オンライン診療の医療事故は誰が責任を負うのか 医師と看護師と施設の役割分担編

人生100年時代
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オンライン診療では、医師と患者が同じ場所にいないことがあります。

さらにD to P with Nでは、離れた場所に医師がいて、患者のそばには看護師がいます。駅や公民館などのオンライン診療受診施設を利用する形も広がります。

ここで気になるのが、診療中に事故が起きた場合の責任です。

医師が画面越しに診断を誤った場合は誰の責任なのでしょうか。

看護師が医師の指示を受けて処置をした場合はどうでしょうか。

オンライン診療受診施設を運営する事業者にも医療上の責任があるのでしょうか。

重要なのは、オンライン診療だから誰か一人がすべての責任を負うという単純な仕組みではないことです。

医師、看護師、医療機関、施設などがそれぞれの役割を担い、事故が起きた場合には具体的な行為や注意義務などに応じて責任が問題になります。

オンラインでも医師が診療することは変わらない

オンライン診療は、単なる健康相談ではありません。

医師が情報通信機器を使って患者を診察し、医学的な判断を行います。

患者の症状を聞く。

必要な情報を確認する。

診断する。

治療方針を決める。

必要に応じて薬を処方する。

こうした医師の役割は、診察が対面からオンラインになっても基本的には変わりません。

画面越しだから診断に関する責任がなくなるわけではありません。

医師はオンラインで得られる情報の範囲を踏まえて、安全に診療できるかを判断する必要があります。

医師には診断についての責任がある

オンライン診療で中心的な医学的判断を行うのは医師です。

例えば患者が、

胸が痛い

息苦しい

強い頭痛がある

と訴えたとします。

医師は問診や映像、測定された数値などから患者の状態を判断します。

しかし、オンラインでは触診などができない場合があります。

必要な情報が不足しているにもかかわらず、オンラインだけで診療を続けることが適切とは限りません。

詳しい検査や直接の診察が必要だと判断すれば、対面診療へ切り替える必要があります。

オンラインで診察を始めた以上、最後までオンラインで完結させなければならないわけではないのです。

看護師は診療の補助を担う

D to P with Nでは、患者のそばに看護師がいます。

医師は遠隔地から患者を診察し、看護師が診療を補助します。

例えば看護師が、

血圧を測定する

脈拍を確認する

血中酸素飽和度を測る

電子聴診器を患者に当てる

医師へ患者の状態を伝える

といった役割を担うことがあります。

必要な条件のもとで、医師の指示を受けて検査や投薬、点滴、処置などを行う場面も考えられます。

看護師が患者のそばにいることで、自宅型オンライン診療より多くの情報を医師へ届けられます。

一方、それだけ看護師にも適切に業務を行うことが求められます。

医師の指示があれば何でもできるわけではない

医師がオンラインで指示を出したからといって、看護師がどのような医療行為でも自由に行えるわけではありません。

医師と看護師にはそれぞれ法律上の役割があります。

医師が行うべき診断などを看護師へ丸投げすることはできません。

看護師は自らの資格と業務の範囲の中で診療を補助します。

また、医師から指示された行為についても、患者の状態を確認しながら適切に実施する必要があります。

オンライン診療では医師が現場にいないからこそ、

誰が判断するのか

誰が実際の処置を行うのか

異常が起きたら誰に連絡するのか

をあらかじめ明確にしておくことが重要です。

情報を正しく医師へ伝えることも重要になる

D to P with Nでは、医師の判断材料の一部を患者のそばにいる看護師が集めます。

例えば血中酸素飽和度が実際には低いのに、誤った数値を医師へ伝えれば診断に影響する可能性があります。

電子聴診器を正しく使用できなければ、医師が十分な呼吸音を確認できないかもしれません。

患者の顔色や呼吸状態に大きな変化があるのに、それを医師へ伝えなければ重要な情報が欠けます。

遠隔医療では、情報の受け渡しそのものが診療の一部になります。

そのため医療機器の操作方法や情報伝達の手順を整備することが重要になります。

医療機器の不具合という問題もある

オンライン診療では通信機器や医療機器を利用します。

例えば電子聴診器で取得した呼吸音を遠隔地の医師へ送る場合、機器が正しく動かなければ診察に必要な情報を得られません。

通信が途切れることも考えられます。

測定機器の管理が適切でなければ、正確な数値を得られない可能性もあります。

対面診療でも医療機器の安全管理は重要ですが、オンライン診療では機器と通信を通じて情報を遠隔地へ届けるため、新しい管理上の課題が加わります。

機器に問題がある場合に診療を続けるのか、対面診療へ切り替えるのかといった手順も必要になります。

オンライン診療受診施設は診療所とは違う

2026年4月からは、一定の仕組みのもとで駅や公民館などにオンライン診療を受けるための施設を設けられるようになりました。

これによって、患者が自宅に通信環境を用意できない場合などでも、身近な場所からオンライン診療を利用しやすくなります。

ただし、オンライン診療受診施設と通常の病院や診療所を同じものとして考えることはできません。

受診する場所を提供することと、医療そのものを提供することは別だからです。

施設の運営者が場所や通信環境を提供しているからといって、その運営者が医師に代わって診断するわけではありません。

誰が医療を提供し、誰が場所や設備を管理しているのかを区別する必要があります。

