日本の少子化を考えるとき、結婚する人が減っていることは非常に重要な問題です。
日本では結婚と出生の結びつきが強く、婚姻件数の減少が出生数の減少につながりやすいからです。
2025年の出生動向基本調査では、18歳から34歳の未婚者で、いずれ結婚するつもりと答えた割合が男性75.1パーセント、女性77.8パーセントとなりました。
男女とも初めて8割を下回っています。
少子化対策を子どもが生まれた後の子育て支援だけで考えられない理由がここにあります。
日本では結婚と出産が強く結びついている
日本では、多くの子どもが結婚している夫婦の間に生まれています。
そのため、結婚する人の数が減れば、将来子どもを持つ可能性のある夫婦の数も減ります。
一組の夫婦が持つ子どもの人数が変わらなかったとしても、結婚する人そのものが減れば社会全体の出生数は減っていきます。
記事でも、日本では婚姻件数と出生数の相関が強いことが指摘されています。
結婚の動きを見ることが、将来の出生数を考えるうえで重要になる理由です。
未婚化とは何か
未婚化とは、結婚していない人の割合が高くなることです。
晩婚化とは少し意味が違います。
晩婚化は結婚する年齢が遅くなることです。
未婚化は、最終的に結婚しない人が増えることまで含む変化です。
結婚年齢が遅くなっているだけなら、後になって結婚する可能性があります。
しかし、一生結婚しない人が増えれば、婚姻件数そのものが長期的に減ることになります。
日本ではこれが出生数に大きく影響します。
一生結婚するつもりはない人が2割を超えた
2025年の出生動向基本調査では、18歳から34歳の未婚者で、一生結婚するつもりはないと答えた割合が男性24.0パーセント、女性21.5パーセントでした。
男女とも初めて2割を超えました。
一方、いずれ結婚するつもりと答えた割合は男性75.1パーセント、女性77.8パーセントです。
こちらは男女とも初めて8割を下回りました。
もちろん、若い時期の結婚意思がそのまま一生変わらないわけではありません。
仕事、所得、出会い、生活環境などによって考え方が変わることはあります。
それでも、結婚希望そのものが低下していることは、将来の出生数を考えるうえで重要な変化です。
結婚に利点を感じる人も減っている
調査では、結婚することに利点があると考える未婚者の割合も低下しています。
男性は56.3パーセント、女性は63.4パーセントとなり、ともに過去最低でした。
結婚によって生活が安定する。
家族を持てる。
経済的なメリットがある。
こうした結婚の利点を感じる人が以前より少なくなっていることがうかがえます。
結婚すれば生活が楽になるとは限らず、住宅費や子育て費用など新しい負担が増えると考える若者もいるでしょう。
結婚に対する価値観の変化と経済環境の変化を両方見る必要があります。
結婚しない理由を価値観だけで説明できない
結婚しない人が増えていると聞くと、若者の価値観が変わったからだと考えたくなります。
しかし、調査を見るとそれだけでは説明できません。
現在は結婚を望んでいない人の中にも、条件が変われば結婚したいと考える可能性のある人がいます。
収入や貯蓄が増えれば結婚希望に転じる可能性があるとした割合は、男性56.1パーセント、女性44.6パーセントでした。
つまり、結婚したくないという回答の中には、現在の経済条件では結婚を考えにくいという判断も含まれている可能性があります。
所得と住居が結婚の入口を狭くする
1年以内に結婚すると仮定した場合の障害として、最も多く挙げられたのは資金面でした。
住居の問題も上位にあります。
結婚すれば新しい生活を始める必要があります。
二人で暮らせる住宅が必要です。
将来子どもを考えるのであれば、さらに広い住宅が必要になるかもしれません。
住宅価格や家賃が高く、将来の所得にも不安があれば、結婚を先送りする判断につながります。
日本ではその先送りが、そのまま出産時期の先送りにもつながりやすいという特徴があります。
海外と同じようには考えられない
結婚と出生の関係は、国によって異なります。
結婚していない男女の間に子どもが生まれることが比較的一般的な国では、婚姻件数が減ったからといって出生数が同じように減るとは限りません。
一方、日本では結婚と出産の結びつきが強く残っています。
そのため、海外で効果のあった少子化対策をそのまま日本へ当てはめても、同じ結果になるとは限りません。
日本の家族形成の特徴を踏まえて政策を考える必要があります。
結婚する人が増えてもそれだけでは足りない
ただし、結婚する人を増やせば少子化が解決するという単純な話でもありません。
2025年の調査では、夫婦が予定する子どもの数が平均1.95人となり、初めて2人を下回りました。
つまり、日本の少子化は二つの方向から進んでいます。
結婚する人が減っています。
さらに、結婚した夫婦が予定する子どもの人数も減っています。
婚姻件数を増やす政策と、結婚後に希望する人数の子どもを持てるようにする政策の両方が必要になります。
結婚を強制する政策ではない
ここで注意したいのは、少子化対策として結婚を考えることと、個人に結婚を求めることは全く違うということです。
結婚しない生き方も個人の選択です。
政策が目指すべきなのは、結婚しない人を結婚させることではありません。
結婚したい人が所得不足や住宅問題などによって諦めなくてもよい環境をつくることです。
本人の希望と実際の行動との間にある障害を小さくすることが政策の役割になります。
結論
日本では結婚と出生の結びつきが強いため、未婚化がそのまま出生数の減少につながりやすいという特徴があります。
2025年の出生動向基本調査では、いずれ結婚するつもりと答えた18歳から34歳の未婚者が男性75.1パーセント、女性77.8パーセントとなり、男女とも初めて8割を下回りました。
一方、一生結婚するつもりはないという回答は男性24.0パーセント、女性21.5パーセントとなり、初めて男女とも2割を超えました。
ただし、これを若者の価値観の変化だけで説明することはできません。
所得や貯蓄、住宅などの条件が変われば結婚希望に転じる可能性のある人も少なくありません。
日本の少子化対策では、子育て支援と同時に、結婚を希望する若者が家庭を築ける生活基盤を整える必要があります。
そして結婚後には、希望する人数の子どもを持てる環境をつくる必要があります。
結婚前と結婚後を一つの流れとして考えることが、日本の少子化の構造を理解するうえで重要なのだと思います。
参考
日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 一生結婚しない2割超
日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 生活不安で結婚ためらう 家庭築く準備、支援薄く