仕事と介護の両立とは何か 子育てが終わっても今度は親の介護が始まる理由編

FP
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子どもが成長し、ようやく育児の負担が軽くなった。

これからは仕事にもっと時間を使える。

そう思った頃に始まる可能性があるのが、親の介護です。

介護の難しいところは、いつ始まるのか分かりにくいことです。

昨日まで元気だった親が転倒する。

突然入院する。

認知機能の低下が目立つようになる。

退院後、一人暮らしを続けることが難しくなる。

こうした出来事をきっかけに、それまでの生活が大きく変わることがあります。

長く働く時代には、育児だけでなく介護と仕事をどう両立するかもキャリアを考えるうえで重要になります。

仕事と介護の両立とは何か

仕事と介護の両立とは、親など家族の介護が必要になっても、仕事を辞めずに働き続けられるようにすることです。

介護というと、

食事を作る。

入浴を手伝う。

排せつを介助する。

といった直接的な世話を想像するかもしれません。

しかし実際には、それ以外にも多くの対応があります。

病院へ付き添う。

介護認定の手続きをする。

ケアマネジャーと相談する。

介護サービスを探す。

施設を検討する。

親のお金を管理する。

離れて暮らしていれば帰省する。

こうした仕事が突然、日常生活へ加わります。

会社員としての仕事を続けながら、この介護関連の対応をどう組み合わせるかが両立の課題になります。

ビジネスケアラーとは何か

仕事をしながら家族の介護をする人は、ビジネスケアラーなどと呼ばれます。

重要なのは、介護をしている人が必ずしも高齢者ではないことです。

例えば50代の会社員が80代の親を介護するケースがあります。

50代といえば、会社では管理職や専門職として重要な役割を担っている人も多い年代です。

部下を抱えている。

重要な取引先を担当している。

専門的な仕事を任されている。

そうした時期に介護が始まる可能性があります。

企業にとっても、仕事と介護の両立は個人の家庭問題だけではありません。

経験を積んだ社員が働き続けられるかという人材問題でもあります。

介護は突然始まりやすい

育児と介護には大きな違いがあります。

出産の場合、ある程度は開始時期を予測できます。

育児休業の予定を立てる。

仕事を引き継ぐ。

保育園を探す。

といった準備を進めることができます。

一方、介護は突然始まることがあります。

例えば親が転倒して骨折したとします。

救急搬送されます。

入院します。

手術を受けます。

そして医師から、

退院後は一人暮らしが難しいでしょう。

と言われるかもしれません。

数週間前まで普通に仕事をしていた会社員が、突然、

親をどこで生活させるのか。

誰が世話をするのか。

どの介護サービスを利用するのか。

を考えなければならなくなります。

準備期間が短いことが、仕事との両立を難しくする理由の一つです。

介護は終わる時期も分かりにくい

育児では、子どもの成長に伴って必要な支援が変化していきます。

もちろん育児にも個人差がありますが、

保育園。

小学校。

中学校。

と一定の時間軸を想定できます。

介護は違います。

半年で状況が変わるかもしれません。

5年以上続くかもしれません。

状態が改善することもあれば、徐々に介護量が増えることもあります。

いつまで続くのか分からない状態で、

しばらく自分が頑張ればよい。

と考えると、長期間にわたって負担を抱えることがあります。

介護では短期的な頑張りより、長く続けられる仕組みをつくることが重要です。

介護離職とは何か

家族の介護をするために仕事を辞めることを介護離職といいます。

例えば、

親を一人にできない。

頻繁に病院へ連れて行かなければならない。

会社を何度も休めない。

遠距離介護が難しい。

といった理由から退職を考えることがあります。

仕事を辞めれば時間は増えます。

そのため、

退職すれば介護問題を解決できる。

と思うかもしれません。

しかし、仕事を辞めると給与収入がなくなります。

介護にはお金が必要になることもあります。

さらに前回まで取り上げてきたように、キャリアを中断すれば再就職後の収入などにも影響する可能性があります。

介護が始まった直後に退職を決めるのではなく、まず仕事を続けながら利用できる制度やサービスを確認することが重要です。

自分ですべて介護する必要はない

介護という言葉から、

家族が直接世話をする。

ことを想像する人もいるでしょう。

しかし、仕事と介護を両立するためには、

介護を自分でする。

だけでなく、

介護をマネジメントする。

という考え方が重要です。

介護保険サービスには、

訪問介護。

通所介護。

短期入所。

福祉用具。

住宅改修。

などさまざまな仕組みがあります。

本人の状態や要介護度などによって利用できるサービスは異なります。

家族がすべての介護を直接担うのではなく、専門職やサービスを組み合わせます。

家族は、

必要なサービスを考える。

専門職と連絡を取る。

重要な場面で本人を支える。

といった役割を担います。

参考記事にある手放すという考え方は、介護にも当てはまります。

介護休業は介護だけをする期間とは限らない

仕事と介護を両立するためには、介護休業などの制度があります。

ここで大切なのは、

介護休業中は自分が毎日介護をする。

とだけ考えないことです。

