親が数百万円で購入したリゾート会員権。
親が亡くなったとき、その会員権はどうなるのでしょうか。
銀行預金や株式、不動産と同じように子どもが相続できるのでしょうか。
リゾート会員権は一つの財産として相続の対象になるものがあります。
ただし、預金のように相続人の名義へ変更すれば終わりという単純なものではありません。
会員権には運営会社が定めた規約があり、相続後も施設を利用するためには名義変更などの手続きが必要になる場合があります。
さらに相続人が旅行をしない場合には、年会費などの負担だけが残ることもあります。
リゾート会員権では、相続できるかどうかだけでなく、相続した後にどうするのかまで考えることが重要です。
リゾート会員権も財産になる
相続というと、
現金
預貯金
株式
土地
建物
などを思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし相続財産は、それだけではありません。
金銭的な価値を持つさまざまな権利も相続の対象になることがあります。
中古市場で売買されるリゾート会員権もその一つです。
たとえば親が300万円で購入した会員権を保有したまま亡くなった場合、その会員権が相続可能なものであれば、相続財産として扱う必要があります。
会員権にはいろいろな種類がある
ただし、リゾート会員権と呼ばれるものがすべて同じ仕組みではありません。
不動産の共有持ち分を伴う所有権型。
施設を利用する資格を中心とした利用権型。
預託金を伴うもの。
さまざまな形があります。
したがって、
リゾート会員権は相続できる
という一言だけでは十分ではありません。
自分が保有している会員権がどのような権利なのかを確認する必要があります。
相続時の手続きも、会員権の種類や運営会社の規約によって異なる可能性があります。
所有権型では不動産の相続も関係する
所有権型のリゾート会員権では、ホテルやマンションなどの土地や建物について共有持ち分を持っている場合があります。
この場合、会員として施設を利用する権利だけでなく、不動産についての権利も保有していることになります。
親が亡くなれば、その不動産持ち分についても相続手続きを考える必要があります。
利用権だけの会員権とは手続きの性格が違ってきます。
まず契約書などを確認して、
自分は何を所有しているのか
を把握することが重要です。
相続しただけでは利用できない場合がある
親が亡くなり、子どもが会員権を相続したとします。
それだけで翌日から子どもが会員として自由に施設を利用できるとは限りません。
会員制リゾートでは、誰が正式な会員なのかを運営会社が管理しています。
そのため相続に伴う名義変更などの手続きが必要になる場合があります。
運営会社へ必要書類を提出し、新しい会員を登録するという流れです。
相続によって財産を取得することと、会員制度上の名義を変更して実際に利用できる状態にすることは分けて考える必要があります。
名義変更とは何か
名義変更とは、会員として登録されている人を変更する手続きです。
たとえば父親名義の会員権を子どもが相続した場合、
父親から子どもへ
会員名義を変更します。
一般的には相続関係や本人確認などに必要な書類を求められることがあります。
どの書類が必要なのかは運営会社や会員権によって異なります。
相続が発生してから慌てないためには、事前に運営会社の規約や手続き方法を確認しておくことが有効です。
名義変更に費用がかかる場合もある
名義変更では費用の確認も必要です。
会員権によっては、名義を変更する際に所定の費用が発生することがあります。
親から財産を相続したのだから、
無料で名前を書き換えてもらえるだろう
とは限りません。
さらに所有権型で不動産の権利が含まれていれば、それに伴う手続きや費用も考える必要があります。
相続人にとっては、
会員権をもらえる
という話だけではなく、
引き継ぐためにどのくらいの費用と手間が必要なのか
まで確認することが重要です。
誰でも会員になれるとは限らない
会員制リゾートでは、会員資格について規約が定められている場合があります。
通常の中古売買でも、買い手が一定の手続きを経て正式な会員になる仕組みがあります。
相続についても、
相続人なら無条件でそのまま会員になれる
と決めつけない方がよいでしょう。
どのような人が承継できるのか。
複数の相続人がいる場合はどうするのか。
どのような手続きが必要なのか。
こうした点は個別の規約を確認する必要があります。
相続人が複数いる場合は誰が引き継ぐのか
父親が一つのリゾート会員権を持っていて、相続人が妻と子ども2人だったとします。
相続人が3人いるからといって、会員権を単純に3分の1ずつ使えるとは限りません。
会員制度では一つの会員権について登録できる名義人などが決められている場合があるからです。
そこで遺産分割の中で、
誰が会員権を取得するのか
を決める必要が生じることがあります。
旅行が好きな子どもが引き継ぐ。
ほかの財産とのバランスを取る。
売却して代金を分ける。
さまざまな選択肢が考えられます。
子どもが欲しいとは限らない
相続で特に重要なのがこの点です。
親にとって価値のあるリゾート会員権が、子どもにとっても価値があるとは限りません。
親は毎月のように旅行していた。
しかし子どもは仕事が忙しく旅行しない。
親は温泉が好きだった。
しかし子どもは海外旅行の方が好き。
親の自宅からは施設まで近かった。
しかし子どもは遠方に住んでいる。
このようなことは十分に考えられます。
利用する人が変われば、同じ会員権でも価値は大きく変わります。
