親がリゾート会員権を持ったまま亡くなった場合、その会員権が相続財産になることがあります。
そこで問題になるのが、
相続税ではいくらの財産として扱うのか
という点です。
親が500万円で購入した会員権だから500万円なのでしょうか。
中古市場で300万円で売られているなら300万円なのでしょうか。
それとも、購入時の金額とはまったく別の方法で考えるのでしょうか。
リゾート会員権の相続税評価で重要なのは、購入したときにいくら払ったかではなく、相続が発生した時点でその会員権がどのような財産的価値を持っているのかという視点です。
さらにリゾート会員権にはさまざまな仕組みがあるため、すべてを同じ方法で評価できるわけではありません。
相続税は亡くなった時点の財産を考える
相続税を考えるときの基本は、相続開始時点の財産価値です。
たとえば親が20年前に500万円で購入した会員権があったとします。
現在の中古市場では100万円程度になっているかもしれません。
反対に300万円で購入した会員権が、人気の高まりによって500万円程度になっていることも考えられます。
購入価格は過去の取引価格です。
相続税では、
昔いくらで買ったか
だけでは現在の財産価値を判断できません。
相続が発生した時点で、その会員権がどのような価値を持っていたのかを考える必要があります。
会員権の中身を最初に確認する
リゾート会員権を評価するときに、まず確認しなければならないのが権利の内容です。
同じリゾート会員権という名前でも中身は異なります。
不動産の共有持ち分を伴うもの。
施設を利用する権利を中心とするもの。
預託金を伴うもの。
これらでは財産としての性格が違います。
したがって、
リゾート会員権なら一律にこの金額
という考え方ではなく、契約書や会員規約などから権利の内容を確認することが出発点になります。
取引相場がある会員権とは何か
中古市場で継続的に売買されているリゾート会員権があります。
このような会員権では、市場でどの程度の価格が付いているのかが財産価値を考える重要な手掛かりになります。
今回の記事では、2026年7月の中古リゾート会員権の平均価格が411万円となり、比較可能な2019年1月以降で最高値を更新したとされています。
このように中古市場が存在することで、
現在この会員権にはどの程度の市場価値があるのか
を考える材料が生まれます。
ただし市場全体の平均価格を、そのまま個別の会員権の相続税評価額にするわけではありません。
平均411万円だから411万円で評価するわけではない
ここは特に注意が必要です。
中古会員権の平均価格が411万円だったとしても、すべての会員権に411万円の価値があるわけではありません。
100万円台で取引されるものもあります。
数百万円のものもあります。
さらに高額なものもあります。
同じ系列でも、
利用できる施設
客室のグレード
利用条件
権利内容
などによって市場価格は変わります。
したがって相続税評価では、市場全体の平均値ではなく、相続した具体的な会員権の内容を確認する必要があります。
売り希望価格と実際の取引価格は違う
中古市場の価格を見るときには、もう一つ注意点があります。
仲介会社などのサイトに、
500万円
と掲載されていたとしても、それが実際に成立した取引価格とは限りません。
売り手が500万円で売りたいという希望価格かもしれないからです。
買い手が450万円でなければ購入しないのであれば、最終的な成約価格は変わります。
相続税評価で市場価格を参考にするときには、
どの時点の価格なのか
売り希望価格なのか
実際の取引実績なのか
同じ条件の会員権なのか
といった点まで確認することが重要です。
不動産を伴う会員権では土地や建物も関係する
所有権型のリゾート会員権では、ホテルやマンションなどの土地や建物について共有持ち分を所有していることがあります。
この場合、会員権には単なる施設利用資格だけではなく、不動産としての権利が含まれています。
そのため相続税評価でも、不動産部分をどのように評価するのかという問題が生じます。
土地には土地の評価方法があります。
建物にも建物の評価方法があります。
単純に中古市場で表示されている会員権価格だけを見ればよいとは限りません。
登記内容や契約書を確認し、自分がどのような不動産持ち分を所有しているのかを把握する必要があります。
預託金とは何か
リゾート会員権には、預託金を伴うものがあります。
預託金とは、会員になる際などに運営会社へ一定額を預ける仕組みです。
たとえば会員権取得時にまとまったお金を預け、一定の条件を満たした場合に返還を受けられる仕組みが考えられます。
この預託金は、
ホテルを利用する権利そのもの
とは性質が異なります。
将来返還を受けることのできる金銭的な権利が含まれているからです。
そのため預託金を伴う会員権では、預託金部分についても確認が必要になります。
預託金500万円なら500万円の価値とは限らない
ここでも額面だけを見ないことが重要です。
仮に契約上の預託金が500万円だったとします。
それだけを見れば、
500万円の財産
と思うかもしれません。
しかし、いつ返還されるのか。
返還に条件があるのか。
現在すぐ返還を請求できるのか。
こうした内容によって権利の経済的な価値は変わります。
さらに運営会社の状況によっては、預託金の回収可能性そのものが問題になることも考えられます。
預託金という名前だけではなく、返還条件まで確認する必要があります。
会員権価格と預託金を単純に足せない場合もある
中古市場で200万円の会員権に、500万円の預託金が付いていたとします。
すると、
200万円足す500万円で700万円
と考えたくなるかもしれません。
しかし中古市場で表示される価格の中に、預託金に関する権利がどのように反映されているのかを確認しなければなりません。
