毎月分配型投資信託はなぜ税金で不利になりやすいのか 分配金を受け取るより自分で必要額を解約する方が資産を残しやすい仕組み編

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

毎月一定のお金を受け取れる毎月分配型投資信託には根強い人気があります。

特に退職後の生活では、年金のように毎月お金が入ってくる仕組みは魅力的に見えます。

ところが、同じ投資信託で運用し、同じ金額を毎月受け取るのであれば、投資信託から分配金を受け取るより、自分で必要な金額だけ解約する方が税制上有利になることがあります。

ポイントになるのが、分配金と解約代金では税金がかかる範囲が違うことです。

毎月分配型投資信託とは何か

投資信託では、運用によって得た収益などを投資家に分配することがあります。

そのなかでも、原則として毎月決算を行い、分配金を支払うタイプが毎月分配型投資信託です。

例えば、毎月4万円程度の分配金を受け取れれば、投資家から見ると毎月一定の収入があるように感じられます。

しかし、投資信託からお金を受け取る方法は分配金だけではありません。

分配をあまり行わない投資信託を保有しながら、必要なときに自分で一部を解約する方法もあります。

つまり、

分配金として4万円を受け取る

自分で投資信託を売却して4万円を受け取る

という二つの方法が考えられます。

一見すると同じ4万円ですが、税金の計算は同じではありません。

普通分配金は全額が課税対象になる

投資信託の分配金には、大きく普通分配金と特別分配金があります。

普通分配金は、投資家にとって利益に当たる部分です。

そのため、普通分配金には原則として約20パーセントの税金がかかります。

例えば5万円の普通分配金が支払われる場合を考えてみます。

税率を約20パーセントとして単純化すると、

分配金5万円

税金1万円

手取り4万円

となります。

重要なのは、5万円の普通分配金の全額が利益として課税対象になることです。

ここが、自分で投資信託を解約する場合との大きな違いです。

自分で解約すると解約額すべてに税金がかかるわけではない

投資信託を自分で一部解約した場合、受け取った金額すべてが利益になるわけではありません。

投資信託の中には、自分が投資した元本と運用によって増えた利益が含まれています。

課税対象になるのは基本的に利益部分です。

例えば1500万円を投資し、運用によって5万円増えて1505万円になったとします。

この段階では、

元本1500万円

利益5万円

合計1505万円

という状態です。

利益は投資信託全体の約0.33パーセントしかありません。

ここから約4万円分を解約したとしても、その4万円すべてが利益になるわけではありません。

大部分は元本部分であり、利益に相当する部分だけが課税対象になります。

そのため、分配金として5万円を受け取り税金を差し引いて4万円を手元に残す場合と比べ、自分で解約して手取り4万円を作る場合の方が、その時点で支払う税金を少なくできることがあります。

