AI(人工知能)は、行政のさまざまな場面で活用が進んでいます。国税庁でも、税務調査のリスク分析や業務の効率化を目的としてAIの導入が進められています。しかし、行政でAIを利用する場合には、単に高い精度で判断できればよいというわけではありません。
行政には、公平性や説明責任が求められます。そのため、「なぜその判断になったのか」を人が理解し、説明できることが重要になります。こうした考え方から注目されているのが「説明可能なAI(Explainable AI、XAI)」です。
今回は、説明可能なAIとは何か、その必要性や行政で重視される理由について解説します。
説明可能なAIとは
説明可能なAIとは、AIがどのような理由で判断や予測を行ったのかを、人が理解できる形で示せるAIのことです。
AIには、膨大なデータを学習して高い精度で予測を行うものがあります。
しかし、高性能なAIほど内部の計算過程が複雑になり、
「なぜその結論になったのか」
を人が理解しにくくなることがあります。
このような状態は「ブラックボックス」と呼ばれます。
説明可能なAIでは、
- どの情報を重視したのか
- どのような要因が判断に影響したのか
- 判断結果の根拠は何か
などを分かりやすく示すことで、AIの透明性を高めることを目指しています。
行政で透明性が重要な理由
行政は、法律に基づいて公平・公正に業務を行うことが求められます。
税務行政であれば、
- なぜ税務調査の対象となったのか
- なぜその判断が行われたのか
について、必要に応じて説明できなければなりません。
もしAIが示した結果だけを理由に判断し、その根拠を誰も説明できないのであれば、行政への信頼を損なう可能性があります。
そのため、行政ではAIの精度だけでなく、
- 透明性
- 説明責任
- 公平性
- 再現性
も非常に重要視されています。
説明可能なAIは、こうした行政の基本原則とAIを両立させるための重要な考え方です。
人による確認が欠かせない
国税庁は、AIを活用する場合でも最終的な判断は必ず職員が行う方針を示しています。
例えば、AIが申告漏れのリスクが高いと分析したとしても、
- 申告書の内容
- 添付書類
- 各種資料
- 個別事情
などを総合的に確認し、人が最終判断を行います。
これは、AIが誤った判断をする可能性があるためだけではありません。
AIは過去のデータから学習するため、学習データに偏りがある場合には、判断結果にも偏りが生じる可能性があります。
人が確認することで、そのようなリスクを抑え、公平な行政運営を維持することができます。
世界でも重要視されるAIガバナンス
説明可能なAIは、日本だけでなく世界的にも重要なテーマとなっています。
近年では、各国政府や国際機関がAIの適切な利用に関するルール作りを進めています。
その中では、
- 人間による監督
- 判断の透明性
- 個人情報の保護
- 差別や偏見の防止
- 説明責任の確保
などが共通して重視されています。
AIの能力が高まるほど、その利用方法についても適切なルールが求められるようになっています。
行政は国民の権利や義務に直接関わるため、特に慎重な運用が必要とされています。
AI時代でも最終責任は人が負う
今後、AIはさらに高性能になり、行政の多くの業務を支援するようになるでしょう。
しかし、行政においてAIはあくまでも支援ツールです。
最終的な判断や責任は人が負うという考え方は、今後も変わらないと考えられます。
AIは膨大なデータを高速で分析することが得意ですが、個別事情への配慮や社会的な影響を考慮した判断は、人間の重要な役割です。
AIの能力と人の判断力を組み合わせることで、効率性と公平性の両立を目指すことが、これからの行政に求められる姿といえるでしょう。
結論
説明可能なAIとは、AIがどのような理由で判断したのかを人が理解し、説明できるようにする考え方です。行政では、公平性や説明責任が求められるため、AIの精度だけでなく、その判断過程の透明性も重要になります。
国税庁も、AIは税務調査やリスク分析を支援するツールと位置付け、最終判断は職員が行う方針を示しています。AIの活用が広がるこれからの時代には、技術の進歩と行政への信頼を両立させるため、説明可能なAIの重要性はますます高まっていくでしょう。
参考
税のしるべ「国税庁におけるAIの活用を公表、9月にKSK2の導入で予測モデルの精度が向上へ」2026年8月3日
国税庁「国税庁におけるAIの活用」2026年7月27日
OECD「人工知能に関するOECD原則」
デジタル庁「AIの利活用に関する各種資料」