脱退一時金と年金受給はどちらが得なのか 外国人が帰国するときの選択肢編

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日本で数年間働いた外国人が母国へ帰国するとき、年金について大きな選択を迫られることがあります。

日本で納めた年金について脱退一時金を受け取るのか、それとも日本での年金加入期間を残して、将来年金として受け取る可能性を残すのかという選択です。

脱退一時金を受け取れば、帰国後にまとまったお金を受け取ることができます。

一方で、脱退一時金を受け取ると、それ以前の日本の年金加入期間がなくなります。

さらに、日本と母国との間に社会保障協定があり、年金加入期間を通算できる場合には、脱退一時金を受け取ることによって将来の年金受給の可能性を失うこともあります。

そのため、帰国するから脱退一時金を受け取ればよいとは限りません。

脱退一時金を受け取るメリット

脱退一時金の最大のメリットは、日本を離れた後にまとまったお金を受け取れることです。

日本国籍を持たない人が日本の国民年金や厚生年金に一定期間加入した後、日本国内に住所を持たなくなった場合などには、一定の要件を満たせば脱退一時金を請求できます。

日本で数年間働いたものの、今後日本へ戻る予定がない人にとっては、将来の年金として受け取るよりも、帰国後に一時金として受け取ることにメリットを感じる場合があります。

