会社が銀行からお金を借りれば、通常は会社と銀行の二者間の取引だと思うかもしれません。
ところが、中小企業向けの融資では第三者として信用保証協会が登場することがあります。
銀行がお金を貸し、企業が銀行へ返済するという基本的な関係は変わりません。それでも信用保証協会が間に入ることで、銀行は融資によって負うリスクを小さくできます。
この仕組みが信用保証付き融資です。
中小企業金融を理解するうえでは、銀行から直接借りるプロパー融資との違いを知ることも重要です。
今回は、信用保証付き融資がどのような仕組みになっているのかを見ていきます。
信用保証付き融資とは何か
信用保証付き融資とは、信用保証協会による保証を付けて、銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受ける仕組みです。
企業へ実際にお金を貸すのは金融機関です。
信用保証協会が企業へ直接お金を渡すわけではありません。
信用保証協会の役割は、企業が金融機関へ返済できなくなった場合に備えて、その融資を保証することです。
そのため、企業と金融機関だけではなく、信用保証協会を加えた三者の関係で融資が成り立っています。
銀行から借りているのに信用保証協会が登場するのは、銀行の融資リスクを公的な仕組みによって一定程度軽減するためです。
なぜ中小企業には信用保証が必要なのか
銀行が企業へ融資するときには、貸したお金が返ってくる可能性を判断します。
企業の売り上げや利益、借入金、保有資産、今後の事業計画などを確認します。
大企業であれば事業規模が大きく、財務情報も豊富です。土地や建物などの資産を持っている企業もあります。
一方、中小企業の場合には十分な担保がなかったり、事業規模が小さかったりすることがあります。
創業して間もない企業なら、過去の決算実績そのものが少ない場合もあります。
銀行から見れば、企業の将来性は評価できても、融資によるリスクをすべて引き受けることには慎重にならざるを得ません。
そこで信用保証協会が信用を補完します。
保証が付くことによって銀行の貸し倒れリスクが小さくなり、中小企業へ資金を供給しやすくなるのです。
融資を申し込むと二つの審査が行われる
信用保証付き融資では、信用保証協会が保証するからといって無条件で融資を受けられるわけではありません。
基本的には金融機関による融資審査と、信用保証協会による保証審査があります。
金融機関は、企業に返済能力があるか、資金の使い道は適切か、事業に将来性があるかなどを確認します。
信用保証協会も企業の財務状況や事業内容などを確認します。
そのうえで信用保証協会が保証を承諾し、金融機関が融資を実行します。
つまり、信用保証協会は銀行の審査を代わりに行う組織ではありません。
銀行と信用保証協会がそれぞれの立場から企業を見る仕組みになっています。
企業は銀行へ利息を支払い信用保証協会へ保証料を支払う
信用保証付き融資では、企業が負担するコストにも特徴があります。
まず、銀行からお金を借りるため、銀行へ利息を支払います。
さらに、信用保証協会の保証を利用するため、信用保証料も必要になります。
金利と信用保証料は別のものです。
金利は銀行からお金を借りることに対するコストです。
信用保証料は信用保証協会に保証してもらうことに対するコストです。
したがって、信用保証付き融資を利用するときには、表示されている借入金利だけを見るのではなく、保証料を含めた資金調達コストを考える必要があります。
それでも保証を利用するのは、保証なしでは借りにくい企業が資金を調達できたり、希望する融資額を確保しやすくなったりする可能性があるからです。
信用保証があっても銀行がすべてのリスクを免れるわけではない
信用保証という言葉から、企業が返済できなくなれば信用保証協会が借入金のすべてを銀行へ支払うと思うかもしれません。
しかし、現在の一般的な保証では原則として融資額の80パーセントを信用保証協会が保証する責任共有制度が導入されています。
残る20パーセントについては金融機関もリスクを負います。
なぜ銀行にもリスクを残すのでしょうか。
もし融資額の全額が常に保証されるなら、銀行は企業が返済できなくなっても損失を受けにくくなります。
すると、融資先を慎重に審査する動機が弱くなる可能性があります。
銀行にも一定のリスクを負わせることで、企業の返済能力や事業内容をしっかり確認してもらう仕組みになっているのです。