市場価格と預託金部分を二重に評価してしまえば、実際の財産価値を適切に表さない可能性があります。
会員権の契約構造を理解したうえで、それぞれの財産的価値を整理する必要があります。
年会費が高いことも市場価値に影響する
リゾート会員権には、購入後の年会費などが必要になるものがあります。
これは相続人にとって重要な問題です。
同じような施設を利用できる会員権でも、
年間負担が5万円
のものと、
年間負担が20万円
のものでは、買い手が感じる魅力が違う可能性があります。
中古市場では、将来負担する維持費なども考えながら買い手が価格を判断します。
つまり会員権の市場価値は、
どの施設を利用できるか
だけでなく、
持ち続けるためにいくらかかるか
にも左右されます。
人気施設だから高いとは限らない
有名なリゾート施設の会員権なら必ず高額になるとも限りません。
利用できる日数が少ない。
予約条件が厳しい。
部屋のグレードが違う。
年間維持費が高い。
さまざまな条件によって中古価格は変わります。
反対に購入時の価格がそれほど高くなかった会員権でも、施設の人気が高まり、中古市場で価格が上昇することがあります。
相続税評価を考えるときにも、ブランド名だけで判断するのではなく、具体的な権利内容を見る必要があります。
相続直前の購入価格だけで判断しない
たとえば親が500万円で購入した会員権を、その数年後に相続したとします。
購入からそれほど時間がたっていなければ、
500万円で買ったのだから500万円の財産
と考えたくなります。
しかし市場価格は購入後にも変化します。
円安によって国内旅行需要が増えることもあります。
逆に旅行需要が落ち込むこともあります。
施設自体の人気も変わります。
相続税では相続開始時点の財産価値を考えるため、取得時の価格だけに頼らないことが重要です。
相続後すぐ売却した価格が参考になることもある
相続した会員権を相続後比較的早い時期に第三者へ売却した場合、その実際の売却価格は財産価値を検討するうえで重要な情報になることがあります。
なぜなら、
実際にその金額で買う人がいた
という市場取引だからです。
ただし相続時点と売却時点の間に市場環境が大きく変わっていれば、単純に同じ価値とはいえません。
相続時点の市場状況と照らして考える必要があります。
会員権の存在を相続人が知らないこともある
相続税評価以前に注意したいのが、家族が会員権の存在を知らないケースです。
親が昔購入した会員権。
最近ほとんど利用していない。
年会費だけ口座から引き落とされている。
こうした場合、子どもが会員権を相続財産として認識していない可能性があります。
相続財産を確認するときには、預貯金や株式、不動産だけでなく、このような会員権も確認する必要があります。
購入時の契約書が重要になる
リゾート会員権を相続するときには、購入時の契約書や会員規約が重要な資料になります。
会員権の種類。
不動産持ち分の有無。
預託金の有無。
預託金の返還条件。
名義変更の条件。
こうした内容が記載されている可能性があります。
何十年も前に購入した会員権では書類が見つからないこともあります。
将来の相続を考えるなら、元気なうちに資料を整理しておくことが大切です。
市場価格が上昇すれば相続財産の価値も変わり得る
今回の記事では、中古リゾート会員権の価格が過去最高水準になったことが紹介されています。
保有者にとって値上がりはうれしいことです。
しかし相続という視点では別の側面があります。
市場価値の上昇によって、相続時に評価すべき財産価値も以前とは違ってくる可能性があるからです。
これは株式でも同じです。
100万円で購入した株式が相続時に500万円になっていれば、昔100万円で買ったという事実だけで相続時の価値を考えるわけではありません。
会員権についても、取得価格と相続時の価値を分けて考える必要があります。
相続する前に売るという選択肢も比較する
高齢になり、ほとんどリゾート施設を利用しなくなった場合には、
そのまま子どもへ相続させる
という方法だけが選択肢ではありません。
本人が元気なうちに売却する方法もあります。
もちろん売却すれば譲渡所得などの税務を検討する必要があります。
一方、そのまま保有すれば年会費などが続く可能性があります。
さらに相続後には名義変更などの手続きが必要になることもあります。
どちらが有利かは個別事情によって違います。
大切なのは、
相続できるからそのまま持っておく
と自動的に判断しないことです。
結論
リゾート会員権を相続した場合、その会員権が財産的価値を持つものであれば、相続税を考えるうえで評価が必要になります。
その際に重要なのは、親がいくらで購入したかだけではありません。
相続が発生した時点で、その会員権がどのような財産的価値を持っているのかを見る必要があります。
さらにリゾート会員権には、
中古市場で取引されるもの
不動産の共有持ち分を伴うもの
預託金を伴うもの
などさまざまな種類があります。
したがって会員権の名称だけを見て、一律に評価することはできません。
契約書や会員規約を確認し、自分が持っているものが、
施設を利用する権利なのか。
不動産なのか。
預託金返還請求に関する権利を含むのか。
というところから確認することが重要です。
そして中古市場で価格が上昇している局面では、
昔いくらで買ったか
と
今いくらの価値があるか
の差が大きくなる可能性があります。
リゾート会員権の相続税評価で最も大切なのは、購入価格に引きずられないことです。
相続税は過去の買い物の値段ではなく、相続時点で引き継いだ財産の価値を考える税金だからです。
参考
日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 リゾート会員権 最高値 7月411万円 円安で国内旅行回帰