第3号被保険者制度と遺族年金は別制度 夫の扶養に入っているから遺族年金を受け取れるわけではない理由編

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会社員の夫に扶養され、第3号被保険者になっている妻がいるとします。

夫が亡くなった場合、

第3号被保険者だったから遺族年金を受け取れる

と考える人もいるかもしれません。

しかし、第3号被保険者制度と遺族年金は別の制度です。

第3号被保険者制度は、配偶者に扶養されている人の国民年金への加入をどのように扱うかという仕組みです。

一方、遺族年金は、公的年金の加入者などが亡くなったとき、一定の要件を満たす遺族の生活を支えるための給付です。

どちらも夫婦や扶養という言葉が登場するため混同しやすいのですが、目的も受給要件も違います。

第3号被保険者制度の見直しを考えるうえでも、この違いを理解しておくことが重要です。

第3号被保険者は年金の加入区分

まず第3号被保険者とは何でしょうか。

国民年金では、加入者を第1号、第2号、第3号被保険者に分けています。

第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の一定の配偶者です。

例えば厚生年金に加入している会社員の夫に扶養されている妻が、一定の要件を満たして第3号被保険者になるケースがあります。

第3号被保険者は、本人が国民年金保険料を直接納めなくても、その期間が原則として保険料納付済期間として扱われます。

これは主に本人自身の老齢基礎年金などにつながる仕組みです。

遺族年金は死亡後の生活を支える給付

これに対して遺族年金は、家族が亡くなった場合に一定の遺族へ支給される公的年金です。

代表的なものとして、

遺族基礎年金

遺族厚生年金

があります。

どちらも遺族年金ですが、受け取れる人や要件は同じではありません。

亡くなった人がどの年金制度に加入していたのか。

残された家族は誰なのか。

子どもがいるのか。

亡くなった人との生計維持関係はどうだったのか。

こうした条件によって受給できる年金が変わります。

遺族基礎年金とは何か

遺族基礎年金は、国民年金から支給される遺族給付です。

誰でも配偶者が亡くなれば受け取れるわけではありません。

代表的には、亡くなった人によって生計を維持されていた「子のある配偶者」や「子」が対象になります。

ここでいう子にも年齢などの要件があります。

したがって、子どものいない夫婦で夫が亡くなったからといって、妻が必ず遺族基礎年金を受け取れるわけではありません。

妻が第3号被保険者だったかどうかだけで、遺族基礎年金の受給権が決まるわけでもありません。

遺族厚生年金とは何か

遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた人などが亡くなった場合に、一定の要件を満たす遺族へ支給される年金です。

