ふるさと納税の寄附金活用可能額とは何か 自治体に6割を残す新ルール編

税理士
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ふるさと納税では、寄付額が多ければ多いほど自治体にとって有利とは限りません。

寄付を集めるためには、返礼品の調達費、送料、仲介サイトへの手数料など、さまざまな経費が必要になるからです。

仮に100億円の寄付を集めても、そのうち50億円を募集経費として使っていれば、実際に地域の政策などに活用できる金額は50億円程度になります。

そこで新たに重要になるのが「寄附金活用可能額」という考え方です。

2026年度税制改正では、ふるさと納税について、寄付額から募集費用を差し引いた「寄附金活用可能額」を原則として寄付額の60%以上とする新しい基準が盛り込まれました。

これまでの「経費を5割以下にする」という考え方から、「地域のために使えるお金を6割以上残す」という考え方へ、制度を見る視点が変わろうとしています。

寄附金活用可能額とは何か

寄附金活用可能額とは、簡単にいえば、自治体が受け取ったふるさと納税の寄付額から、寄付を集めるために必要となった募集費用を差し引いた金額です。

例えば、ある自治体が1年間に10億円の寄付を受け取ったとします。

返礼品、送料、仲介サイト手数料などの募集費用が4億円だった場合、

10億円から4億円を差し引いた6億円

が寄附金活用可能額となります。

つまり、寄付額のうち実際に自治体が地域のために活用できる部分に注目する考え方です。

これまでふるさと納税では「募集費用をいくらまで使ってよいか」という経費側から制度を規制する考え方が中心でした。

新しい制度では、それだけでなく「いくら地域に残ったのか」がより明確に問われるようになります。

なぜ自治体に残る金額が重要なのか

ふるさと納税は、地方自治体への寄付制度です。

寄付者は一定の上限まで、原則として自己負担2000円を除いた部分について所得税や住民税から控除を受けられます。

つまり、ふるさと納税によって税収が自治体間で移動します。

そのお金が子育て支援、教育、福祉、地域産業、公共施設、災害対策などに使われれば、寄付を受けた地域にとって大きな財源となります。

ところが、寄付を獲得するために多額の費用を使えば、実際に行政サービスなどへ回せる金額は少なくなります。

返礼品競争が激しくなるほど、寄付額は増えても地域に残る割合が低下するという問題が生じます。

そこで、寄付総額そのものよりも「最終的に地域にいくら残ったのか」を重視しようというわけです。

これまでは5割以下という経費規制だった

これまでの制度では、募集に要する費用を寄付総額の50%以下に抑えることが重要な基準となっていました。

考え方を単純化すると、

100万円の寄付を受けた場合

募集経費は50万円以下

地域に残る金額は50万円以上

という構造です。

ところが、ふるさと納税の規模が1兆円を超えるまでに拡大したことで、この経費の大きさも無視できなくなりました。

国会で示された総務省の調査では、ある年度の募集費用は5429億円で、寄付総額の48.6%に相当していました。

つまり、集まった寄付のおよそ半分が返礼品や募集関連費用などに使われていたことになります。

制度の規模が大きくなれば、わずか数%の違いでも数百億円規模の財源になります。

新しい原則は6割以上を地域に残すこと

2026年度税制改正では、この仕組みをさらに進めます。

新たな指定基準では、自治体が受け取った寄付総額から募集費用を差し引いた寄附金活用可能額を、原則として寄付総額の60%以上とすることが求められます。

例えば10億円の寄付なら、最終的には6億円以上を寄附金活用可能額として確保するイメージです。

裏返せば、募集費用は4億円以下に抑える必要があります。

従来の5割基準から考えると、自治体が自由に地域政策などへ使える割合をさらに10ポイント程度増やしていくことになります。

ただし、いきなり60%にするわけではありません。

自治体や返礼品事業者への影響を考慮し、段階的に引き上げる経過措置が設けられています。

2026年10月からまず52.5%へ

最初の段階は2026年10月からです。

2026年10月1日から2027年9月30日までの指定対象期間については、寄附金活用可能額を寄付総額の52.5%以上とする基準が適用されます。

例えば1億円の寄付なら、

寄附金活用可能額は5250万円以上

募集費用は4750万円以下

という計算になります。

従来の50%から2.5ポイント引き上げることになります。

一見すると小さな違いですが、寄付額が大きな自治体ほど影響も大きくなります。

