地震や豪雨などで取引先が被災したとき、企業が売掛金を免除したり、復旧のための支援を行ったりすることがあります。
ここで気になるのが交際費です。
取引先に対して経済的な利益を与えるのであれば、接待や贈答と同じように交際費として扱われるのではないかと考えることもできます。
しかし、被災した取引先の復旧を支援するために行われる一定の行為については、交際費等に該当しない取扱いが設けられています。
なぜ同じ取引先への支出でも、通常の接待や贈答とは税務上の扱いが異なるのでしょうか。
ポイントは、支出の目的にあります。
交際費は取引関係を円滑にするための支出
法人税の実務では、取引先など事業に関係する者に対して行う接待、供応、慰安、贈答などのために支出する費用が交際費等の問題になります。
例えば取引先を飲食店でもてなしたり、贈答品を渡したりするケースです。
こうした支出には、取引関係を円滑にしたり、今後の取引を有利に進めたりする目的があります。
相手が取引先であるというだけで、すべての支出が交際費になるわけではありません。
誰に対する支出なのかだけでなく、何のために支出したのかを見る必要があります。
この考え方が災害時の復旧支援でも重要になります。
災害復旧支援は接待や贈答とは目的が違う
例えば、長年取引している販売先の店舗が豪雨によって浸水したとします。
商品や設備が失われ、営業を再開するためには多額の資金が必要です。
この取引先に対して売掛金の一部を免除した場合、形式だけを見れば取引先に経済的利益を与えています。
しかし、その目的は取引先をもてなしたり、歓心を買ったりすることではありません。
被災した取引先を復旧させ、事業を再開できるようにすることが目的です。
そのため、通常の接待や贈答とは性質が異なります。
取引先を支援することが自社の損失回避につながる
災害復旧支援には、もう一つ重要な側面があります。
取引先が復旧できなければ、支援する企業自身にも損失が及ぶ可能性があります。
販売先が廃業すれば売上を失います。
仕入先が操業できなくなれば商品や原材料を調達できなくなる可能性があります。
外注先が事業を停止すれば、自社の生産やサービス提供にも影響します。
つまり、被災した取引先への復旧支援には、自社が将来受ける可能性のある事業上の損失を回避するという経済的な意味があります。
単なる好意による利益供与とは異なるわけです。
売掛金等の免除は一定の場合に交際費等に該当しない
災害を受けた取引先に対する復旧支援については、法人税基本通達などに取扱いが示されています。
被災した取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として売掛金などの債権を免除した場合には、一定のものについて寄附金に該当しないとされています。
交際費等についても、一定の場合には交際費等に該当しない取扱いがあります。
取引先への支援だからといって、機械的に交際費として処理するわけではありません。
その支援の実態を見ることになります。
被災していることだけでは十分ではない
注意したいのは、取引先が被災していればどのような支出でも交際費等から除外されるわけではないという点です。
例えば被災した取引先の担当者を高級飲食店に招待した場合、それだけで復旧支援になるわけではありません。
通常の接待として行われたのであれば、交際費等としての検討が必要になります。
一方、取引先の復旧に必要な債務負担を軽減するため売掛金を免除するのであれば、目的が異なります。
重要なのは災害という言葉ではなく、その支出が何のために行われたのかという実態です。
復旧過程における支援かどうかを見る
災害時の特別な取扱いを考えるうえでは、復旧過程という点も重要です。
災害によって工場が損壊した取引先が、生産再開のために設備を修復している時期に支援するのであれば、復旧支援との関係は分かりやすくなります。
一方、すでに復旧が完了し、通常の事業活動に戻ってから行われた利益供与については、なぜ災害復旧支援なのかを慎重に確認する必要があります。
災害発生から何日以内ならよいという単純な問題ではありません。
実際に取引先がどのような復旧過程にあるのかを見る必要があります。
支援内容が合理的かどうかも重要になる
復旧支援という目的があっても、支援内容とのバランスは重要です。
例えば取引先の被害が限定的なのに、非常に大きな売掛金をすべて免除した場合には、なぜその規模の支援が必要だったのかという問題が生じます。
被害の程度、取引規模、今後の取引関係、事業再開に必要な資金などを踏まえて判断する必要があります。
全額免除だけでなく、一部免除や支払期限の延長なども選択肢になります。
災害支援だから無制限に認められるのではなく、復旧支援として合理的な内容になっていることが大切です。
災害支援と通常の営業活動を区別する
実務では、災害発生後にさまざまな支出が同時に発生します。
取引先への債権免除だけでなく、見舞品を渡したり、従業員を派遣したり、物資を提供したりすることもあります。
これらをすべて同じ税務処理にするとは限りません。
復旧支援として行われたものなのか、通常の営業活動として行われたものなのか、接待や贈答として行われたものなのかを個別に確認する必要があります。
支出の名称ではなく、実際の目的と内容で判断することが重要です。
なぜ支援したのかを記録しておく
災害時には迅速な意思決定が求められます。
その一方で、税務上の取扱いを後から説明できるようにしておくことも重要です。
取引先の被災状況、復旧計画、自社との取引関係、支援内容、支援額を決定した理由などを記録しておきます。
社内の稟議書や取締役会議事録、取引先との合意書なども保存しておくとよいでしょう。
時間が経過すると、なぜその支援が必要だったのかを説明することが難しくなります。
復旧支援として行ったことを客観的に確認できる資料を残すことが重要です。
結論
取引先に対する支出だからといって、すべてが交際費等になるわけではありません。
交際費等に該当するかどうかを考えるうえでは、誰に支出したのかだけでなく、何のために支出したのかが重要になります。
被災した取引先の復旧過程において、その復旧を支援する目的で行われる売掛金等の免除については、一定の場合に交際費等に該当しない取扱いがあります。
これは接待や贈答とは異なり、取引先の事業を復旧させるとともに、自社が受ける事業上の損失を回避するという意味があるためです。
ただし、災害という理由だけで、取引先に対するすべての支出が交際費等から除外されるわけではありません。
復旧支援という目的、被災状況との関係、支援内容の合理性を確認する必要があります。
災害支援と通常の接待を分けるポイントは、支出の相手ではなく、その支出が何を目的として行われたのかにあります。
参考
税のしるべ 2026年9月21日 特集 災害発生 そのとき法人税務はどうなる? 災害に伴う支援と損失処理
法人税基本通達 9-4-6の2
租税特別措置法関係通達 61の4⑴-10の2