世界では毎年、どれくらいの金が新しく採掘されているのでしょうか。
米地質調査所によると、2025年の世界の金鉱山生産量は約3,300トンと推計されています。
主な生産国として、中国、ロシア、オーストラリアなどが挙げられます。
一方、日本の金生産量は2024年で約4トンです。
江戸時代には世界有数の金生産国だった日本ですが、現在の世界市場に占める割合は小さくなっています。
それでも北海道などで新しい探鉱が進められているのは、金鉱山の価値が生産量の大きさだけでは決まらないからです。
世界では年間約3,300トンの金が採掘される
金は希少な金属ですが、世界各地で毎年新しい金が採掘されています。
2025年の世界の金鉱山生産量は約3,300トンと推計されています。
1年間だけで考えれば非常に大きな数字に見えます。
しかし鉄や銅など大量に使用される金属と比べると、金の生産量は限られています。
それでも金は、
宝飾品
投資
中央銀行の準備資産
電子機器などの工業用途
と幅広く使われています。
限られた新規供給を世界中の需要が取り合う構造になっています。
中国は世界を代表する金生産国
現在、世界を代表する金生産国の一つが中国です。
中国は広い国土を持ち、複数の地域で金鉱山が開発されています。
重要なのは、一つの巨大鉱山だけで国全体の生産量が決まるわけではないことです。
複数の鉱山を持ち、継続的に探鉱を行い、新しい鉱床を開発することで国全体の生産を維持します。
鉱山には寿命があります。
現在生産している鉱山の鉱石が減少していけば、別の鉱床を開発しなければ将来の生産量は減っていきます。
そのため金生産国にとって探鉱は将来の生産を支える重要な投資になります。
ロシアにも豊富な金資源がある
ロシアも世界の主要な金生産国です。
広大な国土には多くの鉱物資源が存在し、金もその一つです。
金鉱山を見る場合には、単純な生産量だけでなく地理的な条件も重要です。
資源が存在していても、鉱山が遠隔地にあれば、
道路
電力
水
労働力
輸送設備
などのインフラを整える必要があります。
金品位が高くても、鉱山までのインフラ整備に巨額の費用が必要なら、開発のハードルは高くなります。
資源量と経済的に採掘できる量が違う理由の一つです。
オーストラリアは鉱業大国として金も生産する
オーストラリアも主要な金生産国です。
同国は金だけでなく、鉄鉱石や石炭など幅広い鉱物資源を生産する鉱業国として知られています。
鉱山産業が発達した国では、資源そのものだけでなく、
地質調査
鉱山開発
大型設備
輸送インフラ
専門人材
資金調達
など鉱山を支える産業基盤が形成されています。
地下に鉱物が存在するだけでは鉱業大国にはなれません。
それを発見し、資金を集め、開発し、長期間操業する仕組みが必要です。
日本の年間約4トンは世界では小さい
日本の金生産量は2024年で約4トンです。
世界全体の約3,300トンと比較すると規模は小さくなります。
単純計算では、世界生産量の1%にも届きません。
現在の日本を世界的な金生産大国と呼ぶことは難しいでしょう。
しかし、これは「日本に金が存在しない」という意味ではありません。
現在も鹿児島県伊佐市の菱刈鉱山が操業しています。
さらに北海道雄武町、鹿児島県霧島市周辺、石川県志賀町などで探鉱の動きがあります。
生産量が少ないことと、探鉱余地がないことは別の問題です。
なぜ日本は大規模生産国になりにくいのか
世界の主要生産国には広大な国土を持つ国が多くあります。
大規模な鉱床を開発できれば、大量の鉱石を長期間処理できます。
一方、日本は国土が限られ、人口密度も高い国です。
鉱山開発では地質条件だけでなく、
土地利用
環境
周辺地域との関係
インフラ
許認可
なども考える必要があります。
有望な金鉱脈が見つかったからといって、すぐ巨大鉱山を開発できるわけではありません。
日本では大量生産だけを追求するのではなく、高品位鉱床や高度な採掘技術を生かす方向も重要になります。
金鉱山は生産量だけで価値を判断できない
仮に年間生産量が小さくても、金品位が高く、効率的に採掘できれば事業として価値を持ちます。
菱刈鉱山はその分かりやすい例です。
また国内鉱山には、金の生産量以外の役割もあります。
新しい採掘技術を試す。
専門人材を育成する。
鉱山運営のノウハウを維持する。
海外鉱山へ技術を展開する。
こうした役割です。
住友金属鉱山は菱刈鉱山でドローンを活用するなど鉱山DXを進め、そのノウハウを海外鉱山へ展開することも視野に入れています。
国内鉱山は技術開発の現場にもなります。
世界の金供給は新規採掘だけではない
世界で利用される金のすべてが、その年に鉱山から採れた金というわけではありません。
金にはリサイクルしやすいという特徴があります。
宝飾品や電子機器などに使われた金を回収し、再び利用することができます。
金は一度採掘すると、形を変えながら社会の中に蓄積されていきます。
そのため金の供給を考えるときには、
新しく鉱山から採る金
と
すでに社会に存在する金の再利用
の両方を見る必要があります。
日本にとっては、天然鉱山だけでなく都市鉱山が重要になる理由でもあります。
金価格が上がれば世界中で探鉱が活発になる
金価格の上昇は、既存鉱山の利益を増やすだけではありません。
新しい鉱床を探す動きも促します。
探鉱には大きな費用がかかります。
地質調査をしても、必ず商業的な鉱床が見つかるわけではありません。
そのため金価格が低い時期には、採算性の低い地域への探鉱投資は行われにくくなります。
反対に金価格が高くなれば、これまで注目されなかった地域でも開発可能性を調べる意味が大きくなります。
現在の日本で探鉱の動きが出ている背景にも、この金価格の変化があります。
日本は量ではなく組み合わせで考える
日本が中国、ロシア、オーストラリアなどと同じ規模の金生産国になることと、国内金資源を活用することは別の問題です。
日本には、
国内の天然鉱山
新しい金鉱床の探鉱
都市鉱山
焼却灰からの金属回収
水からの金回収技術
鉱山DX
といった複数の選択肢があります。
一つ一つの生産量が世界最大でなくても、これらを組み合わせれば国内の資源確保や技術力の維持につながります。
世界順位だけでは見えない資源戦略があるのです。
結論
世界では2025年に約3,300トンの金が鉱山から生産されたと推計されています。
主要な生産国には中国、ロシア、オーストラリアなどがあります。
これに対して日本の金生産量は2024年で約4トンです。
現在の日本は、量の面では世界の主要金生産国ではありません。
しかし生産量が少ないことだけで、日本の金資源に価値がないと判断することもできません。
北海道などでは新しい探鉱が進み、菱刈鉱山では鉱山DXが進められています。
さらに都市鉱山や焼却灰、水からの資源回収という新しい方法もあります。
金資源を考えるときに重要なのは「世界で何位か」だけではありません。
どのような資源を持ち、どのような技術で回収し、それをどのように安定供給へつなげるかです。
現代の「黄金の国ジパング」は、世界最大の金生産国を目指すというより、天然資源とリサイクル、そして技術を組み合わせることで新しい形の資源国を目指す動きとして見ることができるのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月21日 朝刊 「黄金の国ジパング」再興へ