研究開発税制とは何か 企業が研究開発にお金を使うと法人税が減る仕組み編

税理士
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企業が新しい製品や技術を生み出すためには、多額の研究開発投資が必要です。しかし、研究開発にお金を使ったからといって、必ず新製品が完成したり利益につながったりするとは限りません。

こうした企業の研究開発を税制面から後押しする仕組みが研究開発税制です。

研究開発税制では、一定の試験研究費について、その一部を法人税額から直接差し引くことができます。単に経費として所得から差し引くだけではなく、法人税そのものを減らせる「税額控除」であるところが大きな特徴です。

資料では、研究開発税制について「研究開発投資額の一定割合を法人税額から税額控除できる制度」と整理されています。

研究開発税制は企業の研究開発を後押しする制度

企業が利益を上げると、その所得に対して法人税が課されます。

一方、新しい製品や技術を生み出すためには、研究者の人件費、原材料費、外注費など、さまざまな研究開発費が必要になります。

研究開発税制では、一定の要件を満たす試験研究費について、計算された法人税額から一定額を差し引くことができます。

つまり、研究開発に積極的に取り組む企業の税負担を軽減し、次の研究開発に資金を回しやすくする仕組みです。

そもそも研究開発税制は、すべての企業に一律に税負担を軽減する制度ではありません。

資料では、研究開発税制やイノベーションボックス税制は租税特別措置法によって規定された租税優遇措置であり、政策目的の実現がその趣旨であると説明されています。

経費になることと税額控除は違う

研究開発税制を理解するときに重要なのが、「経費になること」と「税額控除を受けられること」は別だという点です。

例えば、研究開発に1,000万円を支出したとします。

この1,000万円を損金として処理できれば、法人税を計算する基礎となる所得が減少します。

これに対して研究開発税制による税額控除は、一定の計算によって求めた金額を、最終的に計算された法人税額から直接差し引く仕組みです。

所得を減らす「所得控除」ではなく、税額そのものを減らす「税額控除」であることがポイントです。

研究開発税制には一般型がある

研究開発税制の基本となるのが一般型です。

資料では、研究開発投資の全体額に適用できる制度として一般型が示されています。

一般型はすべての法人を対象とし、資料に示された既存措置では、試験研究費の増減率などに応じて税額控除率が0%から14%、控除上限は原則として法人税額の25%とされています。

重要なのは、研究開発費を単に支出すれば一定額が必ず控除されるわけではないことです。

どのくらい研究開発投資を行っているのか、以前と比べて研究開発費が増えているのかといった要素が税額控除に関係します。

研究開発投資を増やす企業ほど税制上のメリットを受けやすくする考え方が組み込まれています。

中小企業にはより手厚い制度がある

中小企業については「中小企業技術基盤強化税制」が設けられています。

資料では、資本金1億円以下など一定の中小企業について、一般型より高い控除率を適用できる仕組みが示されています。

既存措置では税額控除率が12%から17%、控除上限は原則として法人税額の35%とされています。

大企業だけではなく、中小企業による技術開発を後押しすることも研究開発税制の重要な役割です。

中小企業では研究開発の失敗が経営に与える影響も大きくなります。税制によって一定の負担を軽減することには、企業が新しい技術に挑戦しやすくする意味があります。

大学やスタートアップとの共同研究も優遇される

企業内部だけで研究開発を完結させる必要はありません。

大学、国の試験研究機関、スタートアップなどと共同研究や委託研究を行う場合には、オープンイノベーション型という仕組みがあります。

資料では、連携先などに応じて20%、25%、30%の税額控除率が示され、一般型とは別枠で法人税額の10%という控除上限が示されています。

企業が自社だけで研究するのではなく、大学やスタートアップなどが持つ知識や技術を取り込むことを税制面から後押ししているわけです。

研究開発なら何でも対象になるわけではない

注意したいのは、会社が「これは研究開発です」と判断しただけで研究開発税制を利用できるわけではないことです。

税務上の「試験研究」に該当する必要があります。

資料では、試験研究について、新たな知見を得るため、または利用可能な知見の新たな応用を考案するために行う創造的で体系的な活動のうち、自然科学に係るものと説明されています。

新製品や新技術だけではなく、現在生産している製品や既存技術の改良、考案、発明についても対象になり得ます。

一方、マーケティング調査、既存製品の品質管理、単なる模倣など、試験研究に含まれない活動もあります。

そのため、研究開発税制では「研究開発費をいくら使ったか」だけではなく、「何のために、どのような活動を行ったのか」を確認することが重要になります。

研究開発税制は企業の将来への投資を支える

研究開発は、今日お金を使えば明日すぐ利益が出るようなものではありません。

何年間も研究を続けても商品化できないことがあります。商品化できても市場で受け入れられない可能性もあります。

それでも、新しい製品や技術を生み出さなければ、企業が長期的に成長することは難しくなります。

研究開発税制は、この不確実性の高い研究開発への投資を税制面から支える仕組みと考えることができます。

さらに現在は、研究開発にお金を使う段階だけでなく、その成果として生まれた特許権やAI関連プログラムから利益を得る段階を支援するイノベーションボックス税制も設けられています。

研究開発から知的財産の収益化までを一連の流れとして捉えることが、これからますます重要になっていきます。

結論

研究開発税制とは、企業が行った一定の試験研究について、研究開発投資額の一定割合を法人税額から直接差し引ける制度です。

一般型だけでなく、中小企業向けの制度や大学、スタートアップなどとの共同研究を優遇する仕組みも設けられています。

重要なのは、単に研究開発費という名前で経費を計上すれば利用できる制度ではないことです。

どの活動が税務上の試験研究に該当するのか、どの人件費や外注費まで対象になるのかを正しく整理する必要があります。

研究開発税制を理解する第一歩は、会計上の「研究開発費」と税務上の「試験研究費」は必ずしも同じではないと知ることです。

次回は、この違いを詳しく見ていきます。

参考

第33回青山学院大学同窓祭公開講座 2026年9月23日 R&D税制とイノベーションボックス税制 会計プロフェッショナルによるイノベーション・コンサルテーション

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