東京都はなぜ地方交付税を受け取らないのか 不交付団体の仕組みを解説

税理士
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地方自治体の財政力には大きな差があります。

税収だけでは必要な行政サービスを賄えない自治体がある一方、東京都のように豊富な税収を持つ自治体もあります。

こうした地域間の財政力格差を調整する代表的な制度が地方交付税です。

ところが東京都は、地方交付税を受け取らない不交付団体です。

なぜ東京都には地方交付税が配られないのでしょうか。

この仕組みを理解すると、東京と地方の財政格差を考えるうえで、単純に税収だけを比較してはいけない理由も見えてきます。

地方交付税は自治体間の財政格差を調整する

日本では住んでいる地域にかかわらず、一定水準の行政サービスを受けられることが求められます。

しかし自治体によって税収には大きな違いがあります。

企業が多く、住民の所得も高い地域では地方税収が多くなります。

一方、人口減少が進み、企業や働く人が少ない地域では十分な税収を確保することが難しくなります。

そこで国が財政力の弱い自治体に財源を配分する仕組みが地方交付税です。

自治体間の税収格差を調整し、全国で必要な行政サービスを維持する重要な役割を担っています。

基準財政需要額と基準財政収入額で決まる

地方交付税を理解するうえで重要なのが、基準財政需要額と基準財政収入額です。

基準財政需要額とは、自治体が標準的な行政サービスを提供するために必要と国が算定する金額です。

一方、基準財政収入額は、その自治体が標準的に得られると見込まれる地方税収などを基礎に算定されます。

基本的な考え方は単純です。

基準財政需要額より基準財政収入額が少なければ、その不足分を地方交付税によって補います。

反対に、基準財政収入額が基準財政需要額を上回れば、原則として普通交付税は交付されません。

このような自治体が不交付団体です。

東京都の財政力指数は1.525

自治体の財政力を見る指標の1つが財政力指数です。

基準財政収入額を基準財政需要額で割る考え方を基本として、その自治体が標準的な行政経費をどの程度自主財源で賄えるのかを示します。

東京都は2026年度に1.525となりました。

国の基準で見ると、標準的に必要とされる財政需要を大きく上回る収入があることになります。

これに対して、東京を除く46道府県全体では0.588です。

最も低い高知県は0.278でした。

東京と多くの地方自治体では、自ら確保できる税収の力に大きな違いがあります。

東京都が地方交付税の不交付団体となる背景には、この強い財政力があります。

地方交付税を受け取らないことには別の意味もある

地方交付税を受け取らないというと、単純に東京都は豊かだから問題がないように見えます。

しかし、財政面では別の側面もあります。

税収が増えれば、不交付団体はその増加分を基本的に自主財源として活用できます。

一方、交付団体では税収が増えると地方交付税の算定にも影響します。

そのため、地方税収の増加額がそのまますべて自由に使える財源の増加になるとは限りません。

東京都は地方交付税に依存せず、自らの税収を中心として政策を展開できる強みがあります。

この財政上の自由度が、東京都独自の政策を実施できる背景の1つになっています。

豊富な自主財源が独自政策を可能にする

東京都では近年、独自の行政サービスが相次いでいます。

第1子の保育料無償化や夏場の水道基本料金の無償化などです。

国の制度に上乗せして独自の施策を実施するには財源が必要です。

地方交付税に頼らなくても多額の自主財源を確保できる東京都だからこそ、こうした政策を打ち出しやすい面があります。

問題になるのは、隣接する自治体との行政サービスの差です。

東京と埼玉、千葉、神奈川では生活圏が連続しています。

通勤先が同じ東京でも、どこに住むかによって受けられる子育て支援などが異なることがあります。

その差が大きくなれば、自治体選びにも影響する可能性があります。

東京都は財源超過という見方に反論する

一方、東京都は国が示す財源超過という考え方そのものに反論しています。

東京都側の主張は、東京に必要な行政経費を国が十分に評価していないというものです。

東京には膨大な人口と企業が集中しています。

鉄道や道路、防災、消防、治安、都市インフラなど、大都市特有の行政需要があります。

昼間には周辺県から大量の通勤者や来訪者も流入します。

人口や企業が集中することで税収が増える一方、それに対応する行政コストも大きくなります。

税収だけを見て余裕があると判断するのは適切ではないというのが東京都の考え方です。

国の計算方法そのものが争点になる

さらに東京都は、基準財政需要額の算定方法にも問題があると主張しています。

元の記事では、23区の人口を実際より7割から8割少なく計算する補正があることが指摘されています。

地方交付税制度では、単純に実際の支出額を基準財政需要額として認めるわけではありません。

国が定めた標準的な条件によって行政需要を算定します。

そのため、現実に自治体が必要としている支出額と国が認定する財政需要額には差が生じる場合があります。

東京都から見れば、国の基準によって財政需要が小さく算定され、その結果として財源が余っているように見えているというわけです。

地方交付税まで含めると景色が変わる

東京と地方の財政格差を考える際に特に重要なのがこの点です。

地方税収だけを比較すれば、東京都の財政力は突出しています。

しかし東京都は、地方交付税による財政調整を受けません。

一方、多くの地方自治体は地方税収だけでは不足する財源を地方交付税で補っています。

東京都は、地方交付税を含む一般財源を人口1人あたりで比較すると東京は全国平均程度であり、大きな偏在はないと主張しています。

つまり、地方税だけを見るのか、地方交付税による調整後の財源を見るのかによって、東京と地方の格差に対する評価が変わります。

税収格差と財源格差は同じではない

ここで区別したいのが税収格差と財源格差です。

東京都には企業や高所得者が集中しているため、多額の地方税が入ります。

これは税収格差です。

しかし地方自治体が実際に行政サービスへ使える財源を考える場合には、地方交付税なども含めて見る必要があります。

税収の少ない自治体には国から財源が補われます。

したがって、税収に大きな格差があるからといって、その差がそのまま行政サービスに使える財源の差になるとは限りません。

地方財政を考える際には、この2つを混同しないことが重要です。

それでも行政サービス格差は生まれる

地方交付税によって一定の財政調整が行われても、自治体間の行政サービスが完全に同じになるわけではありません。

地方交付税は標準的な行政サービスを支える制度だからです。

標準を超えて独自政策を実施できるかどうかは、それぞれの自治体の自主財源や財政余力によって変わります。

東京都の税収が増えれば、国の基準を超える独自施策を実施する余地が大きくなります。

その結果、地方交付税によって最低限の財政力を調整しても、自治体独自の行政サービスには差が生まれます。

現在問題になっている東京と地方の財政格差には、この側面があります。

結論

東京都が地方交付税を受け取らないのは、国の基準で見た収入が標準的な行政経費を上回る不交付団体だからです。

2026年度の東京都の財政力指数は1.525となり、東京を除く46道府県全体の0.588を大きく上回っています。

ただし、この数字だけで東京には財源が余っていると結論づけることはできません。

東京都には大都市特有の行政コストがあり、東京都側は国の財政需要の算定方法にも問題があると主張しています。

さらに地方交付税まで含めれば、地方税収だけを比較した場合とは違う姿が見えてきます。

今後の税収偏在是正を考える際には、東京の税収がいくら多いのかだけではなく、地方交付税による調整後に各自治体がどれだけの財源を持ち、どのような行政サービスを提供できているのかを見る必要があります。

東京と地方の財政格差を考えるうえで大切なのは、税収の入口だけではなく、財政調整後の出口まで見ることなのです。

参考

日本経済新聞 2026年10月8日朝刊 東京と地方の財政格差、08年度以来の大きさ 総務省が再配分拡大検討

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