全国900万戸の空き家は本当に全部問題なのか 賃貸用や売却用とその他空き家を分けて考える編

税理士
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全国に約900万戸の空き家があると聞くと、日本中で大量の住宅が放置されているように感じるかもしれません。

しかし約900万戸すべてが、誰にも使われず放置されている住宅というわけではありません。

空き家には賃貸住宅の空室や売却中の住宅なども含まれます。

空き家問題を考えるときに特に重要になるのが、賃貸用や売却用などを除いた「その他空き家」です。その数は約386万戸に達しています。

空き家は総数だけではなく、中身を分けて見る必要があります。

全国の空き家は約900万戸

総務省の住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は約900万戸あります。

住宅の数そのものが増える一方、人口減少や高齢化などによって使われない住宅も増えてきました。

約900万戸という数字は非常に大きいため、空き家問題を象徴する数字として取り上げられることがあります。

しかし、この数字だけを見て日本に約900万戸の放置住宅があると考えるのは正確ではありません。

入居者募集中の住宅も空き家に含まれる

例えば賃貸マンションやアパートを考えてみます。

前の入居者が退去し、次の入居者を募集している部屋は、その時点では誰も住んでいません。

統計上は空き家になります。

しかし不動産会社が入居者を募集し、数カ月後には新しい人が住むかもしれません。

こうした住宅は空いてはいますが、住宅市場の中で動いています。

長期間放置されている住宅とは性格が違います。

売却中の中古住宅も空き家になる

中古住宅を売却するときにも、所有者が転居した後に買い手を探すことがあります。

その期間は住宅に誰も住んでいません。

これも空き家です。

しかし売却物件として市場に出ていれば、次の所有者へ渡すための過程にあります。

問題は人が住んでいないことそのものではなく、その住宅が次の利用へ向けて動いているかどうかなのです。

別荘などの住宅もある

空き家の中には、普段は住んでいなくても特定の時期に利用される住宅などもあります。

毎日の生活の本拠として使われていないからといって、直ちに放置住宅とはいえません。

住宅の使われ方は一つではありません。

そのため空き家の戸数だけを見て政策対象を決めるのではなく、どのような状態にある住宅なのかを確認する必要があります。

注目されるのがその他空き家

空き家問題を考えるうえで特に注目されるのが「その他空き家」です。

全国では約386万戸あります。

これは空き家全体の4割を超える規模です。

賃貸や売却など明確な市場利用が予定されていない住宅が多く含まれます。

親から実家を相続したものの誰も住んでいない住宅などが典型的な例です。

こうした住宅は市場に出ないまま長期間残る可能性があります。

386万戸すべてが危険な住宅でもない

ここでも注意が必要です。

約386万戸のその他空き家が、すべて倒壊寸前の危険な住宅というわけではありません。

適切に管理されている住宅もあります。

所有者が定期的に訪問しているケースもあります。

将来的な利用について検討している途中の場合もあるでしょう。

空き家であること、流通していないこと、管理状態が悪いことは、それぞれ分けて考える必要があります。

空き家政策には複数の目的がある

空き家の種類が違えば、必要な政策も変わります。

老朽化して倒壊の危険がある住宅には、安全確保を目的とした対策が必要です。

まだ十分に住める住宅が市場に出ていないのであれば、売却や賃貸を促す政策が考えられます。

相続手続きが進まず動かせない住宅なら、相続や登記などの支援が必要になることがあります。

空き家対策を一つの制度だけで解決することが難しいのは、空き家になっている理由がそれぞれ違うからです。

寝屋川市でも市場に出ない住宅に注目する

大阪府寝屋川市には約1万6,000戸の空き家があります。

そのうち売却にも賃貸にも出されていない住宅は約6,000戸とされています。

寝屋川市が空き家税によって動かそうとしているのは、まさにこうした市場に出ていない住宅です。

空き家全体に一律に負担を求めるのではなく、住宅がどのような状態にあるのかを見て政策対象を考える必要があります。

空き家率だけでは地域の問題を判断できない

自治体の空き家問題を比較するときにも注意が必要です。

空き家率が高い地域でも、賃貸住宅の空室が多いのか、長期間利用されていない住宅が多いのかによって意味が変わります。

さらに都市部と地方では住宅需要も違います。

同じ空き家1戸でも、買い手が多い都市部と住宅需要が弱い地域では再利用の可能性が異なります。

重要なのは空き家の数だけでなく、その中身と地域の住宅需要を一緒に見ることです。

結論

全国には約900万戸の空き家がありますが、そのすべてが放置された問題住宅というわけではありません。

賃貸住宅の空室や売却中の中古住宅など、住宅市場の中で次の利用者を待っている住宅も含まれています。

一方、賃貸用や売却用などを除くその他空き家は約386万戸に達しています。

空き家政策で特に重要になるのは、こうした市場に出ていない住宅をどのように次の利用へつなげるかという問題です。

空き家問題を見るときには、約900万戸という大きな数字だけで判断するのではなく、その住宅が市場に出ているのか、適切に管理されているのか、再利用できるのかを分けて考える必要があります。

空き家の総数を見る時代から、空き家の中身を見る時代へ。

空き家税をはじめとする今後の住宅政策でも、この視点がますます重要になりそうです。

参考

日本経済新聞 2026年9月19日 朝刊 直言 眠る空き家、若者に回せ

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