税金を払わなくてよいのではなく先送りできる

ここで注意したいのは、自分で解約すれば税金を払わなくてよいという話ではないことです。

投資信託の値上がりによって利益が蓄積していれば、最終的に売却するときには、その利益部分について課税されます。

違いは税金を支払う時期です。

毎月普通分配金を受け取れば、そのたびに利益が投資信託の外へ出され、税金が差し引かれます。

一方、分配せずに投資信託の中で運用を続ければ、利益を運用に回すことができます。

そして必要な金額だけ解約します。

この結果、税金の支払いを将来へ繰り延べやすくなります。

税金を後で払うというだけでも、その間のお金を運用に使えるため長期では大きな違いになります。

複利効果にも差が出る

毎月分配型にはもう一つ重要な問題があります。

利益を頻繁に投資信託の外へ出してしまうことです。

例えば100万円を運用して5万円の利益が出たとします。

5万円を分配してしまえば、再び100万円を運用することになります。

一方、分配しなければ105万円を次の運用に回せます。

次に利益が出れば、最初の100万円だけでなく、以前に得た5万円にも利益が発生する可能性があります。

これが複利効果です。

長期間になるほど、この違いが積み重なります。

毎月分配型では、

利益が出る

分配する

税金を払う

残った資産で運用する

という流れになりやすくなります。

これに対して分配を抑えた投資信託では、

利益が出る

投資信託の中に残す

再び運用する

必要な金額だけ解約する

という運用ができます。

税金の繰り延べと複利効果が同時に働くことがポイントです。

20年では数十万円の差になることもある

日本経済新聞の記事では、1500万円を元本として毎月5万円の利益が出るケースについて税理士による試算が紹介されています。

毎月分配型では5万円を分配し、税率を2割として手取り4万円を受け取ります。

同じ利回りと分配額が20年間続いたと仮定すると、毎月分配型では評価額1500万円と手取り累計960万円を合わせて2460万円となります。

一方、自分で必要額を解約して手取り4万円を確保する方法では、20年後の評価額が約1784万円になります。

最終的に投資信託を売却した後の金額と、それまでに受け取った960万円を合わせると約2543万円です。

その差は約83万円になります。

受け取っている毎月の手取りは同じ4万円です。

それでも、どのような方法で4万円を作るかによって20年後の資産に差が生まれるわけです。

30年になると差はさらに広がる

運用期間が長くなるほど、税金を繰り延べる効果と複利効果は大きくなります。

記事の試算では、30年間運用すると手取り額の差は約203万円まで広がります。

短期間では小さく見える違いでも、

毎月課税されるのか

利益を運用に残せるのか

その利益からさらに利益が生まれるのか

という違いが何十年も積み重なるからです。

長期投資では利回りだけを見るのではなく、税金をいつ払うのかという視点も重要になります。

特別分配金なら税金はかからない

もっとも、毎月分配型の分配金すべてに税金がかかるわけではありません。

投資信託では運用状況などによって、特別分配金が支払われることがあります。

特別分配金は元本払戻金とも呼ばれます。

これは利益を受け取っているのではなく、自分が投資した元本の一部が戻ってきているものです。

そのため、特別分配金には税金がかかりません。

ただし、非課税だから得をしているわけではありません。

自分のお金が戻ってきているだけだからです。

毎月多額の分配金を受け取っているからといって、その投資信託がそれだけの利益を稼いでいるとは限らない点には注意が必要です。

NISAでは毎月分配型を買えない

NISAでは運用益や売却益などが非課税になります。

そのため、課税口座で問題になる税金の繰り延べという論点は基本的になくなります。

ただし、現在のNISAでは毎月分配型の投資信託は成長投資枠の対象から除外されています。

長期の資産形成では、利益を頻繁に分配するより、投資信託の中で再投資する方が資産形成に向いているという制度設計になっているためです。

老後に毎月一定額のお金が必要であれば、必ずしも毎月分配型を利用する必要はありません。

資産形成に適した投資信託を保有しながら、必要な金額を毎月あるいは定期的に売却する方法もあります。

毎月お金を受け取れることと有利な運用は別問題

毎月分配型投資信託が支持される最大の理由は分かりやすさでしょう。

毎月4万円の分配金が振り込まれれば、運用収入を得ているという実感があります。

一方、自分で投資信託を毎月4万円ずつ売却すると、資産を取り崩しているように感じるかもしれません。

しかし経済的には、分配金も投資信託の資産から支払われるお金です。

重要なのは、お金を分配金という名前で受け取るかどうかではありません。

運用後に自分の資産がどれだけ残るかです。

特に長期運用では、税金の支払時期と複利効果まで含めて考える必要があります。

結論

毎月分配型投資信託には、定期的にお金を受け取れる分かりやすさがあります。

しかし普通分配金は全額が課税対象になるのに対し、自分で投資信託を一部解約する場合は、基本的に売却額のうち利益に相当する部分が課税対象になります。

そのため、同じ手取り額を確保する場合でも、自分で必要額を解約する方が税金を将来へ繰り延べやすくなります。

さらに、利益を投資信託の中に残して運用すれば複利効果も期待できます。

毎月4万円を受け取れるという結果だけを見れば両者は同じように見えます。

しかし20年、30年という長期になると、税金をいつ払うのか、利益を運用に残せるのかによって最終的な資産額には大きな差が生じる可能性があります。

老後に毎月一定額を受け取りたい場合でも、毎月分配型を選ぶ方法だけではありません。

分配を抑えて運用を続けながら、自分で必要額を定期的に取り崩すという選択肢も含めて考えることが重要です。

参考

日本経済新聞 2026年9月1日朝刊 毎月分配型、税に落とし穴

タイトルとURLをコピーしました