リゾート会員権には、不動産を共有するタイプだけでなく、運営会社などに一定のお金を預けて会員資格を得る仕組みがあります。
これが預託金制のリゾート会員権です。
預託金という言葉から、
銀行預金のように安全に預けているお金
と考えてしまうかもしれません。
しかし、銀行預金と同じものではありません。
預託金は契約に基づいて運営会社などへ預けるお金であり、返還される時期や条件が決められていることがあります。
そのため預託金制の会員権を購入するときには、
いくら預けるのか
だけではなく、
いつ返してもらえるのか
本当に返還を受けられるのか
まで確認することが重要です。
預託金とは何か
預託金とは、会員が運営会社などへ一定額を預けるお金です。
リゾート会員権では、会員になる際にまとまった資金を預託し、それによって施設を利用する資格を得る仕組みがあります。
たとえば会員になるときに500万円を預けたとします。
その500万円はホテルに1泊するたびに少しずつ使われる宿泊代とは違います。
契約で定められた期間などにわたって運営会社側に預けられます。
会員はその間、契約内容に従ってリゾート施設を利用します。
入会金と預託金は違う
ここで重要なのが、入会金と預託金を区別することです。
入会金は一般的に、会員になるために支払うお金です。
一方、預託金には一定の条件を満たした場合に返還を受けることが想定されているものがあります。
たとえば、
入会金100万円
預託金500万円
という契約だったとします。
合計600万円を支払ったとしても、100万円と500万円ではお金の性質が違う可能性があります。
600万円を全部、
将来戻ってくるお金
と考えるのは危険です。
会員権購入代金の内訳を見る
リゾート会員権の広告などで大きな金額を見ると、その総額だけに目が向きます。
しかし預託金制では、支払額の内訳を見ることが重要です。
会員資格を得るための費用。
返還を予定している預託金。
その他の手続きに必要な費用。
それぞれの性質を分けて確認します。
たとえば総額600万円でも、
将来500万円の返還を受けられる可能性がある契約
と、
600万円の大部分が返還されない契約
では、経済的な意味がまったく違います。
なぜホテル会社にお金を預けるのか
では、なぜこのような仕組みがあるのでしょうか。
会員制リゾートを整備するには多額の資金が必要です。
土地を確保する。
建物を建設する。
客室を整備する。
温泉やレストランなどの設備を設ける。
こうした事業には大きな資金が必要になります。
会員から預託された資金を事業運営などに活用する仕組みが採用されることがあります。
会員側から見ると、一定額を預けることで施設を利用する資格を得ることになります。
預託金は銀行預金ではない
ここは非常に重要です。
名前に預けるという意味が入っているため、
銀行に500万円を預けるのと同じ
と感じるかもしれません。
しかし銀行預金とは仕組みが違います。
銀行預金には預金保険制度がありますが、リゾート会員権の預託金を銀行預金と同じように考えることはできません。
預託金の返還を受けられるかどうかは、契約内容や運営会社の支払い能力などにも関係します。
したがって、
預託金だから必ず全額戻る
と考えないことが重要です。
返還時期が決められていることがある
預託金には返還時期や据置期間などが定められている場合があります。
たとえば一定期間が経過するまで返還を求められない契約であれば、
来年使わなくなるから500万円を返してほしい
と思っても、すぐ返還を受けられるとは限りません。
契約上いつから返還を請求できるのか。
退会すれば返還されるのか。
一定期間の経過が必要なのか。
返還手続きには何が必要なのか。
購入前に確認しておく必要があります。
返還される金額も確認する
預託金500万円と書かれていれば、
将来500万円がそのまま返ってくる
と思いたくなります。
しかし実際には契約内容の確認が必要です。
どの金額について返還請求権があるのか。
返還条件はどうなっているのか。
何らかの控除があるのか。
こうした条件によって実際の回収額は変わる可能性があります。
契約書に書かれている預託金の額面だけを見るのではなく、返還条件まで読むことが重要です。
運営会社の信用力が重要になる
預託金制で特に重要なのが運営会社の信用力です。
将来500万円を返還してもらう権利があったとしても、運営会社に十分な支払い能力がなければ問題が生じる可能性があります。
これは、
500万円という数字が契約書に書かれている
ことと、
将来500万円を確実に現金で受け取れる
ことが同じではないということです。
返還までの期間が長いほど、その間の運営会社の経営状態も重要になります。
ホテルの人気と会社の信用力は別の問題
人気の高いホテルだから安心とは限りません。
施設の予約が取りにくいほど人気があることと、会社の財務状態が健全であることは別の問題です。
豪華な建物。
高い稼働率。
知名度の高いブランド。
こうした要素は会員権の魅力につながります。
しかし預託金の返還を考えるなら、
将来返還できる財務的な力があるか
という別の視点が必要です。
預託金制では施設を見るだけでなく、運営主体を見ることも重要なのです。
