リース会計はなぜ変わってきたのか オフバランスからオンバランスへの長い歩み編

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企業が設備などを利用する方法には、自ら購入する方法だけでなく、リースを利用する方法があります。

ところが、経済的には設備を長期間利用し、その対価を継続的に支払っているにもかかわらず、その資産や負債が貸借対照表に十分に表れないと、企業の実態が分かりにくくなることがあります。

そこで長年議論されてきたのが、リース取引のオンバランス化です。

今回の資料では、1990年代から2000年代にかけてリース会計基準がどのように作られ、なぜオンバランス化まで長い時間がかかったのかが詳しく振り返られています。

会計基準は理論だけでは決まりません。

企業実務や税制との関係などを調整しながら変わっていくことが、リース会計の歴史からよく分かります。

オンバランスとは何か

オンバランスとは、資産や負債を貸借対照表に計上することです。

企業が設備を購入すれば、通常はその設備が資産として貸借対照表に計上されます。

一方、リースという契約形態を利用した場合、取引をどのように会計処理するのかという問題があります。

リース資産と、それに対応する負債を貸借対照表に計上すれば、企業が利用している資産と負担している債務を財務諸表に反映できます。

これがリース取引のオンバランス化を考える基本になります。

オフバランス取引が問題になった

資料では、リース取引について多額の簿外負債が問題になった事例にも触れています。

貸借対照表に計上されなければ、財務諸表を見る側からは企業が実質的にどの程度の負担を抱えているのかが分かりにくくなることがあります。

この問題はリースだけに限りません。

当時はオフバランス取引そのものが企業会計上の重要な問題として意識されていました。

契約の形式だけを見るのではなく、その取引が企業にどのような経済的な影響を与えているのかを財務諸表に反映することが求められるようになっていったのです。

リース会計の審議は1992年に始まった

資料によると、企業会計審議会は1992年5月にリース会計に関する基準の審議を開始しました。

この審議開始時期については、後にさまざまな見方も示されました。

しかし資料の筆者は、特別な政治的意図によってリース会計の審議が遅らされたという見方には否定的です。

当時、企業会計審議会では監査基準などについても作業が進められていました。

限られた体制の中で複数の重要な課題に対応していたという背景が説明されています。

会計基準の策定には時間がかかります。

単純にオンバランスにするかどうかだけを決めれば終わる問題ではなかったのです。

1993年にリース会計基準が公表された

1993年6月、企業会計審議会から「リース取引に係る会計基準に関する意見書」が公表されました。

資料によると、この会計基準ではファイナンス・リース取引について、売買処理によってリース資産と負債をオンバランスすることを原則としました。

これは重要な考え方です。

契約の形式がリースであっても、取引の実態を踏まえて売買に準じた会計処理を行い、資産と負債を貸借対照表に計上することを原則としたからです。

しかし、ここで問題が残りました。

原則は売買処理でも例外が認められた

1993年の基準では、売買処理によるオンバランスを原則とする一方で、例外も認められました。

資料では、例外として賃貸処理と注記による方法も許容されたと説明されています。

そして実際には、ほとんどの企業がこの例外処理を採用したとされています。

つまり、基準上はオンバランスが原則になったものの、実務では例外処理が広く利用されたことになります。

原則を定めただけでは、実際の企業会計が一気に変わるとは限らないことが分かります。

なぜオンバランス化に時間がかかったのか

資料では、オンバランス化に対する業界の反対が非常に強かったことがうかがえるとされています。

会計処理が変われば、企業の貸借対照表の見え方も変わります。

これまで貸借対照表に表れていなかった資産や負債が計上されることになるからです。

そのため、会計基準の変更は単なる経理処理の変更では終わりません。

企業の財務諸表に直接影響するため、実務に大きな影響を与えます。

資料では、当時の基準策定に関わった人々が大きなプレッシャーを受けながら審議を進めていた様子も紹介されています。

それでも売買処理という原則は残された

1993年の基準では例外処理が認められたため、オンバランス化を強制できなかったことに対して批判もありました。

しかし資料では、それでも原理原則を曲げず、売買処理を会計基準に記したことの意味を重視しています。

