ

という形式的な区分だけで結論を出さないことです。

なぜその違いを設けているのかを説明できる必要があります。

企業は休暇制度も洗い出す

2026年改正への対応では、企業は基本給や賞与、退職金だけを確認すればよいわけではありません。

休暇制度についても、正社員と非正規社員の違いを洗い出す必要があります。

夏季休暇はどうなっているか。

冬季休暇はどうなっているか。

病気休暇はどうなっているか。

その他の特別休暇はどうなっているか。

そして待遇差があれば、

なぜ違うのか

を確認します。

参考資料でも、実務対応の出発点として、正社員と非正規社員との待遇差を改めて確認し、待遇ごとに不合理性を検討することが示されています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

給与規程だけではなく、就業規則や休暇規程まで確認する必要があるのです。

昔から正社員だけでは説明にならない

夏季冬季休暇は、長年の会社慣行として設けられていることがあります。

そのため、

昔から正社員だけが取得している

という会社もあるでしょう。

しかし、制度が長く続いていること自体が、待遇差の合理的な理由になるわけではありません。

なぜ正社員だけなのか。

なぜ長期間勤務している契約社員は対象外なのか。

その休暇は何を目的としているのか。

こうした点を改めて確認する必要があります。

参考資料でも、自社の待遇の性質や目的が曖昧な場合には、その目的を明確にするなどの見直しが重要とされています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

2026年改正は、長年続いてきた休暇制度の目的を見直す機会にもなるのです。

結論

夏季冬季休暇について、正社員と非正規社員の制度が違っていることが直ちに不合理になるわけではありません。

しかし、

非正規社員だから夏季冬季休暇はない

という理由だけでは、待遇差を十分に説明できない場合があります。

特に、契約更新を繰り返して相応に長期間勤務することが見込まれている非正規社員については、休暇の目的が同じように当てはまらないかを確認する必要があります。

また、正社員と非正規社員の仕事内容や責任が違っていたとしても、それだけで休暇の待遇差まで合理的になるとは限りません。

重要なのは、

仕事に違いがあるか

だけではなく、

その違いが夏季冬季休暇の目的と関係しているか

という点です。

基本給には基本給の目的があります。

賞与には賞与の目的があります。

そして休暇には休暇の目的があります。

同一労働同一賃金では、それぞれの待遇を一つずつ取り出し、その性質と目的に照らして待遇差を判断する必要があります。

夏季冬季休暇は、仕事内容だけを比べるのでは不十分だという同一労働同一賃金の考え方を理解するうえで、分かりやすい待遇の一つなのです。

参考

企業実務 2026年9月号 同一労働同一賃金改正対応の総点検

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