特に、日本での年金加入期間が短く、母国との社会保障協定による期間通算もできない場合には、有力な選択肢になります。

ただし、納めた保険料が全額返金される制度ではありません。

現在、脱退一時金の支給額計算に使われる加入期間は原則最大60カ月です。

脱退一時金を受け取ると加入期間がなくなる

脱退一時金を選択するときに最も重要なのが、年金加入期間の扱いです。

脱退一時金を受け取ると、原則として脱退一時金を請求する以前の日本の年金加入期間がなくなります。

例えば、日本で5年間厚生年金に加入していた外国人が帰国し、脱退一時金を受け取ったとします。

その後、再び日本へ来て5年間働いたとしても、最初の5年間と後の5年間を単純に合わせて10年間の受給資格期間にすることはできません。

最初の5年間について脱退一時金を受け取ったことで、その期間が年金加入期間ではなくなっているからです。

一時金を受け取るということは、将来利用できる日本の年金加入記録を手放すことでもあります。

将来年金として受け取る方法もある

日本の老齢年金を受け取るためには、原則として10年以上の受給資格期間が必要です。

日本での加入期間がすでに10年以上ある場合には、原則として脱退一時金の対象とはならず、将来日本の老齢年金を受け取ることを考えることになります。

一方、日本での加入期間が10年未満であっても、すぐに脱退一時金を受け取らず、加入記録を残すという考え方があります。

将来再び日本で働けば、それまでの加入期間と再来日後の加入期間をつなげられる可能性があるためです。

例えば、最初に6年間日本で働いて帰国し、その後再び日本で4年以上加入すれば、原則として合計10年以上の受給資格期間につながります。

帰国した時点だけを見るのではなく、その後の人生まで考える必要があります。

海外に住んでいても日本の年金を受け取れる

日本の年金を受け取るために、老後も日本に住み続けなければならないわけではありません。

受給資格を満たしていれば、海外に居住しながら日本の年金を受給することもできます。

したがって、日本で長期間働いた外国人が帰国する場合、帰国するから日本の年金は意味がなくなるというわけではありません。

日本での年金加入記録を残しておき、将来受給年齢になってから日本の年金を受け取るという選択肢があります。

日本での滞在期間が長い外国人ほど、この点を確認してから脱退一時金を請求することが重要になります。

社会保障協定があれば10年未満でも年金を受け取れる場合がある

さらに重要なのが社会保障協定です。

日本は複数の国との間で社会保障協定を結んでいます。

社会保障協定には、社会保険料の二重負担を防ぐ仕組みと、年金加入期間を通算する仕組みがあります。

期間通算ができる協定の場合、日本だけの加入期間では受給資格を満たせなくても、日本と母国の年金加入期間を合わせて受給資格を判定できます。

例えば、日本で5年間、母国で20年間年金制度に加入していたとします。

日本での加入期間だけを見ると10年に届きません。

しかし、期間通算が認められる社会保障協定があれば、母国での加入期間を受給資格の判定に利用することができ、日本の年金を受給できる可能性があります。

加入期間を合算して一つの年金にするわけではない

社会保障協定による期間通算については、誤解しやすい点があります。

日本と母国の加入期間を合算して、一つの国からまとめて年金を受け取る仕組みではありません。

加入期間を通算するのは、基本的には年金を受け取る資格があるかどうかを判定するためです。

実際に年金を受け取る場合には、それぞれの国で加入していた期間などに応じて、それぞれの国から年金が支給されます。

日本で5年間加入し、母国で20年間加入したからといって、日本が25年間分の年金を支給するわけではありません。

日本からは、日本の制度に加入していた期間に応じた年金を受け取ることになります。

脱退一時金を受け取ると期間通算できなくなる

社会保障協定がある国の人にとって、ここが最も重要なポイントです。

脱退一時金を受け取ると、その対象となった日本の年金加入期間は、社会保障協定による期間通算にも利用できなくなります。

例えば、日本で5年間加入していた外国人が帰国したとします。

母国との社会保障協定によって期間通算が可能であれば、日本の5年間を残しておくことで将来日本の年金を受け取れる可能性があります。

しかし、帰国時に脱退一時金を受け取れば、その加入期間を後から期間通算に利用することはできません。

目の前の一時金と将来の年金受給権を比較する必要があるのです。

すべての社会保障協定で期間通算できるわけではない

日本と社会保障協定を結んでいる国であれば、必ず年金加入期間を通算できるわけではありません。

社会保障協定の内容は国によって異なります。

例えば、英国、韓国、中国、イタリアとの協定には年金加入期間の通算に関する規定がなく、主として社会保険料の二重負担を防ぐ仕組みとなっています。

一方、米国やドイツ、フランス、カナダ、オーストラリアなど、期間通算ができる協定を結んでいる国もあります。

そのため、脱退一時金を受け取るか判断するときには、単に母国と日本との間に社会保障協定があるかだけではなく、その協定に期間通算が含まれているかまで確認する必要があります。

将来再び日本で働く可能性も考える

外国人の働き方も多様化しています。

一度日本で働いて帰国した後、数年たってから再び日本企業に就職する人もいます。

こうした人の場合、脱退一時金を受け取らずに日本での加入記録を残しておくことに意味があります。

最初の日本滞在で6年間、再来日後に5年間加入すれば、合計11年間となり、原則として日本の老齢年金の受給資格期間を満たすことができます。

一方、最初の6年間について脱退一時金を受け取っていれば、その期間を将来の年金につなげることはできません。

帰国時点では日本へ戻るつもりがなくても、その後の仕事や家族の事情によって再来日する可能性はあります。

脱退一時金は、一度受け取った後で簡単に元に戻せる制度ではないことを理解しておく必要があります。

目先のお金と生涯の年金を比較する

脱退一時金と年金受給のどちらが得なのかについて、すべての外国人に共通する答えはありません。

日本での加入期間、年齢、母国の年金制度、日本との社会保障協定、再来日の可能性などによって結論が変わるからです。

今後日本へ戻る可能性がなく、期間通算もできず、日本の年金受給資格を得る見込みが低い人であれば、脱退一時金を受け取るメリットが大きくなる場合があります。

反対に、日本での加入期間が長い人、再び日本で働く可能性がある人、社会保障協定による期間通算を利用できる人は、加入記録を残すことの価値が高くなる可能性があります。

帰国時に受け取れる金額だけではなく、生涯で受け取れる可能性のある年金まで考えて判断することが重要です。

結論

外国人が日本を離れるときには、脱退一時金を受け取る方法と、日本での年金加入期間を残して将来の年金受給につなげる方法があります。

脱退一時金には、帰国後にまとまったお金を受け取れるメリットがあります。

しかし、脱退一時金を受け取ると、それ以前の日本の年金加入期間がなくなり、将来の年金受給や社会保障協定による期間通算に利用できなくなります。

特に、母国と日本との間で期間通算ができる社会保障協定がある人や、将来再び日本で働く可能性がある人は慎重な判断が必要です。

脱退一時金と年金受給のどちらが得なのかは、帰国時点だけでは判断できません。

日本での加入期間を一時金として精算するのか、それとも将来の年金受給権につながる資産として残しておくのか。

外国人にとって脱退一時金の選択は、帰国手続きの一つではなく、将来の生活設計にも関係する重要な判断なのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月18日朝刊 国民年金の納付、外国人低調55%

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