時短勤務者の仕事を同僚に上乗せしてはいけないのはなぜか 制度を作るだけでは職場が疲弊する理由編

人生100年時代
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時短勤務制度を導入すると、育児や介護をしながら働き続けやすくなります。

しかし、制度を作るだけでは仕事と生活の両立がうまくいくとは限りません。

例えば、1日8時間働いていた社員が6時間勤務になったとします。

これまで8時間で担当していた仕事を6時間ですべて処理できなければ、残った仕事を誰かが担当しなければなりません。

そこで、

時短勤務者ができない仕事はフルタイム社員が対応する

という運用を続けると、別の問題が生まれます。

時短勤務者は早く帰れるようになっても、その分だけ同僚の残業が増えてしまうからです。

時短勤務制度を持続可能なものにするためには、単に仕事を別の社員へ移すのではなく、職場全体の仕事量や仕事の進め方を見直す必要があります。

業務のしわ寄せとは何か

時短勤務者の仕事を周囲の社員が引き受ける状態は、一般に業務のしわ寄せと呼ばれることがあります。

例えば、ある部署に5人の社員がいたとします。

全員が1日8時間働いていれば、

5人掛ける8時間

で、

1日40時間

の労働時間があります。

そのうち1人が1日6時間の時短勤務になれば、部署全体では38時間になります。

それにもかかわらず、部署として処理する仕事量が以前とまったく同じなら、減った2時間分をどこかで補わなければなりません。

残りの4人が30分ずつ長く働けば、計算上は2時間を補えます。

しかし、これを毎日続ければ、時短勤務者を支えるために他の社員が残業する構造になります。

フルタイム社員の負担が増える

時短勤務者へのしわ寄せは、単純な仕事量だけの問題ではありません。

特に負担になりやすいのが、時短勤務者が退社した後の対応です。

例えば時短勤務者が午後4時に退社するとします。

午後4時以降に、

顧客から電話が来る

上司から急な依頼が入る

トラブルが発生する

会議が開かれる

といったことがあれば、フルタイム社員が対応することになります。

たまに発生する程度なら、大きな問題にならないかもしれません。

しかし、それが毎日のように続けば、

なぜ自分ばかり対応しなければならないのか

という不満につながります。

不公平感が生まれる理由

時短勤務制度そのものに反対していなくても、実際の仕事の分担が不公平だと感じれば不満は生まれます。

例えば、

時短勤務者は午後4時に帰る

残った仕事を自分が処理する

自分の給料はほとんど変わらない

自分の残業だけ増える

という状態が続いたとします。

すると、

制度を利用する人だけが得をしている

と感じる人が出てくる可能性があります。

もちろん、時短勤務者自身も賃金が減るなどの負担を抱えている場合があります。

しかし、職場で重要なのは誰が得をしているかを競うことではありません。

制度を利用する人と利用しない人の双方が無理なく働ける仕組みにすることです。

善意だけでは続かない

育児中の同僚が困っていれば、

今日は私が対応します

と助けてくれる社員はいるでしょう。

職場で互いに助け合うことは重要です。

しかし、それを制度の前提にしてはいけません。

毎日のように誰かが、

善意で残業する

善意で顧客対応を引き受ける

善意で仕事を持ち帰る

という状態では、長期間続けることが難しくなります。

最初は協力していた社員も、負担が積み重なれば疲弊します。

時短勤務制度を持続可能にするには、個人の善意ではなく組織の仕組みとして対応する必要があります。

不満が時短勤務者本人へ向かう

業務のしわ寄せで特に注意したいのは、本来は会社の仕事設計の問題なのに、時短勤務者本人への不満に変わってしまうことです。

例えば、

あの人が早く帰るから自分が残業している

あの人の仕事をいつも自分がやっている

という感情です。

しかし、時短勤務制度を認めているのは会社です。

会社が制度を導入した以上、その勤務時間で業務が成立するように仕事を設計する必要があります。

時短勤務者本人に、

周囲へ迷惑をかけないように8時間分の仕事を6時間で終わらせてください

と求めるだけでは解決になりません。

時短勤務者自身も追い詰められる

業務のしわ寄せは、フルタイム社員だけでなく時短勤務者にも負担を与えます。

周囲が自分の仕事を引き受けている姿を見れば、

申し訳ない

迷惑をかけている

自分だけ早く帰りにくい

と感じることがあります。

すると、本来午後4時に退社する制度なのに、

少しだけ残業する

昼休みも仕事をする

家に帰ってからメールを見る

といった行動につながることがあります。

これでは時短勤務制度を利用している意味が薄れてしまいます。

制度を利用する人が周囲へ罪悪感を持たなくてもよい仕組みにする必要があります。

仕事そのものを減らす

業務のしわ寄せを防ぐ最も重要な考え方の一つが、