原則として売買処理を行うという考え方を基準に残したことで、その後の改革につながったという見方です。

会計基準の改革は、一度ですべて完成するとは限りません。

まず原則を示し、その後の環境変化や議論を経ながら制度を変えていくこともあります。

リース会計はその典型的な事例といえます。

ASBJでも長い審議が続いた

その後、日本の会計基準設定の中心的な役割はASBJへと移っていきます。

しかし、組織が変わったからといってリース会計の問題がすぐに解決したわけではありません。

資料によると、ASBJでは2001年11月にテーマ協議会から提言を受けてから、2007年3月に新しいリース会計基準が公表されるまで長い期間を要しました。

オンバランス化への反対が依然として根強く、審議の中断もあったとされています。

企業会計審議会からASBJへ基準設定の主体が変わっても、リース会計をめぐる難しさそのものは残っていたことが分かります。

2007年に例外処理が廃止された

大きな転換点となったのが2007年3月です。

資料では、ASBJによって新たなリース会計基準である基準第13号が公表されたとされています。

この基準によって、それまで認められていた例外処理が廃止され、売買処理を行うことになりました。

1993年の基準で原則として示されていた売買処理が、長い時間を経て実務上も徹底される方向へ進んだことになります。

1993年から2007年まで約14年です。

リース会計のオンバランス化が短期間で実現したものではないことが分かります。

税制との関係も重要だった

資料で興味深いのは、会計基準だけでリース会計の改革が完結したわけではない点です。

ASBJが新しいリース会計基準を公表するまでには、税制との関係もありました。

資料では、税制上も売買処理への対応が図られることによって、ASBJが会計基準を公表することができたと説明されています。

企業にとって会計と税務は別の制度ですが、実務では両者が大きく異なると対応が複雑になります。

リース会計の歴史は、会計基準を変更するときに税制を含めた周辺制度との調整も重要になることを示しています。

会計基準は理論だけでは変えられない

リース会計の歴史を見ると、会計基準の設定が非常に現実的な調整の上に成り立っていることが分かります。

理論的に望ましい会計処理を考えるだけなら、オンバランス化という方向を示すことはできるかもしれません。

しかし、実際に企業へ適用するためには、企業実務への影響を考えなければなりません。

経済界からの意見もあります。

税制との調整もあります。

国際的な会計基準の動向もあります。

こうしたさまざまな問題を乗り越えながら、会計基準は実際の制度になっていきます。

オフバランスからオンバランスへの歴史が示すもの

リース会計の改革を長い目で見ると、一つの方向が見えてきます。

それは、契約の形式だけではなく、企業が抱える経済的な実態を財務諸表により適切に反映しようとする方向です。

リースだから貸借対照表に載せないという考え方ではなく、取引の実態を踏まえて資産や負債を財務諸表に表します。

財務諸表を見る側にとっても、企業がどのような資産を利用し、どのような負担を抱えているのかを把握するための重要な情報になります。

リース会計のオンバランス化は、財務諸表で企業の実態をどこまで表現するのかという会計の基本的な問題だったのです。

結論

リース会計は、オフバランスからオンバランスへと長い時間をかけて変化してきました。

企業会計審議会は1992年5月にリース会計の審議を開始し、1993年6月には「リース取引に係る会計基準に関する意見書」を公表しました。

ファイナンス・リース取引について売買処理によるオンバランスを原則としましたが、賃貸処理と注記による例外も認められたため、実際には多くの企業が例外処理を採用しました。

その後もオンバランス化をめぐる議論は続き、ASBJが2007年3月に新たなリース会計基準を公表し、例外処理を廃止して売買処理へ移行しました。

そこに至るまでには、企業側の反対や税制との調整など多くの課題がありました。

リース会計の歴史から分かるのは、会計基準は理論だけで一気に変わるものではないということです。

企業の経済的な実態を財務諸表へ適切に反映するという原則を維持しながら、企業実務や周辺制度との調整を積み重ねて改革していく必要があるのです。

参考

青山学院大学会計プロフェッション研究 2026年3月 プロジェクトX【会計基準等の改革】を振り返る

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