介護が始まった直後には、

要介護認定の手続きをする。

ケアマネジャーと相談する。

利用するサービスを決める。

施設を探す。

家族で役割分担を話し合う。

といったことが必要になります。

つまり介護休業は、自分が介護を抱え込むためではなく、

仕事へ戻った後でも介護を続けられる体制を整える。

ために活用するという考え方が重要です。

介護の仕組みをつくるための時間として利用するのです。

遠距離介護では時間の負担も大きい

親と子どもが離れて暮らしている場合には、遠距離介護という問題があります。

例えば東京で働いている人の親が地方で暮らしているとします。

親の病院へ付き添うために新幹線で帰省する。

介護サービスの担当者と面談するために帰省する。

入退院のたびに帰省する。

こうしたことが続けば、介護そのものだけでなく移動時間も大きな負担になります。

交通費も必要です。

そのため、

毎回自分が現地へ行かなければならないのか。

現地の専門職へ任せられることはないか。

オンラインや電話で対応できないか。

兄弟姉妹と分担できないか。

を考える必要があります。

距離があるほど、本人がすべて対応する方法には限界があります。

会社へ早めに相談する意味

介護について会社へ話すことをためらう人もいます。

家庭の事情を知られたくない。

仕事ができない人だと思われたくない。

重要な仕事から外されるのではないか。

そう考えることもあるでしょう。

しかし、何も伝えないまま突然、

明日休みます。

来週も休みます。

という状態が続けば、本人も職場も対応が難しくなります。

介護が始まった段階で、

どの程度の対応が必要なのか。

利用できる社内制度は何か。

勤務時間を調整できるか。

在宅勤務を利用できるか。

などを確認しておけば、仕事を続ける方法を考えやすくなります。

介護の詳細をすべて職場へ話す必要はありませんが、必要な働き方について早めに相談することには意味があります。

仕事の属人化を減らしておくことも重要

介護が始まってから急いで仕事を引き継ぐのは大変です。

だからこそ、前回まで取り上げた属人化の解消や業務標準化が重要になります。

自分しか知らない仕事。

自分しか対応できない取引先。

自分しか持っていない資料。

こうしたものが多ければ、介護のために急に休むことが難しくなります。

一方、

情報が共有されている。

副担当者がいる。

仕事の手順が標準化されている。

という状態なら、突然の休みにも対応しやすくなります。

介護への備えは、親が要介護状態になってから始めるものだけではありません。

普段から自分がいなくても仕事が回る状態をつくることも備えになります。

50代以降のキャリアでは介護も想定する

若い頃のキャリア設計では、

どの仕事を経験するか。

どの資格を取るか。

いつ管理職になるか。

といったことを考えます。

しかし50代以降まで働くのであれば、家庭側の変化も考える必要があります。

親が高齢になる。

配偶者の親にも介護が必要になる。

場合によっては夫婦双方の親への対応が重なる。

こうした可能性があります。

70歳まで働くことを考えるのであれば、職業人生の後半では介護と仕事が重なる可能性を無視できません。

仕事だけを前提にキャリアを設計するのではなく、

家庭の状況が変わっても続けられる働き方か。

という視点が必要になります。

手放すことが介護継続にもつながる

介護では、

親なのだから自分が面倒を見るべきだ。

人に任せるのは申し訳ない。

という気持ちを持つことがあります。

しかし、自分一人ですべてを抱えれば負担は大きくなります。

仕事を辞める。

自分の生活を犠牲にする。

睡眠時間を減らす。

こうした状態を長期間続けることは簡単ではありません。

介護サービスへ任せる。

家族と分担する。

会社の制度を利用する。

できないことを認める。

こうした手放す選択が必要になります。

すべて自分で行わないことは、介護を放棄することではありません。

介護と自分の生活を長く両立するための方法でもあります。

結論

仕事と介護の両立とは、親など家族の介護が必要になっても、仕事を辞めずに働き続けられるようにすることです。

仕事をしながら家族を介護する人は、ビジネスケアラーなどと呼ばれます。

介護の難しさは、いつ始まり、いつ終わるのか予測しにくいことです。

親の転倒や入院をきっかけに、突然生活が変わることがあります。

そのとき、

自分がすべて介護する。

仕事が無理なら辞める。

という二者択一で考える必要はありません。

介護保険サービスを利用する。

家族で役割を分担する。

介護休業などを利用して体制を整える。

会社と働き方を相談する。

仕事の属人化を減らしておく。

さまざまな方法を組み合わせることができます。

長く働く時代には、育児が終われば家庭の問題がなくなるとは限りません。

今度は親の介護と仕事が重なる可能性があります。

だからこそ重要なのは、自分一人で全部を抱えることではありません。

人や制度へ任せられるものを手放し、自分にしかできない役割へ力を使うことです。

仕事と介護を両立するとは、すべてを自分でこなすことではなく、長く続けられる仕組みをつくることなのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月3日朝刊 働き続けるため「手放す」選択も

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