中古住宅を探していると、新築住宅と比べてかなり安い物件が見つかることがあります。
特に築年数の古い戸建て住宅では、土地を含めても比較的低い価格で売り出されているケースがあります。
しかし、中古住宅では購入価格だけを見て安いと判断することはできません。
重要なポイントの一つが住宅の耐震性です。
古い住宅の中には、現在とは異なる耐震基準で建てられているものがあります。
その場合、安心して長く住むためには耐震診断を行い、必要に応じて耐震改修をすることになります。
すると、物件価格は安くても、購入後の改修費を含めると想定以上の費用になることがあります。
新築住宅の供給が減り、中古住宅の活用が重要になる時代だからこそ、住宅価格と耐震改修費をセットで考える必要があります。
耐震性とは何か
住宅の耐震性とは、地震による揺れに対して建物がどの程度耐えられるかという性能です。
日本は地震が多い国です。
そのため、住宅を建てる際には建築基準法などによって一定の耐震性能が求められています。
ただし、耐震性という言葉は、地震が起きても建物が全く壊れないことを意味するわけではありません。
大きな地震では建物が損傷する可能性があります。
重要なのは、建物が急激に倒壊することなどを防ぎ、居住者の生命を守ることです。
住宅を購入するときには、
建物が何年に建てられたのか
どの耐震基準で建てられたのか
その後どのような改修が行われたのか
を確認することが重要になります。
耐震基準とは何か
耐震基準とは、建物を建築するときに求められる地震への強さについての基準です。
日本では大きな地震被害などを踏まえ、建築基準法の耐震基準が見直されてきました。
そのため、すべての中古住宅が同じ基準で建てられているわけではありません。
築年数によって、建築された当時に適用された基準が異なります。
中古住宅を購入するときに築年数が重要になる理由の一つがここにあります。
単に建物が古いから問題なのではありません。
どの時代の耐震基準に基づいて設計された住宅なのかが重要なのです。
旧耐震と新耐震は何が違うのか
中古住宅でよく使われる言葉に旧耐震と新耐震があります。
大きな境目となるのが1981年です。
1981年6月1日から新しい耐震基準が適用されました。
これより前の基準は一般に旧耐震基準、それ以降は新耐震基準と呼ばれます。
旧耐震基準では、中規模程度の地震に対して建物が大きな損傷を受けないことなどが考え方の中心でした。
新耐震基準では、それに加えて大規模な地震でも建物が倒壊や崩壊し、人命に重大な被害が生じることを防ぐという考え方が強化されています。
そのため、中古住宅を見る際には1981年前後が一つの重要な目安になります。
ただし、1981年以降に完成した住宅なら必ず新耐震基準とは限りません。
基準の適用は原則として建築確認などの時期との関係で決まるため、完成年だけで判断せず、建築確認の時期などを確認する必要があります。
木造住宅では2000年も重要になる
戸建ての中古住宅、特に木造住宅を見る場合には、1981年だけを確認すれば十分とは限りません。
2000年にも木造住宅に関する基準が強化されています。
地盤に応じた基礎の設計や、柱と梁などをつなぐ接合部、耐力壁の配置などについて、より具体的な考え方が取り入れられました。
そのため、木造住宅では、
1981年以前
1981年以降
2000年以降
という建築時期の違いが住宅の耐震性を考える一つの材料になります。
もちろん、2000年より前の住宅だから危険、2000年以降なら絶対に安全という意味ではありません。
実際の耐震性は建物の構造、施工状態、劣化状況、増改築の有無などによって変わります。
だからこそ、古い住宅では築年数だけで判断するのではなく、実際の建物を調べる必要があります。
耐震診断とは何か
耐震診断とは、建物が地震に対してどの程度の耐震性能を持っているのかを調べることです。
特に古い木造住宅では重要になります。
耐震診断では、
建物の構造
壁の配置
基礎の状態
接合部
建物の劣化状況
屋根の重さ
などを確認し、地震に対する強さを評価します。
外から建物を見るだけでは分からないこともあります。
例えば壁が十分にあるように見えても、その配置のバランスが悪ければ地震時に建物がねじれる可能性があります。
また、設計時には一定の耐震性があった住宅でも、長期間の雨漏りなどによって柱や土台が腐食していれば、耐震性能が低下している可能性があります。
そのため、中古住宅では設計時の性能と現在の性能を分けて考える必要があります。
耐震改修とは何をするのか
耐震診断の結果、耐震性が不足していると判断された場合には耐震改修を検討します。
代表的なのが壁の補強です。
建物の揺れに抵抗する耐力壁を増やしたり、既存の壁を補強したりします。