預託金には時間の価値もある
仮に500万円を預け、20年後に500万円がそのまま返還されたとします。
金額だけを見ると、
1円も減っていない
ことになります。
しかし経済的には、それだけでは判断できません。
500万円を20年間自由に使えなかったからです。
その間に預金や金融商品などで運用できた可能性もあります。
さらに物価が上昇すれば、20年後の500万円の購買力が現在の500万円と同じとは限りません。
これがお金の時間価値という考え方です。
物価上昇にも注意する
たとえば500万円で買える商品やサービスの量が、20年後には変わっている可能性があります。
物価が長期間上昇すれば、同じ500万円でも買えるものが少なくなります。
したがって、
500万円預けて500万円戻ったから損をしていない
とは必ずしもいえません。
一方、その20年間にリゾート施設を十分利用していれば、預託期間中に旅行という価値を受け取っています。
預託金制の経済性は、返還額だけではなく、その期間にどれだけ施設を利用したかも含めて考える必要があります。
中古市場では預託金付き会員権も売買される
預託金制の会員権でも、中古市場で売買できるものがあります。
この場合、
施設を利用できる権利
だけでなく、
預託金に関する権利
が取引に関係することがあります。
そのため中古会員権の価格を見るときには、
この価格には何が含まれているのか
を確認する必要があります。
単純に、
新品では500万円預けたのに中古では100万円だから80%値下がりした
と判断できるとは限りません。
預託金の扱いを確認しなければ、本当の経済価値は分からないからです。
名義変更後に誰が返還を受けるのか
中古で会員権を購入した場合には、預託金に関する権利がどのように承継されるのかも重要です。
元の会員が預けたお金について、
新しい会員が返還請求権を引き継ぐのか
どのような条件で引き継ぐのか
を確認する必要があります。
これは相続でも同じです。
親が持っていた預託金制会員権を子どもが相続する場合、会員資格だけでなく預託金に関する権利も確認する必要があります。
相続財産としても重要になる
預託金制の会員権を保有したまま亡くなった場合には、相続税の問題も生じます。
施設を利用する権利だけでなく、預託金の返還を受ける権利が財産的価値を持つ可能性があるからです。
その際にも、
最初に500万円預けたから500万円
と単純に判断するのではなく、契約内容や返還条件などを確認する必要があります。
前回取り上げたリゾート会員権の相続税評価でも、預託金の有無が重要になる理由です。
退会すればすぐ返ってくるとは限らない
リゾートを利用しなくなったら、
退会して預託金を返してもらえばよい
と思うかもしれません。
しかし、ここでも契約内容が重要です。
返還可能になる時期。
退会手続き。
返還までの期間。
返還額。
さまざまな条件が設けられている場合があります。
会員権を購入するときには入口の条件ばかりに目が向きますが、預託金制では出口の条件が特に重要です。
預託金が多いほど安心とは限らない
預託金が大きければ、
それだけ将来戻ってくるお金が多いから安心
と思うかもしれません。
しかし、預ける金額が大きいということは、それだけ長期間運営会社に対する金銭的な権利を持つことでもあります。
500万円を預ける場合と1000万円を預ける場合では、返還されなかったときの影響も違います。
重要なのは預託金の額そのものではありません。
返還条件と返還可能性です。
購入前に出口から確認する
預託金制の会員権では、購入前に次のように考えることが重要です。
会員になるにはいくら必要か。
ではなく、
退会するときにどうなるのか。
という出口から確認します。
何年後から返還を求められるのか。
いくら返還されるのか。
どのような手続きが必要なのか。
中古で売却した場合はどうなるのか。
相続した場合はどうなるのか。
こうした出口が分かれば、入口で支払う金額の意味も理解しやすくなります。
結論
預託金制のリゾート会員権とは、運営会社などへ一定額のお金を預け、それを伴う会員資格によってリゾート施設を利用する仕組みです。
重要なのは、預託金と入会金などを同じものとして考えないことです。
入会金などは会員になるための費用として支払うものですが、預託金には契約に基づいて将来返還を受けることが想定されているものがあります。
ただし、
預託金だから必ず全額返ってくる
とは考えない方がよいでしょう。
いつ返還されるのか。
どのような条件があるのか。
返還額はいくらなのか。
運営会社に将来返還する能力があるのか。
こうした点を確認する必要があります。
さらに長期間預ける場合には、お金の時間価値や物価上昇も考える必要があります。
預託金制の会員権を見るときに最も重要なのは、
いくら預けるのか
ではありません。
いつ、どのような条件で、いくら戻ってくるのかです。
リゾート会員権は施設の豪華さだけを見て購入するものではありません。
預けたお金の出口まで理解して初めて、その会員権の本当の価値を判断できるのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 リゾート会員権 最高値 7月411万円 円安で国内旅行回帰