退職一時金と退職年金は何が違うのか 同じ退職金でも一括と分割で受け取り方が違う仕組み編

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会社員が退職するときに受け取るお金を、一般に退職金と呼びます。

しかし、退職金には大きく分けて二つの形があります。

一つは、退職するときにまとまった金額を一度に受け取る退職一時金です。

もう一つは、退職後に一定期間にわたって継続的に受け取る退職年金です。

どちらも長年働いた社員の退職後を支えるためのお金ですが、受け取り方が大きく異なります。

この違いは、老後の生活設計にも影響します。

退職一時金とは何か

退職一時金とは、社員が会社を退職するときに、まとまった金額を一括して受け取る制度です。

たとえば60歳で定年を迎えたときに、

2000万円

といったまとまった金額を一度に受け取ります。

金額の決め方は企業によって異なります。

勤続年数や役職、退職時の給与などをもとに計算する会社もあれば、勤務実績などをポイント化して退職金を計算する会社もあります。

退職理由によって金額が変わる場合もあります。

定年退職や会社都合退職と、自己都合退職では支給額が異なる制度もあります。

つまり退職一時金は、会社が定めた退職金規程などに基づいて計算され、退職時にまとめて支払われる仕組みです。

退職年金とは何か

退職年金は、退職後に一定期間または生涯にわたって継続的に受け取る仕組みです。

たとえば、

毎年120万円を10年間受け取る

といった形です。

退職時に1200万円を一度に受け取るのではなく、毎年少しずつ受け取ります。

公的年金とは別の仕組みです。

会社員の場合、老後には原則として国民年金や厚生年金といった公的年金を受け取ります。

企業が設ける企業年金は、それに上乗せする老後資金として機能します。

そのため老後には、

公的年金

企業年金

自分の貯蓄

などを組み合わせて生活することになります。

一括受取と年金受取ではお金の流れが違う

退職一時金と退職年金の最大の違いは、お金を受け取るタイミングです。

退職一時金なら、退職した時点でまとまった資金を手にできます。

一方、退職年金では、将来にわたって少しずつ受け取ります。

たとえば退職給付として2000万円相当の資金があるとします。

一時金なら、

退職時にまとまった資金を受け取る

という形になります。

年金なら、

毎年一定額ずつ受け取る

という形になります。

実際の受取額や期間、年金と一時金を選択できるかどうかは制度によって異なりますが、基本的な違いはこの受け取り方にあります。

退職一時金はまとまった支出に使いやすい

退職一時金のメリットは、まとまった資金を自由に使えることです。

たとえば定年時に住宅ローンが500万円残っていたとします。

2000万円の退職一時金を受け取れば、その一部を使って住宅ローンを完済することができます。

ほかにも、

住宅のリフォーム

自動車の買い替え

子どもへの資金援助

老後の医療や介護への備え

などに利用できます。

まとまった資金を必要とする人にとって、一時金は使いやすい仕組みです。

一時金には使いすぎるリスクもある

一方、まとまった金額を一度に受け取ることには注意点もあります。

2000万円という大きな金額が銀行口座に入ると、自分の資産が急に増えたように感じます。

そこで住宅のリフォームや旅行、自動車の購入などに多額のお金を使ってしまうことがあります。

しかし退職金は、20年や30年に及ぶ可能性がある老後生活を支える重要な資金です。

退職直後に使いすぎれば、その後の生活資金が不足する可能性があります。

一時金を受け取る場合には、

いくら使うのか

いくら残すのか

いくら運用するのか

を考える必要があります。

退職年金は生活費として使いやすい

退職年金には、一度に使いすぎにくいという特徴があります。

毎年一定額を受け取るので、給与に近い感覚で生活費に充てることができます。

現役時代は毎月給与が入ってきます。

ところが退職すると給与収入がなくなります。

その代わりに、

公的年金

企業年金

などが定期的に入ってくれば、家計を管理しやすくなります。

まとまった資産を自分で取り崩していくことに不安を感じる人には、年金方式が向いている場合があります。

長生きするほど老後資金の管理が重要になる

老後資金を考えるうえで難しいのは、自分が何歳まで生きるのか分からないことです。

60歳で退職して90歳まで生活するとすれば、30年間の生活資金が必要になります。

一時金だけで老後資金を管理する場合、

毎年いくら取り崩してよいのか

を自分で判断しなければなりません。

