恒久財源とは何か 2年間の減税に一時的な財源だけでは不十分になる理由編

税理士
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政府が減税や新しい社会保障制度を始めるとき、必ず問題になるのが「財源」です。

例えば毎年1兆円の税収が減る減税を実施するとします。

一方で、使っていない国有財産を売却して1兆円を確保できたとします。

金額だけを見ると、

1兆円の減税に1兆円の財源がある

ので問題がないように見えます。

しかし国有財産を売却して得られる1兆円は基本的に一度限りです。

減税が翌年も続けば、再び1兆円の税収が減ります。

そこで重要になるのが「恒久財源」という考え方です。

日本版DOGEによる税制優遇や補助金の見直しが、消費税減税などの財源として期待される場合にも、その財源が毎年生まれるものなのか、一度限りなのかを区別する必要があります。

恒久財源とは何か

恒久財源とは、政策を続ける間、継続的に確保できる財源のことです。

例えば毎年5000億円の歳出を削減できる仕組みを作り、その削減が将来も続くのであれば、毎年5000億円程度の財源が生まれます。

ある税制優遇を恒久的に廃止し、その結果として毎年5000億円程度の税収増が見込める場合も、継続的な財源になり得ます。

ポイントは、

今年だけお金がある

ことではありません。

政策による財政負担が続く期間に合わせて、財源も継続的に確保できるかどうかです。

一時財源とは何か

一時財源とは、基本的に一度だけ、あるいは限られた期間だけ利用できる財源です。

例えば、

国有財産の売却収入

一時的な税収の上振れ

基金の取り崩し

過去に積み立てた剰余金

などが考えられます。

こうしたお金も政府の財源として利用できる場合があります。

しかし毎年同じ金額を確保できるとは限りません。

1000億円の資産を売却すれば、その年には1000億円の収入があります。

しかし同じ資産を翌年もう一度売ることはできません。

この違いが重要です。

恒久的な政策には恒久財源が必要になる

例えば政府が毎年1兆円の給付制度を新設したとします。

1年目については1兆円の基金を取り崩して財源を確保できたとします。

しかし制度が2年目も続けば、また1兆円が必要です。

3年目にも1兆円必要です。

10年間続けば、単純計算で10兆円になります。

一時財源だけでは継続できません。

そこで、

毎年の歳出を1兆円削減する

別の税収を1兆円増やす

など、継続的な財源が必要になります。

これが恒久財源を重視する理由です。

2年間の減税ならどう考えるのか

恒久財源という言葉から、

永久に続く政策だけに必要なのではないか

と思うかもしれません。

しかし期限付きの政策でも、財源の期間を合わせるという考え方は重要です。

例えば年間2兆円の税収減となる減税を2年間実施するとします。

必要な財源は単純化すると、

1年目に2兆円

2年目に2兆円

合計4兆円

となります。

1年目だけ2兆円の一時財源を確保しても、2年目の財源がありません。

2年間の減税なら、少なくとも2年間にわたって財政負担を支えられる財源が必要になります。

減税も政府にとっては財政負担になる

減税では政府がお金を直接支払うわけではありません。

そのため、

減税なのになぜ財源が必要なのか

と疑問に思うことがあります。

例えば政府が毎年100兆円の税収を得ているとします。

そのうち5兆円分を減税すれば、税収は95兆円になります。

一方、政府支出が100兆円のままだとすれば、5兆円の不足が生じます。

この不足を、

歳出削減

別の税収

国債発行

などで補わなければなりません。

減税も財政収支を悪化させる可能性があるため、財源の議論が必要になるのです。

歳出削減は恒久財源になり得る

例えば政府が毎年行っている5000億円の事業を廃止したとします。

1年目に5000億円の支出が減ります。

事業を復活させなければ、2年目以降も5000億円程度の支出削減が続きます。

このような歳出削減は恒久財源になり得ます。

ただし、

今年だけ公共事業を5000億円減らす

という措置なら翌年に支出が戻る可能性があります。

重要なのは、削減額だけではありません。

その削減が将来も続く制度的なものかどうかです。

租特廃止も恒久財源になり得る

租税特別措置の廃止も同じです。

例えばある税制優遇によって毎年1000億円の税収が減っていたとします。

