リゾート会員権はなぜ値上がりするのか ホテルそのものが増えていなくても価格が上がる理由編

FP
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リゾート会員権の価格が上昇しています。

2026年7月の中古会員権の平均価格は411万円となり、比較可能な2019年1月以降で最高値を更新しました。

ここで疑問になるのが、なぜ会員権の価格が上がるのかということです。

ホテルの建物が突然豪華になったわけでも、購入した会員権そのものが新しくなったわけでもありません。

それでも中古価格は上昇します。

理由を理解する鍵は、リゾート会員権の価格がホテルの建設費だけで決まるのではなく、その権利を買いたい人と売りたい人の需給によって決まることにあります。

中古市場の価格は需給で決まる

リゾート会員権には中古市場があります。

すでに会員権を持っている人が売り、それを欲しい人が購入します。

ここで価格を左右する基本的な要素が、

買いたい人の数

と

売りたい人の数

です。

たとえば、ある会員権を買いたい人が100人いるのに、売りに出ている会員権が20件しかなければどうなるでしょうか。

購入希望者同士で競争が起こります。

少し高くても買いたいという人が増えれば、中古価格は上昇します。

反対に売りたい人が多いのに買いたい人が少なければ、価格は下がりやすくなります。

株式や中古住宅などと同じように、会員権にも需給による価格形成があるのです。

ホテルが増えなくても需要は増える

リゾート会員権の価格上昇で興味深いのは、施設そのものが増えなくても価格が上がることです。

たとえば1000人分しか存在しない会員権があるとします。

これまで購入希望者が500人しかいなければ、売り手は買い手を探す必要があります。

ところが旅行需要が高まり、購入希望者が1500人に増えたらどうでしょうか。

会員権の数は1000人分のままです。

欲しい人だけが増えます。

すると限られた会員権を購入希望者が取り合うことになります。

その結果、中古価格が上昇します。

つまり価格上昇には、

ホテルが増えたか

ではなく、

そのホテルを利用したい人が増えたか

が重要なのです。

売り物件が少なくても価格は上がる

価格を動かすのは買い手だけではありません。

売り手の数も重要です。

人気の施設を多くの会員が実際に利用している場合、

今のところ売る必要はない

と考える人が増えます。

すると中古市場へ出てくる会員権が少なくなります。

購入希望者がそれほど増えていなくても、売却希望者が減れば需給は引き締まります。

たとえば以前は毎月100件売りに出ていた会員権が50件しか出なくなれば、購入希望者にとって選択肢は半分になります。

欲しい人が限られた売り物件に集中すれば、価格は上昇しやすくなります。

価格を見るときには需要だけでなく、供給にも注目する必要があります。

円安が購入希望者を増やす

2026年の会員権価格上昇を考えるうえで重要なのが円安です。

円安になると、日本人にとって海外旅行の負担が重くなります。

たとえば海外のホテルが1泊300ドルだったとします。

1ドル100円なら3万円です。

1ドル150円なら4万5000円になります。

現地のホテル料金がドルベースでまったく値上がりしていなくても、日本人が支払う円換算額は大きく増えます。

さらに現地の物価上昇や航空運賃などが加われば、海外旅行全体の費用はさらに高くなります。

そこで、

海外へ何度も旅行するより国内リゾートを楽しもう

と考える人が増えれば、国内リゾート会員権の購入希望者も増えやすくなります。

為替相場の変化が会員権の需要にまで波及するわけです。

海外旅行が高くなると国内の価値が上がる

ここで重要なのは、国内旅行そのものが安くなっているわけではないことです。

国内ホテルの宿泊料金も上昇しています。

それでも海外旅行の費用がそれ以上に上昇すれば、国内旅行は相対的に割安になります。

たとえば以前、

海外旅行30万円

国内旅行5万円

だったとします。

その後、

海外旅行45万円

国内旅行6万円

になったとします。

どちらも値上がりしています。

しかし海外旅行の方が大きく値上がりしています。

この場合、

それなら国内旅行を増やそう

と考える人が出てきます。

経済では、自分自身の価格だけでなく、代替となる商品やサービスとの価格差も需要を左右します。

海外旅行の値上がりが、国内リゾート会員権の価値を相対的に高めることがあるのです。

株高も需要を押し上げる

もう一つ考えられるのが資産価格の上昇です。

株式などを多く保有する人の場合、株価が上昇すると保有資産の評価額が増えます。

給与が増えていなくても、

資産が増えた

という感覚が消費行動に影響することがあります。

これを資産効果といいます。

リゾート会員権は生活必需品ではありません。

購入しなくても日常生活には困らない商品です。

そのため家計に余裕があると感じたときに購入されやすい側面があります。

特に数百万円以上の高額な会員権では、給与所得だけでなく保有資産の動向も購入判断に影響する可能性があります。

人気が人気を呼ぶこともある

