働く場所や時間が自由になると、社員は自分の生活に合わせて働きやすくなります。
一方で、会社から社員の状態が見えにくくなるという問題も生まれます。
毎日会社に出社していれば、上司や同僚が顔色や様子の変化に気づくことがあります。
しかし、リモートワークが増えれば、同じ職場で顔を合わせる機会は少なくなります。
さらに、働く時間まで社員ごとに異なれば、誰かが働きすぎていても周囲が気づきにくくなる可能性があります。
元記事では、カオナビが柔軟な働き方を続ける中で、仕事と生活の境界が曖昧になり、深夜勤務が増える健康リスクを懸念していることが紹介されています。
その対策として行っているのが、パルスチェックなどによる社員の健康面の早期チェックです。
パルスサーベイとは何か
パルスサーベイとは、一般に社員の状態を短い間隔で継続的に確認するための簡易的な調査を指します。
パルスとは脈拍という意味です。
人の脈拍を測るように、組織や社員の状態を定期的に確認するというイメージです。
ただし、今回の元記事ではパルスサーベイという制度について詳しく説明しているわけではありません。
記事で確認できるのは、カオナビが柔軟な勤務制度による健康リスクへの対策として、パルスチェックなどを利用し、社員の健康面を早期に確認しているという点です。
したがって、具体的にどのような質問をしているのか、どの程度の頻度で実施しているのかまでは元記事からは分かりません。
重要なのは、問題が大きくなってから対応するのではなく、社員の状態を継続的に確認しながら早い段階で変化を捉えようとしていることです。
従業員満足度調査とは何が違うのか
社員を対象とする調査としては、従業員満足度調査などもあります。
会社や仕事にどの程度満足しているのかを調べ、職場環境や人事制度などの改善につなげるものです。
これに対してパルスサーベイでは、社員の状態をより短い間隔で継続的に捉えるという考え方が中心になります。
一度詳しく調査して終わるのではなく、変化を見ることに意味があります。
たとえば、ある時点では問題がなかった社員でも、仕事が忙しくなれば状態が変わる可能性があります。
家庭環境が変化することもあります。
リモートワークが続くことで働き方に変化が生じることも考えられます。
社員の状態は固定されたものではありません。
そのため、一回の調査結果だけではなく、継続して変化を確認するという発想が重要になります。
短期間で繰り返す意味
社員の状態を短い間隔で確認する意味は、変化を早く発見しやすくすることにあります。
仮に一年に一回しか調査をしなければ、その間に社員の状態が悪化しても、調査結果として会社が把握するまで時間がかかる可能性があります。
短い間隔で確認すれば、変化が起きたときに気づきやすくなります。
特に柔軟な働き方では、この考え方が重要になります。
元記事では、カオナビのMy Work Styleは開始から約6年が経過し、制度を運用する中で新たな課題が見えてきたことが紹介されています。
社員の平均勤務時間は2025年度実績で一日8時間46分となっており、最近はやや長くなる傾向にあるとされています。
制度があるかどうかだけではなく、制度を利用した結果として社員の働き方がどう変化しているのかを見る必要があるわけです。
リモートワークでは社員の状態が見えにくい
リモートワークには、通勤せずに働けるなど多くのメリットがあります。
しかし、会社と社員が物理的に離れるという特徴があります。
カオナビでは全社員のリモートワーク率が78.7%で、5人に4人近くがリモートワークを行っていると元記事では紹介されています。
社員間のコミュニケーションも主にチャットアプリで行われています。
オンラインで仕事上の情報をやり取りすることはできます。
しかし、仕事ができていることと、社員が健康な状態で働けていることは別の問題です。
毎日顔を合わせていれば気づけた小さな変化が、リモートワークでは分かりにくくなることも考えられます。
だからこそ、社員の状態を把握する仕組みを意識的につくる必要があります。
柔軟な勤務時間にも健康リスクがある
