柔軟な働き方で労働時間が長くなるのはなぜか いつでも働ける制度が長時間労働につながる理由編

人生100年時代
ブルー ベージュ ミニマル note ブログアイキャッチ - 1

働く時間を自由に選べる制度は、社員にとって大きなメリットがあります。

朝早く働くこともできます。

家庭の用事のために仕事を途中で抜け、後から勤務を再開することもできます。

自宅からリモートワークをすることもできます。

しかし、働き方の自由度が高くなれば、必ず労働時間が短くなるわけではありません。

元記事では、カオナビの柔軟な勤務制度について、開始から約6年が経過する中で社員の平均勤務時間が最近やや長くなる傾向があり、深夜勤務が増える健康リスクも懸念していると紹介されています。

柔軟に働けることが、逆に仕事と生活の境界を曖昧にする可能性があるからです。

仕事と生活の境界が曖昧になる

従来の出社勤務では、仕事と生活の境界は比較的分かりやすいものでした。

会社へ出社すれば仕事が始まります。

仕事が終わって会社を出れば、私生活に戻ります。

もちろん自宅に仕事を持ち帰る場合などもありますが、少なくとも働く場所という意味では、会社と自宅を分けやすい働き方でした。

リモートワークでは、この境界が変わります。

自宅が生活する場所であると同時に、仕事をする場所にもなるからです。

さらに、スーパーフレックスやスイッチワークのような制度を利用すれば、働く時間についても境界が柔軟になります。

朝に働く。

昼間に家庭の用事を済ませる。

夕方にもう一度働く。

このような働き方が可能になります。

生活に合わせて仕事ができるというメリットがある一方で、どこからが仕事で、どこからが私生活なのかが分かりにくくなる可能性があります。

いつでも働けることには二つの側面がある

働く時間の自由度が高い制度では、自分の都合に合わせて勤務時間を決めることができます。

これは大きな利点です。

しかし、

いつでも働ける。

という状態は、

いつまでも働ける。

という状態にもなり得ます。

たとえば昼間に家事や育児のため仕事を抜けたとします。

その時間を夜に補うことができれば、仕事と家庭を両立しやすくなります。

ところが、仕事が終わらなければ、さらに遅い時間まで働いてしまうことも考えられます。

通勤していれば帰宅という区切りがありますが、自宅で働いている場合には、仕事を終了させるきっかけを自分でつくらなければなりません。

働く時間を自分で選べる制度では、仕事を始める自由だけでなく、仕事を終わらせる自己管理も必要になるのです。

深夜勤務が増える問題

元記事では、制度の柔軟さによって仕事と生活の境界が曖昧になり、深夜勤務が増える健康リスクを懸念していることが紹介されています。

これは柔軟な勤務制度を考えるうえで重要な問題です。

カオナビのスーパーフレックスでは、従来のコアタイムを廃止し、朝5時から夜10時までの間で任意の時間帯を選択して働くことができます。

勤務時間の選択肢が広がれば、自分の生活に仕事を合わせやすくなります。

一方、仕事を後ろの時間帯にずらすことも容易になります。

昼間に仕事を抜けた後、夕方から再び働く。

さらに仕事が残っていれば、遅い時間まで勤務する。

こうした働き方が繰り返されれば、生活時間が後ろにずれていく可能性があります。

制度上働くことができる時間と、健康的に働き続けられる時間は必ずしも同じではありません。

柔軟性と長時間労働は反対ではない

柔軟な働き方という言葉からは、社員の負担が小さくなるイメージがあります。

しかし、柔軟性と労働時間の短さは別の問題です。

柔軟性とは、主にいつ、どこで、どのように働くのかについて選択肢があることです。

労働時間が長いか短いかとは直接同じ意味ではありません。

働く時間帯を自由に選択できても、実際に働く時間が長ければ長時間労働になります。

むしろ、勤務時間が固定されていないことで、自分自身でも一日にどれだけ働いたのかを意識しにくくなる可能性があります。

カオナビでは社員ごとに働き方が異なるため、勤怠管理は複雑になります。

そのため、自社の勤怠システムを利用し、勤務スケジュールや勤務状況などを社員自身が入力する仕組みを整えています。

