2026年7月、全国524すべての税務署について、内部事務を業務センターで処理する体制が整いました。
国税庁は2021年7月から、複数の税務署で行っていた内部事務を業務センターへ集約する内部事務のセンター化を進めてきました。
税務署の仕事というと、確定申告の相談や税務調査を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、税務署では納税者から見える仕事だけでなく、申告書や申請書などを処理する大量の内部事務も行っています。
なぜ、その仕事をそれぞれの税務署で行うのではなく、業務センターへ集約するのでしょうか。
背景には、税務行政の効率化と税務調査や徴収事務の充実という二つの狙いがあります。
税務署には内部事務と外部事務がある
税務署の仕事を理解するうえで、まず内部事務と外部事務の違いを知っておく必要があります。
内部事務は、申告書や申請書などの処理をはじめ、税務署内部で行われるさまざまな事務です。
一方、外部事務には税務調査や徴収事務などがあります。
税務署の職員数には限りがあります。
内部事務に多くの職員を配置すれば、その分だけ税務調査や徴収などに使える人員も限られます。
そこで国税庁が進めてきたのが、内部事務をまとめて処理する仕組みです。
内部事務のセンター化とは何か
従来は、それぞれの税務署で多くの内部事務を処理していました。
内部事務のセンター化では、複数の税務署の内部事務を業務センターへ集約します。
例えば複数の税務署で同じ種類の事務をそれぞれ処理するより、一つの拠点へまとめて処理した方が業務を標準化しやすくなります。
人員や設備も効率的に利用できます。
国税庁は2021年7月からこの取り組みを進め、2026年7月には全国524すべての税務署について業務センターで内部事務を処理する体制を整えました。
税務行政の仕事の配置そのものを大きく組み替えたことになります。
なぜ全国でセンター化するのか
センター化の目的の一つは、内部事務の効率化と高度化です。
同じような仕事を全国の税務署で個別に行うと、それぞれに人員や処理体制が必要になります。
これを集約すれば、業務をまとめて処理できます。
さらに、税務行政では電子申告やデータ処理が広がっています。
仕事を集約し、デジタル化を進めれば、より効率的な事務処理につなげやすくなります。
内部事務のセンター化は単独の改革ではなく、税務行政DXの一部として見る必要があります。
税務署は税務調査や徴収へ力を振り向ける
センター化には、もう一つ重要な目的があります。
外部事務の充実と高度化です。
内部事務を業務センターへ集約できれば、税務署では税務調査や徴収などの仕事へ職員を振り向けやすくなります。
国税庁ではAIやデータ分析を利用して、申告漏れのリスクが高い案件を絞り込む取り組みも進めています。
データ分析によって調査すべき案件を見つけても、実際に調査する職員が必要です。
内部事務を効率化することは、税務調査の体制を充実させることにもつながるわけです。
書面の提出先には注意が必要
センター化は納税者にも直接関係します。
特に注意したいのが、申告書や申請書、添付書類などを書面で提出する場合です。
青木孝徳国税庁長官は、提出方法について二つに分けて説明しています。
e Taxによりデータで提出する場合は、所轄税務署へ送信します。
一方、書面で提出する場合は、業務センターへ郵送します。
電子申告の場合と紙の場合では、提出方法が異なることになります。
内部事務が税務署から業務センターへ移ったことを理解しておく必要があります。
業務センターから問い合わせが来ることもある
もう一つ知っておきたいのが問い合わせです。
内部事務を業務センターで処理するため、申告内容などについて確認が必要になれば、業務センターから納税者や税理士へ電話や文書で問い合わせが行われる場合があります。
これまで税務署から連絡が来るというイメージを持っていた人は、業務センターから連絡が来ることに戸惑うかもしれません。
しかし、全国でセンター化が進んだことで、内部事務については業務センターが納税者と直接やり取りする場面が生じます。
税務署と業務センターの役割分担を知っておくことが大切です。
KSK2との組み合わせでさらに変わる
2026年9月24日には、国税庁の新しい基幹システムKSK2も導入されます。
KSK2では、書面処理からデータ処理への転換やAI、データ活用の推進が掲げられています。
業務センターによる事務の集約とKSK2によるデータ処理を組み合わせれば、税務行政の仕事をさらに効率化できる可能性があります。
つまり、場所の集約が業務センター化であり、情報処理の改革がKSK2だと考えると分かりやすいでしょう。
この二つが同時に進むことで、税務署の仕事の姿そのものが変わっていきます。
税務署がなくなるわけではない
内部事務がセンター化されたからといって、税務署そのものが不要になるわけではありません。
税務調査や徴収をはじめ、税務署が担う仕事は残ります。
むしろ国税庁が目指しているのは、定型的な内部事務を集約、効率化し、税務署の職員を外部事務などへ振り向けることです。
税務署から仕事がなくなるのではなく、税務署が担う仕事の重点が変化していくと考えるべきでしょう。
結論
内部事務のセンター化とは、それぞれの税務署で行ってきた申告書や申請書などに関する内部事務を業務センターへ集約する取り組みです。
2021年7月から進められ、2026年7月には全国524すべての税務署について、業務センターで内部事務を処理する体制が整いました。
目的は内部事務を効率化、高度化するとともに、税務調査や徴収などの外部事務を充実させることです。
納税者にとっては、書面で申告書などを提出する場合の郵送先や、業務センターから問い合わせが来ることなどが重要な変化になります。
さらにKSK2によるデータ処理やAI活用が加わります。
これからの税務行政は、すべての仕事を各税務署で完結させる形から、内部事務は業務センターへ集約し、税務署は調査や徴収などに力を振り向ける形へと変わっていくのです。
参考
税のしるべ 2026年9月21日 青木新長官にインタビュー、KSK2導入で納税者の利便性向上へ