会社では通常、年度が始まる前に1年間の売上や利益について予算を作成します。
4月から翌年3月までを事業年度とする会社であれば、年度開始前に12カ月分の売上や費用、利益などを予測して予算を作ります。
しかし、実際の経営環境は予算を作ったときの想定通りに動くとは限りません。
販売数量が予想以上に増えることもあれば、原材料価格の上昇や市場環境の変化によって業績が悪化することもあります。
そこで、当初の年度予算だけを見るのではなく、最新の実績や経営環境を反映しながら将来の見通しを継続的に更新していく考え方があります。
それがローリングフォーキャストです。
なお、参考記事は予実管理と具体的なアクションへの落とし込みを中心に説明しており、ローリングフォーキャスト自体については直接説明していません。
ここでは参考記事の予実管理の考え方を踏まえながら、ローリングフォーキャストの一般的な仕組みを整理します。
年度予算との違い
年度予算は、通常、一定期間について事前に作成します。
たとえば4月から翌年3月までについて、月ごとの売上や費用、利益を予算として設定します。
そして実績が出るたびに予算と比較します。
4月の売上予算が1000万円で実績が900万円なら、100万円の未達です。
5月も同じように予算と実績を比較します。
年度予算は、会社が当初設定した目標として重要です。
一方、ローリングフォーキャストでは、時間の経過とともに将来予測を更新していきます。
たとえば4月の実績が確定したら、その実績や最新の情報を使って5月以降の予測を見直します。
さらに5月の実績が確定したら、6月以降をもう一度予測します。
このように、新しい情報が入るたびに将来の見通しを更新していくところに特徴があります。
予算と予測は同じではない
ここで重要なのが、予算と予測を区別することです。
予算は、会社が達成しようとする目標として使われます。
一方、予測は、現在の状況が続いた場合に将来どうなりそうなのかを見るものです。
たとえば年間売上予算が1億2000万円だったとします。
しかし年度開始後、主要商品の需要が想定以上に落ち込みました。
最新の状況から考えると、年間売上は1億円程度になりそうだとします。
この場合、予算は1億2000万円のままでも、最新の予測は1億円ということがあります。
予算を安易に1億円へ引き下げてしまうと、当初の目標との差が見えにくくなります。
そこで、目標としての予算と、現時点で予想される将来の数字を分けて管理することに意味があります。
最新実績を反映する方法
ローリングフォーキャストでは、実績が確定するたびに将来予測へ反映します。
たとえば4月から翌年3月までの年度について、毎月1000万円、年間1億2000万円の売上を予算としていたとします。
4月の実績が800万円だったとします。
単純に考えれば、4月時点ですでに200万円の未達です。
しかし重要なのは、200万円の未達を確認するだけではありません。
なぜ売上が不足したのかを調べます。
一時的な問題なのか。
今後も続く問題なのか。
ここによって将来予測が変わります。
たとえば、一時的な納品遅れによって4月の売上が減り、その売上が5月に計上されるのであれば、年間売上への影響は小さいかもしれません。
一方、市場そのものが縮小して販売数量が減っているのであれば、5月以降も売上が予算を下回る可能性があります。
ローリングフォーキャストでは、こうした最新情報を将来の数字へ反映します。
一時的な差異か構造的な差異かを考える
予算と実績に差が出たとき、その差が今後も続くのかを考えることが重要です。
たとえば、大雪によって商品配送が一時的に止まり、ある月の売上が予算を下回ったとします。
翌月には通常通り配送できるのであれば、その影響は一時的なものかもしれません。
一方、競合企業が強力な新商品を発売し、自社商品の販売数量が継続的に減っているのであれば事情が違います。
その影響は翌月以降も続く可能性があります。
同じ100万円の売上未達でも、将来への影響はまったく違うのです。
だからこそ、実績の数字だけでなく、その差異が生じた原因を理解する必要があります。
これは参考記事で説明されている予実管理の考え方ともつながります。
参考記事でも、差異を確認するだけでなく、原因まで掘り下げることが重要だとされています。
外部環境が変化した場合の対応
会社を取り巻く環境は、年度の途中でも変化します。