利用しなくても年会費などが続く可能性がある
相続人が会員権を利用しない場合に問題になるのが、年会費などの継続的な負担です。
会員権を相続したものの、一度も旅行へ行かない。
それでも契約関係が続いている間は、所定の費用が発生する場合があります。
すると相続人にとって会員権は、
価値のある財産
ではなく、
毎年費用がかかる財産
になる可能性があります。
中古市場で高値が付いている会員権なら売却という選択肢がありますが、すべての会員権が簡単に売れるとは限りません。
市場価格と相続人にとっての価値は違う
たとえば中古市場で300万円の価格が付く会員権があったとします。
市場では300万円の価値があるとしても、旅行をまったくしない相続人にとっては利用価値がほとんどありません。
反対に毎年何度も家族旅行をする人なら、
ぜひ引き継ぎたい
と思うかもしれません。
ここでも、
市場でいくらするか
と
自分にとってどれだけ役立つか
は別です。
相続では金額だけでなく、誰がその財産を最も有効に使えるのかという視点も重要になります。
売却するという選択肢もある
相続した会員権を使わないのであれば、売却を検討する方法があります。
中古市場で買い手が見つかれば、会員権を現金化できます。
相続人が複数いる場合には、現金化した方が遺産を分けやすくなることもあります。
ただし売却価格は市場の需給によって変化します。
親が500万円で購入した会員権だからといって、500万円で売却できるとは限りません。
反対に人気が高まり、購入時より高く売れる可能性もあります。
取得時の価格と現在の市場価格は分けて考える必要があります。
売却できるまで時間がかかることもある
中古会員権は上場株式のように、売却注文を出せばすぐ現金化できるとは限りません。
買い手が必要だからです。
人気の高い会員権なら比較的売却しやすい場合があります。
しかし需要が少なければ、買い手が現れるまで時間がかかることがあります。
その間の年会費などを誰が負担するのかという問題も出てきます。
相続人が、
使わないからすぐ売ればよい
と思っていても、実際には売却まで一定期間保有することになる可能性があります。
相続放棄は会員権だけを選んでできない
相続したくない会員権があると、
この会員権だけ相続しないことにしよう
と考えるかもしれません。
しかし相続放棄は、原則として特定の財産だけを選んで放棄する仕組みではありません。
預金は相続する。
自宅も相続する。
しかしリゾート会員権だけは相続放棄する。
というように、相続放棄を財産ごとに自由に使い分けるものではありません。
そのため不要な会員権がある場合には、生前から処分方法を考えておくことが重要になります。
親が元気なうちに確認しておく
リゾート会員権の相続対策というと、税金の話を思い浮かべるかもしれません。
しかし、それ以前に重要なのが家族との確認です。
子どもは会員権を使いたいのか。
誰か一人が引き継ぎたいのか。
誰も使わないのか。
売却するならいつがよいのか。
こうしたことを親が元気なうちに話しておけば、相続発生後の混乱を減らせます。
親自身も、
子どもが使うと思っていた
という思い込みを避けられます。
契約書と会員番号を家族が分かるようにする
相続実務では、財産の存在そのものが分からないことも問題になります。
銀行口座や証券口座なら通帳や郵便物などから見つかることがあります。
リゾート会員権も、契約書などが整理されていなければ家族が存在を把握できない可能性があります。
どの運営会社の会員権なのか。
会員番号は何か。
契約書はどこにあるのか。
年会費などはいくらなのか。
中古市場で売却できるのか。
こうした情報を整理しておくことが、相続人の負担を軽くします。
相続税の問題もある
リゾート会員権が財産である以上、相続税を考える場面では、その会員権をどのように評価するのかという問題も出てきます。
中古市場で価格が付いている会員権。
不動産の共有持ち分を伴う会員権。
預託金を含む会員権。
それぞれ権利の内容が違います。
そのため相続税評価についても、単純に、
親が300万円で買ったから300万円
と考えるわけにはいきません。
相続時点でどのような財産的価値を持っているのかを確認する必要があります。
この相続税評価については次回詳しく見ていきます。
結論
リゾート会員権には、相続によって次の世代へ引き継げるものがあります。
しかし相続できるからといって、何もしなくても子どもがそのまま利用できるとは限りません。
会員権の種類や運営会社の規約を確認し、名義変更などの手続きが必要になる場合があります。
さらに重要なのは、相続人が本当にその会員権を必要としているかという点です。
親にとって大切なリゾート会員権でも、旅行をしない子どもにとっては、年会費などがかかるだけの財産になる可能性があります。
だからこそ、
誰が引き継ぐのか。
引き継いだ人は利用するのか。
利用しないなら売却できるのか。
売却までどのような費用がかかるのか。
というところまで生前に考えておくことが重要です。
リゾート会員権の相続で大切なのは、単に財産を残すことではありません。
次の世代がその財産を本当に使いたいのかまで確認しておくことです。
使う人にとっては価値のある権利でも、使わない人にとっては負担になる。
この二面性を理解することが、リゾート会員権の相続を考える第一歩なのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 リゾート会員権 最高値 7月411万円 円安で国内旅行回帰