その制度を廃止し、企業行動などを考慮したうえでも毎年おおむね1000億円の税収増が見込めるのであれば、継続的な財源になり得ます。

日本版DOGEが税制優遇を見直すことには、この意味があります。

単年度だけではなく、制度そのものを廃止すれば翌年度以降にも財政効果が続く可能性があるからです。

ただし前回説明したように、現在の減収額がそのまま廃止後の税収増になるとは限りません。

一時的な税収上振れには注意が必要

景気が良くなったり企業利益が増えたりすると、政府の税収が当初予算を上回ることがあります。

例えば当初100兆円と見込んでいた税収が105兆円になれば、5兆円の上振れです。

この5兆円を財源として一時的な給付を行うのであれば、一つの考え方です。

しかし毎年5兆円の減税を恒久的に実施する財源にすると問題が生じる可能性があります。

翌年も税収が5兆円上振れする保証はないからです。

景気が悪化すれば、逆に税収が減ることもあります。

一時的な税収増と構造的な税収増を区別する必要があります。

国債は財源なのか

税収が減っても国債を発行すれば、政府は必要なお金を調達できます。

その意味では国債も資金調達手段です。

しかし国債には将来の元利払いが発生します。

毎年続く減税を毎年国債で補えば、国債残高が積み上がっていく可能性があります。

金利が上昇すれば利払い費も増えます。

そのため財政の持続可能性を考える場合、

国債を発行できるか

だけではなく、

政策を長期的に支えられる安定した財源があるか

を見ることが重要です。

政策の期間と財源の期間を合わせる

財源を考えるときの基本は、

政策の期間

財源の期間

をできるだけ合わせることです。

一時的な政策なら、一時財源を使うことにも合理性があります。

例えば一度限りの緊急給付を、一時的な税収上振れで賄うという考え方です。

一方、毎年続く政策なら継続的な財源が必要になります。

期限付きの減税なら、その期限全体を支えられる財源が必要です。

金額だけではなく時間軸を見ることが重要なのです。

日本版DOGEの財源には継続性が問われる

参考記事では、高市政権が2027年4月に予定する食料品の消費税減税の財源として、日本版DOGEによる税制優遇や補助金の見直しを活用する考えが示されています。

しかし今回、各省庁が2027年度税制改正要望で廃止を求めた税制優遇は3件にとどまり、金額を把握できる範囲で生まれる財源は年間約10万円でした。

減税の財源として考えるのであれば、

何件廃止したか

だけでは十分ではありません。

毎年度いくらの財政効果が生まれるのか。

その効果は減税期間中も続くのか。

こうした点を見る必要があります。

大きな財源ほど継続性の確認が必要

例えば日本版DOGEによって1兆円の財源を確保できたとします。

それでも、

今年だけ1兆円なのか

毎年1兆円なのか

によって意味は大きく違います。

基金の余剰金を取り崩して1兆円を作ったのであれば、一度限りかもしれません。

一方、政策効果の低い恒久的な歳出を削減し、毎年1兆円の支出を減らせるのであれば、継続的な財源になる可能性があります。

財源を評価するときは、金額と同じくらい継続性が重要なのです。

結論

恒久財源とは、政策を続ける期間にわたって継続的に確保できる財源のことです。

一方、資産売却や基金の取り崩し、一時的な税収上振れなどは、一時財源になる場合があります。

一時財源が悪いわけではありません。

一度限りの政策には、一時財源を使うことにも合理性があります。

問題は、継続的な政策を一時財源だけで支えることです。

減税についても同じです。

2年間の減税なら、その2年間に生じる税収減をどう補うのかを考える必要があります。

恒久的な減税なら、さらに長期的で安定した財源が重要になります。

日本版DOGEによる租特廃止や歳出削減を減税財源として利用するのであれば、単に何兆円を捻出したという金額だけを見るのではなく、その財政効果が何年間続くのかを確認する必要があります。

財源を考えるときには、

いくらあるのか

と同時に、

いつまで続くのか

を見ること。

これが恒久財源を理解する最も重要なポイントです。

参考

日本経済新聞 2026年9月4日朝刊「日本版DOGE、税優遇廃止は3件どまり 財源捻出、年10万円」

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