自由な働き方を維持するためにも、実際の労働時間を把握することが欠かせません。

平均勤務時間が長くなる傾向もある

元記事では、My Work Styleの開始から約6年が経過する中で、社員の平均勤務時間についても触れています。

2025年度実績では、一日平均8時間46分となっています。

さらに、最近は勤務時間がやや長くなる傾向にあるとしています。

ここで注目したいのは、柔軟な働き方を長期間運用したからこそ新しい課題が見えてきている点です。

制度を導入した時点では、働き方の自由度を高めることによるメリットが注目されます。

しかし、実際に何年も運用すると、社員がどのように制度を利用するのかが分かってきます。

柔軟な働き方が定着した後には、自由度をさらに高めるだけではなく、その制度が社員の働きすぎにつながっていないかを確認する段階が必要になります。

自己管理だけに任せてはいけない

働く時間を社員自身が選べるのであれば、長時間労働を防ぐのも社員本人の責任だと考えることもできます。

しかし、元記事の事例では、社員の自己管理だけに任せているわけではありません。

会社側でも健康面の早期チェックなどを行っています。

柔軟な働き方では、社員自身が勤務時間を管理する重要性が高まります。

一方で、会社側も社員の勤務状況を把握し、問題が起きていないかを見る必要があります。

自由度を高めることと、会社が管理をしなくなることは同じではありません。

むしろ社員の働く場所や時間がバラバラになるほど、会社側には勤務実態を正確に把握する仕組みが求められます。

会社による健康管理が必要になる

元記事では、健康リスクへの対策として、パルスチェックなどによって社員の健康面を早期に確認しながら、制度の健全な運用を模索していることが紹介されています。

これは柔軟な働き方を長く続けるために重要な考え方です。

制度を利用できるかどうかだけを見るのではありません。

社員がその制度を利用した結果、どのような状態になっているのかまで確認します。

勤務時間が長くなっていないか。

深夜勤務が増えていないか。

健康面に変化がないか。

こうした状況を確認しながら制度を運用する必要があります。

柔軟な勤務制度は、一度つくれば完成するものではありません。

実際の利用状況を確認し、問題が見つかれば運用を見直していくことが必要です。

柔軟な働き方の目的を忘れない

元記事で紹介されているMy Work Styleの目的は、単純に社員を自由に働かせることではありません。

社員のパフォーマンスを最大化することです。

働く時間や場所を柔軟にするのも、その目的を実現するための手段です。

もし自由な働き方によって勤務時間が長くなり、健康を損なう社員が増えれば、本来の目的とは反対の結果になってしまいます。

制度の自由度が高いほどよいとは限りません。

社員が長期的に高いパフォーマンスを発揮できる範囲で、柔軟性を確保することが重要になります。

働き方改革では、自由に働けるかどうかだけでなく、自由な働き方を無理なく続けられるかどうかまで考える必要があります。

結論

柔軟な働き方は、必ずしも労働時間を短くする仕組みではありません。

リモートワークやスーパーフレックス、スイッチワークなどによって働く場所や時間を自由にすると、仕事と生活を両立しやすくなります。

一方で、仕事と生活の境界が曖昧になり、いつでも働けることが、いつまでも働いてしまうことにつながる可能性があります。

元記事では、カオナビでも最近は平均勤務時間がやや長くなる傾向があり、深夜勤務が増える健康リスクを懸念していることが紹介されています。

そのため、パルスチェックなどによって社員の健康面を早期に確認しながら、制度の健全な運用を模索しています。

働く時間を自由にすることと、働く時間を管理しなくてよいことは同じではありません。

むしろ自由度が高くなるほど、社員自身の時間管理と会社による勤怠管理、健康管理が重要になります。

柔軟に働けることだけを目指すのではなく、柔軟な働き方を健康的に続けられる環境まで整える。

そこまで考えて初めて、働き方の自由を社員のパフォーマンス向上につなげることができるといえるでしょう。

参考

企業実務 2026年9月号 場所と時間に縛られない働き方で生産性向上を目指す

タイトルとURLをコピーしました