原材料価格が急上昇することがあります。
為替相場が大きく動くこともあります。
市場全体の需要が変わる場合もあります。
こうした変化を無視して年度当初の数字だけを見続けると、経営判断が現実から離れてしまう可能性があります。
参考記事では、原料の高騰や天候不順などの管理できない要因について、原因そのものを嘆くことに会議時間を使っても翌月の数字は良くならないとしています。
そして、管理できない要因については来期予算の前提を見直す材料として記録しておけばよいという考え方が示されています。
ローリングフォーキャストでは、こうした外部環境の変化も将来予測へ反映していきます。
重要なのは、外部環境を変えようとすることではなく、変化した環境を前提として会社が今後どうなるのかを予測することです。
早い段階で年間業績の変化に気づける
ローリングフォーキャストの大きな意味は、年度末になる前に業績の変化を把握できることです。
たとえば、年間利益予算が1億円だったとします。
年度が始まって3カ月経過した段階で、最新の販売数量や原材料価格などを反映すると、このままでは年間利益が7000万円程度になりそうだと分かったとします。
年度末まで待ってから「3000万円足りませんでした」と確認しても、打てる対策は限られます。
しかし、早い段階で7000万円になりそうだと分かれば、残された期間に対策を考えることができます。
営業活動を見直す。
販売価格を見直す。
仕入方法を見直す。
経費を見直す。
設備投資の時期を再検討する。
将来の数字が早く見えることで、経営者が行動できる時間も長くなります。
予実管理との組み合わせ
ローリングフォーキャストと予実管理は、組み合わせて使うことができます。
予実管理では、予算と実績を比較します。
そこで差異が見つかれば、原因を分析します。
そして、その原因が今後も続くのであれば、将来予測にも反映します。
たとえば、売上未達の原因が主要得意先への訪問不足だったとします。
参考記事では、こうした原因に対して上位10社への訪問を月2回に戻し、翌月の予実会議で販売数量の推移を確認するという具体的な行動が示されています。
この場合、予実管理では訪問回数を戻した結果、販売数量が回復したのかを確認します。
さらに将来予測では、その回復状況を今後の売上見込みに反映することができます。
つまり、過去については予算と実績を比較し、未来については最新情報を使って予測するという役割分担ができます。
予測を更新するだけでは業績は改善しない
ただし、ローリングフォーキャストを作るだけで業績が改善するわけではありません。
将来の売上が予算より1000万円不足しそうだと分かったとしても、その数字を毎月更新しているだけでは結果は変わりません。
重要なのは、その情報から具体的な行動を決めることです。
この点は参考記事の中心的な考え方と同じです。
参考記事では、原因までたどり着いても翌月の行動が変わらなければ未来の数字は変わらず、分析で終わる予実管理は反省会にしかならないと説明しています。
将来予測も同じです。
予測する。
差異を把握する。
原因を考える。
具体的な行動を決める。
その行動によって予測がどう変化したのかを再び確認する。
この繰り返しによって、将来予測が実際の経営判断に役立つようになります。
結論
ローリングフォーキャストとは、年度開始時に作った予算だけに頼るのではなく、最新の実績や経営環境を反映しながら将来の見通しを継続的に更新していく考え方です。
年度予算は会社が達成しようとする目標として重要です。
一方、予測は現在の状況から考えて将来どのような数字になりそうなのかを見るために使います。
そのため、予算と予測は必ずしも一致しません。
予実管理によって差異を発見し、その原因が将来にも影響するのであれば予測へ反映する。
そして将来の予算未達が早い段階で見えてきたら、具体的な対策を打つ。
重要なのは、将来を正確に当てることだけではありません。
新しい情報が入るたびに将来の見通しを更新し、経営判断を早めることです。
年度末になって初めて予算未達を知るのではなく、途中の段階で未来の数字を見ながら行動を変えていく。
それがローリングフォーキャストを予実管理と組み合わせる大きな意味なのです。
参考
企業実務 2026年9月号 猫と学ぶ経理力の磨き方 第9話 頑張りますで終わらせたら予実管理ちゃうで