価格上昇そのものが需要を刺激することもあります。

たとえば中古価格が、

200万円

250万円

300万円

と上昇しているとします。

それを見た人が、

この会員権は人気があるのだろう

今後さらに買いにくくなるかもしれない

と考えることがあります。

すると購入を急ぐ人が増える可能性があります。

購入希望者がさらに増えれば価格が上昇します。

価格上昇が需要を呼び、その需要がさらに価格を押し上げるわけです。

ただし、この状態がいつまでも続くとは限りません。

高くなれば需要は別の商品へ移る

価格上昇にはブレーキもあります。

どれほど人気があっても、価格が高くなりすぎれば購入を諦める人が出てきます。

2026年7月の市場でも、中価格帯への需要の移動がみられました。

100万円以上300万円未満の会員権は取引件数全体の42%を占めました。

一方、それまで価格上昇をけん引していた300万円以上の高価格帯は、取引件数に占める割合が低下しました。

高価格帯が上昇すると、

そこまで払うなら別の会員権にしよう

と考える人が出てきます。

これを経済的に考えると、代替先への需要移動です。

リゾート会員権市場の中でも価格によって購入者の選択が変わります。

すべての会員権が上がるわけではない

平均価格が最高値になったというニュースを見ると、

リゾート会員権なら何を買っても値上がりしている

と思うかもしれません。

しかし平均価格と個別の会員権価格は分けて考える必要があります。

人気施設では購入希望者が増えていても、別の施設では売却希望者の方が多いかもしれません。

立地や施設の老朽化、予約の取りやすさ、年会費などによって需要は変わります。

そのため市場全体の平均価格が上昇していても、値下がりする会員権が存在する可能性があります。

株価指数が上昇していても、すべての株式が値上がりするわけではないのと似ています。

新しい施設の登場も価格を変える

供給側にも変化があります。

魅力的な新しい施設や新しい会員制度が登場すれば、既存の会員権から需要が移る可能性があります。

これまで人気だった施設でも、

もっと新しい施設を利用したい

と考える人が増えれば、購入希望者が減ることがあります。

反対に、既存会員だけが利用できる人気施設が増えるなど、会員としての利便性が高まれば、既存会員権の需要が強くなる場合もあります。

つまり会員権価格は建物の現在の状態だけでなく、運営会社が今後どのような施設やサービスを提供するのかという期待にも影響されます。

値上がりしたから資産価値が保証されたわけではない

中古価格が上昇すると、

この会員権には資産価値がある

と考えたくなります。

しかし注意が必要です。

現在500万円で取引されているからといって、10年後にも500万円以上で売れる保証はありません。

旅行の流行が変わるかもしれません。

施設が古くなる可能性もあります。

年会費が上昇することも考えられます。

円高になって海外旅行の負担が軽くなれば、国内リゾートへの需要が弱まる可能性もあります。

現在の価格は、あくまで現在の需給を反映した価格です。

将来の売却価格を保証するものではありません。

値上がり益より利用価値を見る

リゾート会員権の価格が上昇していると、どうしても投資としての魅力に目が向きます。

しかし本来の価値は、保有している期間に施設を利用できることです。

仮に300万円で購入した会員権を10年後に300万円で売却したとしても、その間に何度も家族旅行を楽しめたのであれば、利用価値を得ています。

反対に500万円まで値上がりしても、一度も利用せず、年会費だけを払い続けていたのであれば、その人にとって本当に価値のある保有だったのかは別問題です。

会員権では、

いくら値上がりしたか

と

どれだけ利用したか

を分けて考える必要があります。

結論

リゾート会員権の価格が上昇するのは、ホテルそのものが増えたり豪華になったりするからだけではありません。

中古市場では、買いたい人と売りたい人の需給によって価格が形成されます。

円安や海外旅行費用の上昇によって国内リゾートを利用したい人が増える。

株高などによって高額消費にお金を使いやすい人が増える。

一方、既存会員が会員権を手放さず、中古市場への売り物件が少なくなる。

こうした要因が重なると、ホテルの数が変わらなくても会員権価格は上昇します。

ただし、平均価格が上昇しているからといって、すべての会員権が値上がりするわけではありません。

現在の高値が将来も続く保証もありません。

リゾート会員権の価格とは、建物そのものの値段ではなく、

その施設を利用したい人がどれだけいるのか

そして、

その人たちに対して売りに出される権利がどれだけあるのか

という需給を映す数字です。

ホテルが増えていないのに会員権が高くなるという一見不思議な現象も、限られた権利を欲しい人が増えたと考えれば、その仕組みが見えてくるのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 リゾート会員権 最高値 7月411万円 円安で国内旅行回帰

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