会社員として厚生年金に加入していた夫が亡くなった場合には、妻など一定の遺族について遺族厚生年金が関係することがあります。

こちらも、

妻であれば無条件で受け取れる

という制度ではありません。

亡くなった人の厚生年金の加入状況や保険料納付要件、遺族側の要件などを確認する必要があります。

重要なのは、遺族厚生年金が、

妻が第3号だったから支給される年金

ではないということです。

第3号でなくても遺族厚生年金を受け取る場合がある

例えば夫婦共働きで、妻自身も会社員として厚生年金に加入しているとします。

妻は第2号被保険者です。

第3号ではありません。

その状態で夫が亡くなった場合でも、妻が遺族厚生年金の受給要件を満たせば、遺族厚生年金が関係することがあります。

つまり、

第3号でなければ遺族厚生年金を受け取れない

わけではありません。

遺族年金は、第3号という加入区分とは別の受給要件によって判断されるからです。

第3号でも遺族基礎年金を受け取れない場合がある

逆のケースもあります。

妻が長年、第3号被保険者だったとします。

しかし夫婦に遺族基礎年金の対象となる子がいなければ、夫が亡くなったからといって妻に遺族基礎年金が必ず支給されるわけではありません。

第3号として国民年金に加入していたことと、

夫の死亡によって遺族基礎年金を受け取れること

は別問題だからです。

この違いを理解していないと、

第3号だから遺族年金も保障されている

と誤解する可能性があります。

扶養という言葉が混乱を招きやすい

第3号被保険者と遺族年金が混同されやすい理由の一つが、「扶養」という考え方です。

第3号被保険者では、第2号被保険者に扶養されている一定の配偶者であることが重要です。

遺族年金でも、亡くなった人によって生計を維持されていたかどうかが重要になる場合があります。

どちらも、

家族の収入で生活していた

という関係が登場します。

しかし制度の目的は異なります。

第3号は年金制度への加入をどう扱うかという問題です。

遺族年金は死亡というリスクが発生した後の所得保障です。

同じ扶養関係が登場しても、同じ制度ではありません。

夫が亡くなると第3号資格はどうなるのか

第3号被保険者だった妻の夫が亡くなれば、第3号の前提となっていた配偶者との関係がなくなります。

したがって妻は、それまでと同じ第3号被保険者としての状態を続けることはできません。

妻自身が厚生年金に加入して働けば第2号被保険者になります。

厚生年金に加入せず、20歳以上60歳未満などの要件に該当すれば、第1号被保険者になるケースがあります。

つまり夫の死亡時には、

遺族年金を受け取れるか

という確認だけでは不十分です。

妻自身の今後の年金加入区分についても確認する必要があります。

遺族年金を受け取っても第3号のままではない

ここは特に重要です。

夫の死亡後に妻が遺族厚生年金を受け取ることになったとしても、それによって第3号被保険者の資格が続くわけではありません。

遺族厚生年金を受け取ることと、第3号被保険者であることは別だからです。

例えば50歳の妻が夫を亡くし、遺族厚生年金を受け取るようになったとします。

妻が自分の勤務先で厚生年金に加入していなければ、国民年金について第1号被保険者への切り替えが必要になるケースがあります。

遺族年金を受け取っているから国民年金への加入手続きが不要、とは限りません。

自分自身の老齢年金とも別に考える

さらに、

第3号被保険者として積み上げた自分の年金

と、

夫の死亡によって受け取る遺族年金

も分けて考える必要があります。

第3号だった期間は、原則として本人自身の老齢基礎年金につながります。

一方、遺族厚生年金は亡くなった配偶者の厚生年金加入などを基礎として支給される遺族給付です。

つまり妻から見ると、

自分自身の老齢年金

と、

配偶者に由来する遺族年金

という異なる年金が存在します。

老後には自分自身の老齢年金との調整が関係する場合もあるため、それぞれを別の制度として理解する必要があります。

第3号が縮小されても遺族年金が自動的になくなるわけではない

今後、第3号被保険者制度の縮小が進んだ場合、

専業主婦の保障がすべてなくなるのではないか

と考える人もいるかもしれません。

しかし第3号被保険者制度と遺族年金は別制度です。

仮に第3号の対象範囲が縮小されたとしても、それだけを理由として遺族基礎年金や遺族厚生年金が自動的になくなるわけではありません。

もちろん遺族年金制度自体について別途見直しが行われる可能性はあります。

しかし、

第3号を縮小すること

と、

遺族年金を縮小すること

は別の政策判断です。

一緒に考えないことが大切です。

第3号から第2号になっても遺族年金との関係は続く

厚生年金の適用拡大によって、これまで第3号だったパート労働者が第2号へ移るケースが増えていきます。

この場合、本人自身の厚生年金が積み上がります。

それでも配偶者が亡くなった場合には、一定の要件を満たせば遺族厚生年金が関係する可能性があります。

つまり、

自分自身が厚生年金に加入すること

と、

配偶者の死亡に伴う遺族給付

は両立し得ます。

第3号から外れることは、遺族としての年金保障をすべて失うことを意味するわけではありません。

共働きが増えると遺族年金の考え方も変わる

第3号被保険者制度が1986年に始まった時代には、夫が会社員として働き、妻が専業主婦として家庭を支える世帯が多くありました。

遺族年金についても、主な稼ぎ手を失った家族をどう支えるかという考え方が重要でした。

しかし現在は共働き世帯が増えています。

夫婦とも厚生年金に加入する家庭も珍しくありません。

すると、

夫が妻を扶養する

妻が夫に扶養される

という一方向だけでは家族の所得保障を説明しにくくなります。

第3号制度と同様に、遺族年金についても働き方や家族の形の変化との関係が重要になっています。

3つの制度を分けて考える

配偶者に関係する年金を理解するときには、少なくとも3つを分けると分かりやすくなります。

第1に、第3号被保険者制度です。

これは本人が国民年金にどのような立場で加入するかという制度です。

第2に、本人自身の老齢年金です。

第3号だった期間は、原則として本人の老齢基礎年金につながります。

第3に、遺族年金です。

これは配偶者などが亡くなった場合に、一定の要件を満たす遺族へ支給される給付です。

同じ夫婦に関係する年金でも、役割がそれぞれ違います。

第3号改革を見るときにも区別が必要

厚生労働省は第3号被保険者制度の縮小を念頭に実態調査を進めています。

今後の議論では、

第3号を縮小すると配偶者の保障はどうなるのか

という問題も出てくるでしょう。

そのとき重要なのは、どの保障について議論しているのかを明確にすることです。

国民年金保険料の負担なのか。

本人自身の老齢年金なのか。

遺族年金なのか。

健康保険の扶養なのか。

これらをまとめて「扶養の保障」と考えてしまうと、制度改革の影響を正確に理解できません。

結論

第3号被保険者制度と遺族年金は、どちらも夫婦や扶養関係が登場するため混同しやすい制度です。

しかし目的はまったく異なります。

第3号被保険者制度は、第2号被保険者に扶養される一定の配偶者について、国民年金への加入をどのように扱うかという仕組みです。

一方、遺族年金は、年金加入者などが亡くなったときに一定の遺族の生活を支えるための給付です。

第3号だったから自動的に遺族年金を受け取れるわけではありません。

逆に、第3号ではない共働きの配偶者でも、要件を満たせば遺族厚生年金などが関係する場合があります。

また夫が亡くなれば、第3号だった妻は自分自身の今後の年金加入についても確認する必要があります。

遺族年金を受け取ることになったからといって、第3号資格がそのまま続くわけではありません。

第3号被保険者制度の縮小を考えるときにも、

第3号を縮小すること

と、

遺族年金をなくすこと

を同じ問題として考えてはいけません。

本人自身の老齢年金と、配偶者の死亡に備える遺族年金は別々の仕組みです。

配偶者に関係する年金制度ほど、一つ一つを分けて理解することが重要なのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 厚労省「年金3号」縮小へ調査 働き控えの実態把握

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