100億円の寄付を集める自治体なら、2.5%は2億5000万円に相当します。

それだけ募集経費を削減する必要があるわけです。

2027年10月から55%へ

次の段階では、さらに基準が厳しくなります。

2027年10月1日から2028年9月30日までの指定対象期間については、寄附金活用可能額を55%以上とすることが求められます。

100億円の寄付なら55億円以上を残す必要があります。

募集費用として使えるのは45億円以下です。

従来の5割基準と比べれば、経費を5億円程度削減する必要がある計算になります。

自治体にとっては、かなり大きな制度変更です。

2028年10月から57.5%へ

さらに2028年10月1日から2029年9月30日までの指定対象期間については、57.5%以上となります。

寄付額100億円なら57億5000万円以上を地域に残す必要があります。

募集費用として使える割合は42.5%まで縮小します。

そして経過措置終了後は、原則となる60%以上の基準へ移行します。

つまり制度は、

50%以上

52.5%以上

55%以上

57.5%以上

60%以上

という形で、地域に残す割合を段階的に引き上げていくことになります。

自治体はどこで経費を削るのか

問題は、募集費用をどうやって減らすかです。

返礼品の調達費を大幅に下げれば、地域の返礼品事業者の売上に影響します。

返礼品の量や内容を縮小すれば、寄付者にとっての魅力が低下する可能性があります。

送料についても、物流費や人件費が上昇するなかで簡単には削減できません。

自治体職員の事務負担を増やして対応するにも限界があります。

そこで大きな焦点になるのが、仲介サイトなどに支払われている費用です。

自治体側からすれば、地域に残す割合を増やすためには、自分たちだけでなく、ふるさと納税を取り巻く民間事業者にもコスト削減を求めざるを得ません。

寄附金活用可能額の導入は、自治体だけの問題ではなく、ふるさと納税市場全体の収益構造を変える可能性があります。

6割残っても寄付総額が減れば意味がない

ここで注意したいのは、60%という割合だけを見ればよいわけではないことです。

例えば、従来100億円の寄付を集め、50%が地域に残っていた自治体を考えます。

地域に残る金額は50億円です。

新制度で60%を残せるようになっても、返礼品の魅力低下などによって寄付額が80億円まで減ったとします。

80億円の60%は48億円です。

割合は改善しているにもかかわらず、実際に地域に残る金額は50億円から48億円へ減ってしまいます。

したがって、制度改革の成否を判断するには、

寄付総額

経費率

寄附金活用可能額

の三つを合わせて見る必要があります。

寄附金の使い道も問われるようになる

新しい仕組みでもう一つ重要なのが、寄附金活用可能額の使途です。

2026年度税制改正では、寄附金活用可能額の使途に関する事項を公表することも新たな基準に盛り込まれています。

これは非常に重要な変化です。

これまでは、

どれだけ寄付を集めたか

どんな返礼品が人気なのか

といった点に注目が集まりがちでした。

今後は、

寄付されたお金が地域にいくら残ったのか

そのお金を何に使ったのか

というところまで自治体に説明が求められることになります。

ふるさと納税が「返礼品を選ぶ制度」から「自治体の政策を選ぶ制度」へ近づく可能性があります。

結論

寄附金活用可能額とは、自治体が受け取ったふるさと納税の寄付額から、返礼品や送料、仲介サイト手数料などの募集費用を差し引いた金額です。

いわば、寄付のうち実際に地域のために活用できる部分です。

新しい制度では、この寄附金活用可能額を最終的に寄付総額の60%以上とすることが求められます。

ただし一度に60%へ引き上げるのではなく、2026年10月から52.5%、2027年10月から55%、2028年10月から57.5%と段階的に引き上げられ、その後60%以上という原則へ移行します。

さらに、地域に残った寄附金活用可能額を何に使ったのかについても公表が求められます。

これからのふるさと納税では、単純に「寄付額日本一」を競うだけでは制度の成果を測れなくなります。

いくら集めたのかではなく、いくら地域に残り、それを何に使ったのか。

寄附金活用可能額という新しい考え方は、ふるさと納税を量から質へ転換させる一つの契機になるのかもしれません。

参考

日本経済新聞 2026年8月14日 朝刊 ふるさと納税26年度 市区7割が「減少」の見方

財務省 2025年12月26日 令和8年度税制改正の大綱

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