元記事では、健康面の課題について、リモートワークだけを問題にしているわけではありません。
制度の柔軟さそのものにも注意しています。
カオナビでは、コアタイムを廃止したスーパーフレックスや、勤務途中で仕事を抜けられるスイッチワークなどを導入しています。
社員は生活に合わせて働く時間を調整しやすくなります。
一方で、仕事と生活の境界が曖昧になる可能性があります。
昼間に家庭の用事を済ませ、その後仕事に戻る。
仕事が終わらなければ遅い時間まで働く。
こうした働き方が続けば、深夜勤務が増える可能性があります。
元記事でも、制度の柔軟さゆえに仕事と生活の境界が曖昧になり、深夜勤務が増える健康リスクが懸念されています。
働く時間を自由にすることと、健康的に働けることは必ずしも同じではありません。
勤怠データだけでは分からないことがある
柔軟な働き方を管理するうえでは、勤怠管理が重要です。
何時に勤務を開始したのか。
何時間働いたのか。
勤務途中でどの程度離席したのか。
深夜に勤務していないか。
こうした情報は勤怠データから把握できます。
しかし、勤務時間だけを見ても社員の状態をすべて把握できるわけではありません。
同じ8時間勤務でも、余裕を持って働いている社員と、大きな負担を感じながら働いている社員がいるかもしれません。
そこで、客観的な勤怠情報だけではなく、社員側の状態も確認する必要が出てきます。
元記事で紹介されているパルスチェックなどによる健康面の早期チェックは、こうした管理を補う取り組みとして考えることができます。
問題が起きてからではなく早期に確認する
健康管理で重要なのは、問題が深刻になってから初めて対応するのではないということです。
社員が長期間働けなくなるほど体調を崩してから対応するのでは遅い場合があります。
勤務時間が長くなってきた。
深夜勤務が増えてきた。
社員の状態に変化が見られる。
こうした小さな兆候の段階で確認できれば、早めの対応につなげられる可能性があります。
元記事では、カオナビがパルスチェックなどによって社員の健康面の早期チェックを行いながら、制度の健全な運用を模索しているとしています。
つまり、柔軟な勤務制度を廃止するのではありません。
制度のメリットを維持しながら、その副作用をできるだけ小さくする方法を探しているわけです。
制度は導入して終わりではない
カオナビの事例から見えてくる重要な点は、働き方の制度を導入して終わりにしていないことです。
My Work Styleの開始から約6年が経過したことで、新たな課題も見えてきています。
平均勤務時間の変化があります。
深夜勤務の健康リスクがあります。
出社率が現在の組織にとって最適なのかという問題もあります。
働き方を柔軟にすると、それまで存在しなかった問題が生まれることもあります。
だからこそ、実際の運用状況を確認しながら制度を修正していく必要があります。
パルスチェックも、そのための情報を得る手段の一つとして位置づけることができます。
結論
パルスサーベイとは、一般に社員の状態を短い間隔で継続的に確認し、その変化を把握するための簡易的な調査を指します。
今回の元記事では、カオナビが具体的にどのような質問や頻度で実施しているかまでは説明されていませんが、パルスチェックなどによって社員の健康面を早期に確認していることが紹介されています。
柔軟な働き方では、社員が時間や場所にとらわれずに働きやすくなる一方、仕事と生活の境界が曖昧になり、深夜勤務などの健康リスクが生じる可能性があります。
特にリモートワークでは、社員の状態を対面で確認する機会も少なくなります。
だからこそ、勤怠データによって労働時間を管理するだけでなく、社員自身の状態の変化も継続的に確認することが重要になります。
働き方を自由にして終わりではありません。
その自由な働き方を社員が健康な状態で続けられているかまで確認する。
柔軟な働き方が広がるほど、社員の小さな変化を早期に把握する仕組みの重要性も高まっていくと考えられます。
参考
企業実務 2026年9月号 場所と時間に縛られない働き方で生産性向上を目指す