柱と梁、柱と基礎などの接合部分を金物で補強する場合もあります。
基礎そのものを補強することもあります。
屋根が重い場合には、より軽い材料へ変更して建物にかかる負担を減らす方法もあります。
ただし、必要な工事は住宅ごとに違います。
一部の壁を補強するだけで済む住宅もあれば、基礎や構造部分まで大規模な工事が必要になる住宅もあります。
そのため、耐震改修費を物件を見るだけで正確に判断することは難しいのです。
安い中古住宅でも総額では高くなる
中古住宅を購入するときに注意したいのが、物件価格と耐震改修費の関係です。
例えば新築住宅が5000万円、中古住宅が3000万円だったとします。
価格だけを見ると中古住宅の方が2000万円安く見えます。
しかし中古住宅について、
耐震改修
断熱改修
屋根や外壁の修繕
水回りの交換
などが必要になれば、購入後に多額の費用が発生します。
仮に合計1200万円の改修費が必要なら、実質的な住宅取得費は4200万円です。
さらに仲介手数料や登記費用などの諸費用もあります。
したがって、
新築5000万円
中古3000万円
という販売価格だけを比較しても、本当の価格差は分かりません。
中古住宅では、住める状態にするまでいくらかかるのかを見る必要があります。
耐震改修とリフォームは同じではない
中古住宅を購入するときには、リフォームという言葉にも注意が必要です。
室内がきれいにリフォームされているからといって、耐震性まで改善されているとは限りません。
例えば、
壁紙を張り替える
フローリングを交換する
キッチンを新品にする
浴室を交換する
といった工事をすれば、住宅は新しく見えます。
しかし、建物の基礎や柱、耐力壁などが補強されていなければ、耐震性能は基本的に別の問題です。
中古住宅では、
見た目がきれいか
と
構造的に安全か
を分けて確認する必要があります。
特にリノベーション済み物件では、どのような工事が行われたのかを確認することが重要です。
耐震性だけを見ればよいわけではない
もちろん、中古住宅を選ぶときに耐震性だけ確認すればよいわけではありません。
住宅にはさまざまな性能があります。
例えば、
断熱性能
雨漏りの有無
屋根や外壁の状態
給排水管の状態
シロアリ被害
設備の老朽化
などがあります。
耐震改修をするために壁や床を取り外すのであれば、同じタイミングで断熱改修や配管交換を行った方が効率的な場合もあります。
そのため、中古住宅の改修では工事を一つずつ考えるのではなく、住宅全体を見て改修計画を作ることが重要になります。
新築不足時代ほど耐震診断が重要になる
これまで新築住宅が豊富に供給されていた時代には、古い住宅を避けて新築を選ぶことが比較的容易でした。
しかし、新築住宅の供給が減り、価格が高くなれば、中古住宅を検討する人が増えます。
すると、築年数の古い住宅も住宅購入の選択肢に入ってきます。
そこで重要になるのが、
古い住宅だから買わない
という判断ではなく、
現在どの程度の耐震性があり、いくらかければ必要な性能まで改善できるのか
という判断です。
適切な耐震改修を行えば、既存住宅を長く利用できる場合があります。
一方、改修費が非常に高額になる住宅であれば、購入価格が安くても経済的とは限りません。
中古住宅を活用する時代には、住宅を価格だけではなく性能と改修費から評価することが必要になります。
結論
住宅の耐震性とは、地震の揺れに対して建物がどの程度耐えられるかという性能です。
中古住宅では、建てられた時期によって適用された耐震基準が異なります。
大きな区切りとなるのが1981年です。
1981年6月1日から新耐震基準が適用され、それ以前の旧耐震基準とは地震に対する考え方が異なります。
木造住宅では2000年の基準強化も一つの重要な目安になります。
ただし、築年数だけで住宅の安全性を判断することはできません。
設計時には十分な耐震性があっても、雨漏りや腐食などによって現在の性能が低下している可能性があります。
そこで古い中古住宅では耐震診断を行い、必要に応じて耐震改修を検討することが重要になります。
耐震改修には、壁や接合部、基礎の補強などが必要になる場合があり、住宅の状態によって費用は大きく変わります。
そのため、物件価格が安い中古住宅が必ずしも経済的とは限りません。
住宅購入価格に耐震改修費、断熱改修費、設備交換費などを加え、実際に安心して住める状態になるまでの総額で比較する必要があります。
新築不足によって中古住宅の役割が大きくなるほど、耐震性を正しく見極める重要性も高まります。
これからの中古住宅選びでは、築年数や販売価格だけを見るのではなく、現在の建物性能を確認し、必要な改修費まで含めて住宅の価値を判断することが重要なのです。
参考
日本経済新聞 2026年8月29日 朝刊 新築不足時代の住宅選び 立地や資金計画を見直し