施設には施設としての役割がある

医療上の判断を行わない施設であっても、何の責任もないという意味ではありません。

例えば施設が提供する設備について、適切な管理が求められる場合があります。

患者のプライバシーを守れる環境になっているか。

通信環境を適切に利用できるか。

利用者が安全に施設を利用できるか。

施設に置かれた機器があるなら適切に管理されているか。

こうした問題があります。

医師の診断責任と、施設の設備や運営に関する責任は分けて考える必要があります。

オンライン診療では関係者が増えるため、それぞれの責任範囲を明確にすることが重要になります。

対面診療への切り替え判断が重要になる

オンライン診療の安全性を考えるうえで特に重要なのが、いつ対面診療へ切り替えるのかという判断です。

オンラインでは、

触診できない

十分な検査ができない

画像だけでは分からない

通信状態が悪い

患者の症状が急変した

といった状況が起こり得ます。

このとき、無理にオンライン診療を続けることは適切ではありません。

医師がオンラインでは安全に判断できないと考えた場合には、対面診療を勧める必要があります。

緊急性が高ければ救急医療へつなぐ必要もあります。

オンライン診療では、診断そのものだけでなく、オンラインで診療を続けてよいかという判断も重要なのです。

岩国の事例では看護師と医師が役割分担している

今回参考にした記事では、岩国市医療センター医師会病院の来院型オンライン診療が紹介されています。

患者は病院を訪れます。

救急外来の看護師が症状や受診歴を聞き取ります。

離れた場所にいる医師がオンラインで診察します。

電子聴診器で得られた呼吸音や血中酸素飽和度なども医師の判断材料になります。

必要な処置は病院で行います。

つまり、

患者を直接観察する人

医療機器を扱う人

医学的判断をする人

処置を行う人

が役割分担しながら一人の患者を診ています。

オンライン診療では、この役割分担が安全性を左右します。

医療事故の責任は一律には決められない

仮にオンライン診療で患者に損害が生じても、

オンラインだから医師の責任

看護師が現場にいたから看護師の責任

施設を利用したから施設運営者の責任

と一律に決められるわけではありません。

何が起きたのかを具体的に確認する必要があります。

医師の医学的判断に問題があったのか。

看護師の処置に問題があったのか。

重要な患者情報が適切に伝えられなかったのか。

機器の管理に問題があったのか。

対面診療へ切り替えるべき状況だったのか。

実際の責任の有無や範囲は、具体的な事実関係や契約関係、各当事者に求められる注意義務などに基づいて判断されることになります。

誰が何をしたか記録することが重要になる

オンライン診療では複数の人やシステムが関係するため、記録も重要になります。

医師が何を確認したのか。

看護師からどのような情報が伝えられたのか。

どのような測定値だったのか。

医師がどのような指示を出したのか。

どのような処置を行ったのか。

患者へ何を説明したのか。

対面診療を勧めたのか。

こうした診療経過を適切に記録する必要があります。

事故が起きたときの責任を確認するためだけではありません。

次に患者を診る医療従事者へ正確な情報を引き継ぐためにも重要です。

オンラインだから責任が軽くなるわけではない

オンライン診療は新しい診療方法ですが、患者の安全を守るという医療の基本は変わりません。

医師が遠くにいるから責任が小さくなるわけではありません。

看護師が患者のそばにいるから医師がすべての判断を任せてよいわけでもありません。

反対に、医師の指示で動いた看護師にすべての責任が移るわけでもありません。

重要なのは、それぞれの専門職や施設が自分の役割を適切に果たすことです。

オンライン診療が広がるほど、技術だけではなく役割分担と安全管理の仕組みが重要になります。

結論

オンライン診療で医療事故が起きた場合の責任は、医師、看護師、施設のうち誰か一人へ自動的に決まるものではありません。

医師は患者を診察し、医学的な判断を行います。

オンラインでは十分な診察ができないと判断した場合には、対面診療へ切り替えることも重要な役割です。

D to P with Nでは、患者のそばにいる看護師が医師の診療を補助します。

患者の状態を確認し、測定結果などを医師へ伝え、必要な条件のもとで医師の指示を受けて検査や処置などを行う場合があります。

オンライン診療受診施設については、医療そのものを提供する主体と、受診する場所や設備を提供する主体を区別して考える必要があります。

事故が起きた場合には、診断、情報伝達、処置、機器管理、施設管理、対面診療への切り替えなど、それぞれの場面で何が起きたのかを確認して責任が判断されることになります。

オンライン診療では、医師と患者の間に看護師、施設、通信システム、医療機器などが加わる場合があります。

関係者が増えるからこそ、誰が何を判断し、誰が何を実施するのかを明確にしなければなりません。

オンライン医療を安全に広げるために必要なのは、責任を一人に集めることではありません。

医師、看護師、医療機関、施設がそれぞれの役割を明確にし、必要なときには迷わず対面医療へつなげる仕組みを整えることなのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月22日 朝刊 進化するオンライン診療 看護師立ち会い、検査や処置

日本経済新聞 2026年8月22日 朝刊 駅で受診可能に

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