働いている途中で、子どもの送り迎えをしなければならない。
学校行事に参加するため、一時間だけ仕事を抜けたい。
家事や育児を済ませてから、もう一度仕事に戻りたい。
従来の働き方では、このような場合に半日休暇や時間単位の有給休暇を取得することが一般的でした。
しかし、働く時間そのものを細かく分けることができれば、必ずしも休暇を取得する必要はありません。
カオナビが導入しているスイッチワークは、勤務時間中に家事や育児などで短時間仕事を抜け、勤務中と離席中を柔軟に切り替えながら働ける仕組みです。
仕事をするか休むかという二つの選択肢だけではなく、生活の予定に合わせて仕事をいったん中断し、その後再開できるところに大きな特徴があります。
スイッチワークとは何か
スイッチワークとは、勤務時間中に一時的に仕事から離れ、その後再び勤務に戻る働き方です。
カオナビでは、勤務している状態をON、離席している状態をOFFとして切り替えます。
家事や育児などのために短時間仕事を抜けることができ、勤務状況は社員自身が入力します。
つまり、一日の勤務時間を朝から夕方まで連続した一つの時間として考えるのではありません。
仕事をする時間と生活のための時間を途中で切り替えながら、一日の仕事を組み立てます。
たとえば、朝に仕事を始め、昼間に子どもの学校行事のため一時的に離席し、帰宅後に仕事を再開するといった働き方が可能になります。
従来の働き方では、一日の中に私的な予定が入ると、それに合わせて仕事を休む必要がありました。
スイッチワークでは、仕事そのものを休むのではなく、必要な時間だけ仕事を中断するという考え方になります。
勤務中と離席中を切り替える
スイッチワークを成り立たせるためには、社員がいつ働き、いつ仕事から離れているのかを明確にする必要があります。
自由に仕事を中断できても、その時間が勤務時間なのか休憩や離席時間なのか分からなければ、会社は正確な労働時間を把握できません。
そこでカオナビでは、自社の勤怠システムを利用し、社員自身が勤務中と離席中の状況を入力する仕組みを整えています。
勤務を開始すればONにし、家事や育児などで仕事から離れる場合はOFFにします。
用事が終わって仕事に戻れば、再びONにします。
こうすることで、一日の勤務時間が細かく分かれていても実際に働いた時間を管理できます。
柔軟な働き方というと、社員が自由に働くことばかりに注目しがちです。
しかし、自由度を高めれば高めるほど、勤務時間を正確に記録する仕組みが重要になります。
働き方の自由と勤怠管理は、セットで考える必要があります。
半休や時間休とは何が違うのか
スイッチワークと似ているように見えるのが、半日単位や時間単位で取得する休暇です。
たとえば午後に子どもの学校行事がある場合、午後半休を取得すれば仕事を休むことができます。
時間単位の休暇制度があれば、必要な時間だけ休暇を取得することもできます。
ただし、休暇を利用すれば、その分だけ有給休暇などを消化することになります。
スイッチワークは考え方が異なります。
必要な時間だけ勤務を中断し、その前後で働くことができるため、一日の仕事そのものを休む必要がありません。
たとえば午後二時から三時まで私的な用事があったとしても、その前後に勤務時間を確保できるのであれば、半日を丸ごと休む必要はありません。
仕事の途中に生活上の予定を組み込めるところが大きな違いです。
元記事でも、子どもの学校行事に参加する際、スイッチワークがなければ一日休暇や半日休暇を取る必要があったので助かっているという社員の声が紹介されています。
有給休暇を本当に休みたい日に使える
スイッチワークには、有給休暇の使い方を変える効果もあります。
子育てをしていると、予定外に仕事を休まなければならない場面が発生します。
子どもが発熱することもあります。
学校行事への参加もあります。
こうした用事のたびに有給休暇を取得していると、有給休暇の残日数が減っていきます。
元記事では、育児休業から復帰した後、子どもの発熱や学校行事で有給休暇を使い切り、足りなくなってしまうという相談があったことが紹介されています。
スイッチワークを利用できれば、短時間の用事については仕事を一時的に中断することで対応できます。
その結果、有給休暇をすべて細かな用事に使わずに済みます。
