日本では今後、相続によって巨額の資産が高齢者から次の世代へ移っていきます。
参考記事によると、日本国内で1年間に相続される資産は足元で約46兆円と推計されています。
しかも、この金額は今後さらに増え、2030年には48兆8000億円、2040年には51兆円に達すると見込まれています。
相続というと一つ一つの家族の問題に見えますが、日本全体では年間50兆円規模のお金が持ち主を変える巨大な資産移転です。
問題は、そのお金が誰に渡るかだけではありません。
相続後、その資産がどこへ移るのかを見ることも重要です。
年間約46兆円という巨大な資産移転
46兆円という金額は、一つの金融商品や一つの金融機関の動きとは比較できないほど大きな規模です。
もちろん、相続資産のすべてが現金や預金ではありません。
土地や住宅などの不動産、株式などの有価証券を含め、さまざまな資産が親から子どもなどへ引き継がれます。
それでも相続によって、毎年数十兆円規模の資産の所有者が変わるという事実は重要です。
相続人は受け取った資産を、そのまま同じ形で持ち続けるとは限りません。
預金を投資へ回したり、不動産を売却したり、複数の金融機関に分散したりすることもあります。
相続は単なる名義変更ではなく、資産の置き場所が大きく変わる機会でもあるのです。
死亡者数の増加で相続資産も増える
日本では高齢化が進んでいます。
今後、死亡者数が高い水準で推移することで、相続が発生する件数も多くなります。
さらに現在の高齢者世代は、長い人生の中で預金や不動産などの資産を蓄積してきました。
その資産が次の世代へ引き継がれていきます。
参考記事では、年間の相続資産は2030年に48兆8000億円、2040年には51兆円まで増えるとしています。
年間50兆円前後の資産移転が毎年発生する時代が近づいていることになります。
これを一つ一つの相続として見るのではなく、日本全体で進む巨大な世代交代として見る必要があります。
高齢者から現役世代へ資産が移る
日本の家計金融資産は高齢者層に厚く蓄積されています。
相続が本格化すると、こうした資産が子どもなどの次世代へ移ります。
例えば、80代の親が3000万円の預金を持っていたとします。
親が亡くなり、50代の子ども2人が1500万円ずつ相続すれば、金融資産の所有者が高齢世代から現役世代へ変わります。
ここで重要なのは、世代によってお金の使い方が違う可能性があることです。
親は預金中心で資産を保有していたとしても、子どもは投資信託や株式などへ資金を振り向けるかもしれません。
住宅ローンの返済や子どもの教育費に使う場合もあります。
相続による世代交代は、日本の家計金融資産の中身を変える可能性があります。
地方から都市へ資産が移る
さらに大きな問題が地域間の移動です。
地方に住む高齢の親の子どもが、必ずしも同じ地域に住んでいるとは限りません。
進学や就職をきっかけに東京や大阪などへ移り、そのまま都市部で生活しているケースもあります。
例えば、地方に住む親が地元の信用金庫へ3000万円を預けていたとします。
東京に住む子どもがその預金を相続し、自分が普段利用しているメガバンクやネット銀行へ移せば、3000万円の金融資産が地方から都市へ移ります。
家族全体の資産額は変わりません。
しかし、地域別に見れば地方から金融資産が流出したことになります。
人が移った数十年後にお金が移る
この現象には時間差があります。
例えば、子どもが22歳で大学卒業後に地方から東京へ移ったとしても、親はその後も地方で暮らし続けます。
親の預金も地元の金融機関に残ります。
そのため、人口は先に地方から流出しても、金融資産はすぐには動きません。
ところが数十年後に親が亡くれると、相続によって金融資産も子どものいる都市へ移る可能性があります。
人の移動が先に起こり、その後を追うようにお金が移動するわけです。
地方の人口減少が長期化すると、時間差を伴って金融資産の流出まで進む可能性があります。
相続によって金融機関も選び直される
相続が重要なのは、資産の所有者が変わると金融機関との関係も一度リセットされやすいことです。
親は地元の信用金庫と40年間取引していたかもしれません。
しかし、その子どもには同じ信用金庫を利用する理由がない場合があります。
東京で働く子どもなら、給与振込にはメガバンク、貯蓄にはネット銀行、投資にはネット証券を使っているかもしれません。
相続した資産についても、自分が利用している金融機関へまとめる方が便利です。
親が何十年も築いてきた金融機関との関係が、相続を境に終わる可能性があるのです。
預金から投資へ資産の形が変わる可能性もある
相続資産は地域だけでなく、金融商品の間でも移動します。
高齢の親が安全性を重視して預金を中心に資産を保有していても、相続した子どもが同じ考え方とは限りません。
例えば、相続した2000万円のうち500万円を預金として残し、残りを投資信託や株式などへ振り向けることも考えられます。
NISAの普及によって、現役世代が長期投資を始める環境も整ってきました。
相続によって、預金中心だった資産が投資商品へ変わる可能性があります。
つまり大相続時代は、地域間の資金移動だけでなく、預金から投資への資金移動を促す可能性もあるのです。
金融業界全体の競争にも影響する
年間50兆円近い資産の所有者が変われば、金融機関にとって大きなビジネス環境の変化になります。
銀行や信用金庫だけではありません。
証券会社、信託銀行、ネット証券なども相続資産を受け継ぐ世代との関係を強化しようとします。
金融機関から見ると、親世代の資産を管理しているだけでは十分ではありません。
相続後もその資産との関係を維持するには、子ども世代との接点が必要だからです。
相続相談や遺言、信託、資産運用などのサービスが重要になる理由もここにあります。
預金獲得競争だけでなく、相続資産をめぐる金融業界全体の競争が強まることになります。
大相続時代は日本のお金の地図を変える
相続による資産移転を全国規模で考えると、日本のお金の地図そのものが変わる可能性があります。
地方から都市へ。
高齢者から現役世代へ。
預金から投資へ。
地域金融機関から全国規模の銀行やネット金融機関へ。
一つの相続の金額はそれほど大きくなくても、年間数十兆円規模で同じような動きが積み重なれば、金融市場や地域経済への影響は大きくなります。
これからの日本では人口の分布だけでなく、金融資産がどこにあり、誰が保有しているのかを見ることがますます重要になります。
結論
日本では足元で年間約46兆円もの資産が相続されていると推計されています。
その規模は2030年に48兆8000億円、2040年には51兆円まで増えると見込まれています。
これは単なる家族間の財産承継ではありません。
高齢者から次世代へ、地方から都市へ、場合によっては預金から投資へと、日本の金融資産が大規模に動くことを意味します。
特に地方では、若い世代の人口流出から数十年遅れて、親世代が蓄積した金融資産まで相続によって流出する可能性があります。
大相続時代を見るときに重要なのは、いくら相続されるかだけではありません。
誰が受け継ぎ、その後どこに置き、どのように使うのか。
年間50兆円規模へ向かう相続資産の行き先が、これからの日本の金融と地域経済の姿を大きく左右することになりそうです。
参考
日本経済新聞 2026年9月10日 朝刊 信金の個人預金、初の2年連続減 昨年度