返済できなくなれば代位弁済が行われる
信用保証付き融資を受けた企業が経営不振などによって返済できなくなる場合があります。
一定の条件を満たすと、信用保証協会が金融機関へ支払いを行います。
これが代位弁済です。
ここで重要なのは、代位弁済によって企業の借金そのものがなくなるわけではないことです。
信用保証協会が銀行へ立て替えて支払った後は、信用保証協会が企業に返済を求める立場になります。
企業から見ると、返済すべき相手が変わったと考えると分かりやすいでしょう。
信用保証は企業の返済義務を免除する制度ではなく、金融機関の信用リスクを補完する制度なのです。
プロパー融資とは何が違うのか
信用保証付き融資と対になるものとして知っておきたいのがプロパー融資です。
プロパー融資では信用保証協会の保証を利用しません。
銀行が自ら企業を審査し、自らの責任で融資します。
企業が返済できなくなった場合には、原則として銀行自身がそのリスクを負うことになります。
そのため銀行にとっては、信用保証付き融資より慎重な判断が必要になります。
一方、企業から見れば信用保証料を支払う必要がありません。
銀行からプロパー融資を受けられるということは、それだけ金融機関から一定の信用力や返済能力を認められているとも考えられます。
中小企業にとって信用保証付き融資は重要ですが、企業が成長するにつれてプロパー融資を利用できる関係を銀行と築いていくことも重要になります。
信用保証は企業の成長段階によって役割が変わる
創業したばかりの会社は実績がありません。
銀行が将来の返済能力を判断する材料も限られています。
この段階では信用保証付き融資が資金調達を支える重要な役割を果たします。
その後、会社が成長して売り上げや利益が増え、財務基盤が強くなれば、銀行から直接プロパー融資を受けられる可能性も高まります。
一方、設備投資やM&Aなどによって一気に事業規模を拡大するときには、再び大きな資金需要が発生します。
今回、経済産業省が信用保証の上限を従来の2億8000万円から10億円程度まで広げる新たな枠を検討している背景にも、このような成長企業の資金需要があります。
信用保証を単に経営の厳しい企業を支える制度として見るだけでは、今回の制度改正の意味を十分に理解できません。
成長する企業が大きな投資に踏み出すための資金調達手段としても、信用保証を活用しようとしているのです。
銀行との関係を築くことも重要になる
信用保証付き融資では公的な保証が付いているため、企業は銀行との関係をそれほど重視しなくてもよいと思うかもしれません。
しかし実際には逆です。
銀行にも一定のリスクが残る以上、企業の経営内容を理解する必要があります。
企業側も決算書を提出するだけではなく、どのような事業を行っているのか、今後どこへ投資するのか、その投資によってどれだけ利益やキャッシュフローが増えるのかを説明することが重要になります。
信用保証は銀行と企業の関係をなくす制度ではありません。
むしろ信用保証を利用しながら実績を積み、銀行との信頼関係を築き、将来的には保証に依存しない資金調達へ進んでいくことが企業の成長につながります。
結論
信用保証付き融資とは、信用保証協会による保証を付けて、銀行や信用金庫などから融資を受ける仕組みです。
実際に企業へお金を貸すのは金融機関であり、信用保証協会は企業の信用力を補完します。
信用保証があることで銀行の貸し倒れリスクが小さくなり、担保や実績が十分ではない中小企業でも資金を調達しやすくなります。
一方、企業は銀行への利息とは別に信用保証料を負担します。
また、企業が返済できなくなって信用保証協会が代位弁済しても、企業の借金が消えるわけではありません。
そして現在の一般的な制度では、銀行にも一定のリスクを残すことで、融資先を見極める機能を維持しています。
信用保証付き融資は、単に国が中小企業の借金を保証する制度ではありません。
企業と銀行だけでは成立しにくい融資を信用保証協会が支え、中小企業へ必要な資金を流れやすくする仕組みです。
この構造を理解すると、なぜ日本の中小企業金融で信用保証制度が大きな役割を担っているのかが見えてきます。
参考
日本経済新聞 2026年9月9日朝刊 中小融資、保証上限上げ 2.8億円から10億円に 設備投資・M&A促す 経産省検討
日本経済新聞 2026年9月9日朝刊 信用保証 中小への融資、リスク軽減