仕事そのものを減らす

ことです。

例えば時短勤務によって部署全体の労働時間が減ったのであれば、

不要な会議をなくす

使われていない資料を廃止する

承認手続きを簡素化する

報告回数を減らす

定型業務を自動化する

といった方法を検討します。

これまで10時間必要だった仕事を、誰かに10時間分押し付けるのではありません。

業務改善によって8時間で処理できるようにする発想です。

本当に必要な仕事かを確認する

会社の仕事には、

昔からやっているから

という理由だけで続いているものがあります。

例えば毎週作成している報告書があったとします。

作成には2時間かかります。

ところが調べてみると、ほとんど誰も読んでいませんでした。

この場合、

誰がその2時間を担当するか

を議論するより、

そもそも報告書を廃止できないか

を考えた方が効果的です。

時短勤務者が増えることは、こうした仕事を見直すきっかけになります。

仕事をチームで共有する

すべての仕事を減らせるわけではありません。

必要な仕事については、特定の社員だけに依存しない仕組みを作る必要があります。

例えば顧客対応なら、

担当者しか顧客情報を知らない

状態を避けます。

顧客とのやり取りを共有する。

対応履歴を残す。

副担当者を決める。

緊急時の対応ルールを作る。

こうすれば、時短勤務者が退社した後に対応が必要になっても、特定の同僚だけへ負担が集中しにくくなります。

管理職が仕事量を把握する

業務のしわ寄せを防ぐうえで、管理職の役割は非常に重要です。

例えば時短勤務者から仕事を一つ減らし、その仕事をAさんへ渡したとします。

しかしAさんがすでに仕事を大量に抱えていれば、単なる負担の移動になります。

管理職は、

誰が何を担当しているのか

どれくらい時間がかかっているのか

どこに余力があるのか

どの仕事を減らせるのか

を把握する必要があります。

仕事を人から人へ移すだけではなく、部署全体の仕事量を管理することが求められます。

支援する社員にも正式な評価が必要になる

どうしても周囲の社員が時短勤務者を支援する必要がある場合もあります。

その場合、

助けてくれて当然

としてはいけません。

例えば育児中の社員を支援する担当者を決め、

業務上の役割として位置付ける

手当を支給する

人事評価へ反映する

といった方法が考えられます。

参考記事で紹介された企業でも、子育て中の社員を支援する社員を指定し、手当を支給する制度を試験導入しています。

支援を個人の善意ではなく、正式な仕事として扱う考え方です。

時短勤務者だけの問題ではない

業務のしわ寄せという問題は、育児時短勤務だけで起こるものではありません。

例えば、

介護

病気

長期休暇

研修

出張

退職

などでも、社員が一時的に職場を離れることがあります。

一人がいなくなるだけで残った社員が大量の残業をしなければならない職場なら、そもそも業務体制に問題がある可能性があります。

時短勤務者がいることで、それまで隠れていた職場の問題が見えることがあります。

制度利用者を増やすには周囲の納得が必要

時短勤務制度を利用しやすくするには、利用者本人だけを支援しても十分ではありません。

周囲の社員が、

この制度があっても自分の負担は過度に増えない

と感じられることが重要です。

そうでなければ、制度上は時短勤務を利用できても、

周囲に迷惑をかけるから利用しない

という人が出てきます。

制度を利用する人と支える人を対立させないことが重要です。

そのためには、会社が仕事量や人員配置を調整する必要があります。

結論

時短勤務者の仕事をそのまま同僚へ上乗せするだけでは、時短勤務制度を長く続けることは難しくなります。

時短勤務者は早く帰れるようになっても、その分だけフルタイム社員の残業が増えれば、職場全体として問題を移動させただけだからです。

負担が続けば、

不公平感

疲労

制度利用者への不満

離職

につながる可能性があります。

そして時短勤務者自身も、

周囲に迷惑をかけている

という罪悪感を抱えやすくなります。

必要なのは、

時短勤務者の仕事を誰に渡すか

だけを考えることではありません。

不要な仕事を減らす。

仕事を共有する。

業務を標準化する。

管理職が仕事量を調整する。

支援する社員の役割も正式に評価する。

こうした職場全体の仕事の再設計が必要です。

時短勤務制度を本当に機能させるためには、一人だけ早く帰れる職場を作るのではなく、勤務時間が違う人が一緒に働いても誰かに過度な負担が集中しない職場を作ることが重要なのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月31日朝刊 「時短」勤務者は重要な戦力 人員確保に効果 管理職の意識変わる

日本経済新聞 2026年8月31日朝刊 シフトを選べる企業も

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