使いすぎれば資金が早くなくなります。

反対に使うことを恐れすぎると、必要以上に資産を残してしまう可能性もあります。

年金方式には、一定額を定期的に受け取ることで、この資産管理をしやすくする役割があります。

退職年金にも種類がある

企業年金は一つの制度ではありません。

代表的なものとして、

確定給付企業年金

企業型確定拠出年金

があります。

確定給付企業年金は、加入期間などに基づいて、あらかじめ給付の算定方法が決まっている仕組みです。

一方、企業型確定拠出年金では会社が掛金を拠出し、社員自身が運用します。

将来受け取る金額は、拠出された掛金と運用結果によって変わります。

同じ企業年金でも、

将来の給付を中心に設計する制度

と、

現在の掛金を中心に設計する制度

があるのです。

年金でも一時金を選べる場合がある

ここで少し分かりにくい点があります。

企業年金だから必ず年金として受け取らなければならないとは限りません。

制度によっては、

全額を年金として受け取る

全額を一時金として受け取る

一部を一時金にして残りを年金として受け取る

といった選択ができる場合があります。

そのため、

退職一時金制度と企業年金制度の違い

と、

実際に一時金で受け取るか年金で受け取るか

は分けて考える必要があります。

自分の勤務先に企業年金がある場合には、どのような受け取り方が認められているのかを確認することが重要です。

一時金と年金では税金の仕組みも違う

受け取り方を考えるときには税金も重要です。

一定の要件を満たして退職金を一時金として受け取る場合には、退職所得として扱われ、退職所得控除などの仕組みがあります。

一方、企業年金を年金として受け取る場合には、公的年金等に係る雑所得として課税されるものがあります。

つまり、

同じ老後資金だから税金も同じ

ではありません。

一時金として受け取るのか、年金として受け取るのかによって税務上の扱いが変わることがあります。

さらに公的年金やほかの退職金の受け取り状況などによっても結果は変わります。

そのため、単純に受取総額だけで有利不利を判断することはできません。

一時金と年金を組み合わせる方法もある

一時金と年金は、どちらか一方だけが優れているわけではありません。

老後には、まとまった資金と毎年の生活費の両方が必要だからです。

たとえば退職時に住宅ローンが残っている人なら、その返済に必要な分を一時金として確保する考え方があります。

一方、日常生活費については、公的年金や企業年金で継続的に受け取る方法があります。

つまり、

まとまった支出は一時金

日常的な生活費は年金

という役割分担です。

制度上選択できる場合には、自分の老後の支出予定に合わせて組み合わせることが重要になります。

老後資金は受取総額だけで判断しない

退職時には、

一時金ならいくらもらえるのか

年金なら総額いくらになるのか

に目が向きがちです。

しかし老後資金では、金額だけではなく受け取る時期も重要です。

退職直後には住宅ローンの返済や住宅修繕などでまとまった資金が必要になるかもしれません。

一方、70代や80代になれば、医療費や介護費などが増える可能性があります。

重要なのは、

いつ

いくら

何のために

お金が必要になるのかを考えることです。

そのうえで一時金と年金のどちらが自分の生活設計に合っているのかを判断します。

結論

退職一時金と退職年金は、どちらも会社員の退職後を支える重要な仕組みですが、お金の受け取り方が大きく異なります。

退職一時金は、退職するときにまとまった金額を受け取る仕組みです。

住宅ローンの返済や住宅のリフォームなど、大きな支出に対応しやすい一方、自分で長期間にわたって資金を管理する必要があります。

退職年金は、退職後に一定期間などにわたって継続的に受け取る仕組みです。

毎年の生活費として利用しやすく、老後資金を一度に使いすぎることを防ぎやすい特徴があります。

さらに企業年金には確定給付企業年金や企業型確定拠出年金などがあり、制度によっては一時金として受け取る選択肢もあります。

そのため重要なのは、

一時金と年金のどちらが得か

だけを考えることではありません。

自分の公的年金、貯蓄、住宅ローン、老後の支出予定などを合わせて考え、どの時期にどれだけのお金が必要になるのかを見ることです。

退職金は、受取総額だけではなく、受け取り方まで含めて老後の生活設計を考える必要があります。

参考

日本経済新聞 2026年8月31日夕刊 退職金、なくなるの? 人材流動化で見直しも

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