元記事では、スイッチワークなどの制度によって、有給休暇も自分が取得したいタイミングでしっかり取得できている社員が多いとされています。
有給休暇を使わせないための制度ではありません。
細かな生活上の用事と、本当に一日仕事から離れて休みたい日を分けられることに意味があります。
子育てと仕事を両立しやすくなる
スイッチワークが特に力を発揮するのが、子育てとの両立です。
子育ては会社の勤務時間に合わせて発生するわけではありません。
子どもの送り迎え、学校行事、通院など、昼間に対応しなければならないこともあります。
従来のように朝から夕方まで連続して働くことを前提にすると、こうした予定があるたびに仕事との調整が必要になります。
スイッチワークでは、一日の勤務を複数の時間帯に分けることができます。
午前中に働く。
いったん仕事を抜ける。
用事が終われば再び働く。
このように勤務時間を細切れにできれば、生活上の予定を仕事の外側だけに配置する必要がなくなります。
元記事では、スイッチワークが導入された背景として、休校などで子どもが学校へ行けない中、自宅で仕事を続けることが難しいという社員の声があったことが紹介されています。
制度を会社側だけで考えたのではなく、実際に働いている社員が直面した問題から生まれた点も特徴です。
ライフイベントによる働き方の変化にも対応できる
柔軟な勤務制度が必要になるのは、子育てをしている期間だけとは限りません。
結婚や出産、育児、介護などによって、生活環境は変化します。
これまで問題なく続けていた働き方が、ある時点から難しくなることもあります。
従来型の会社では、社員が会社の勤務時間に生活を合わせる必要がありました。
生活との両立が難しくなれば、勤務時間を短くしたり、場合によっては退職したりすることも考えなければなりません。
一方、働く時間を柔軟に組み替えることができれば、仕事を続けながら生活の変化に対応できる可能性が高まります。
カオナビでは、結婚や出産などのライフイベントをきっかけとしてキャリアや働き方を見直さざるを得ない場合がある一方、自社の制度によってライフスタイルに合った働き方を自発的に選択しながら働けるとしています。
働き方を社員の生活に合わせて変えられることが、人材の定着にもつながっていくわけです。
自由に抜けられるだけでは制度は成立しない
ただし、スイッチワークは、好きなときに仕事をして好きなときに休めばよいという制度ではありません。
勤務時間を細かく分けるほど、会社側の労務管理は複雑になります。
いつ勤務を開始したのか。
いつ仕事を中断したのか。
何時に勤務を再開したのか。
一日に何時間働いたのか。
こうした情報を正確に記録しなければなりません。
また、社員同士のコミュニケーションにも工夫が必要です。
元記事では、社員間のコミュニケーションは主にチャットアプリを利用し、社員自身が現在仕事を抜けていることや、休暇の取得予定日などを自発的に発信していることが紹介されています。
一人ひとりが自由に働くからこそ、周囲に自分の勤務状況を伝える必要があります。
制度だけでなく、勤怠管理と社員同士の情報共有まで整えて初めて、スイッチワークを安定して運用できるのです。
結論
スイッチワークとは、勤務時間中に家事や育児などで一時的に仕事を抜け、その後再び仕事に戻ることができる働き方です。
勤務中と離席中を切り替えることで、一日の勤務時間を必ずしも連続した時間にする必要がなくなります。
半日休暇や時間単位の休暇との大きな違いは、仕事を休むのではなく、必要な時間だけ勤務を中断し、その前後で働けることです。
その結果、子どもの学校行事などの短時間の用事のたびに有給休暇を使わず、本当に休みたい日に有給休暇を利用しやすくなります。
一方で、勤務時間を細かく分けるほど勤怠管理は複雑になります。
社員自身による勤務状況の記録や、周囲への情報共有も欠かせません。
仕事か生活かのどちらかを選ぶのではなく、一日の中で仕事と生活を柔軟に組み合わせる。
スイッチワークは、働く時間を会社が一律に決める従来の考え方から、社員自身が生活に合わせて勤務時間を組み立てる働き方への変化を象徴する制度だといえるでしょう。
参考
企業実務 2026年9月号 場所と時間に縛られない働き方で生産性向上を目指す