人事部門では、採用、評価、給与計算、労務相談、異動、退職手続きなど、多くの業務で文書作成や情報整理が求められます。これらは定型業務と判断業務が入り混じっており、担当者の経験やスキルによって品質にばらつきが生じやすい分野でもあります。
近年では、生成AIの進化によって、人事業務の効率化が大きく進み始めています。特にMicrosoft Copilotなどの生成AIは、文章作成だけではなく、情報整理や比較分析、文書の下書き作成など、人事担当者の実務を幅広く支援できるようになっています。資料では、人事業務を「採用」「給与・評価・相談対応」「退職・異動・組織再編」の3つの分野に分け、それぞれの具体的な活用例が紹介されています。
人事業務は生成AIと相性が良い理由
生成AIが最も得意とするのは、大量の情報を整理し、一定のルールに従って文章や表を作成することです。
人事部門では、
- 求人票の作成
- 面接評価
- 人事評価コメント
- 給与データの確認
- 労務相談の整理
- 異動通知
- 引継書の作成
など、多くの業務が文書作成を中心に進められています。
つまり、人事部門は生成AIが力を発揮しやすい代表的な部署といえます。
採用業務は大幅に効率化できる
採用活動では、求人票の作成だけでも多くの時間がかかります。
生成AIに自社の求める人物像や既存求人票を入力すれば、
- 求人原稿
- 必須条件
- 歓迎要件
- 会社の魅力
- Excelに貼り付けられる項目一覧
などを短時間で作成できます。
さらに、
- 面接質問の設計
- 評価基準の作成
- 構造化面接シート
まで一括して作成できるため、面接官による評価のばらつきを減らす効果も期待できます。
また、面接メモや文字起こしデータを比較して候補者を一覧化することも可能です。
経験や印象だけに頼らず、客観的な比較ができるようになります。
給与計算や人事評価にも活用できる
給与計算では、
- 手当漏れ
- 控除ミス
- 前月との差異
などの確認作業に時間がかかります。
生成AIは前月データと比較し、
- 異常値
- 急激な変動
- 考えられる原因
まで整理して一覧化できます。
また、人事評価では、
- OKR
- MBO
- 目標設定
- フィードバックコメント
の作成支援も可能です。
評価結果から、
- 強み
- 課題
- 次期への期待
を整理し、1on1面談で伝える順番まで提案してくれるため、上司の準備負担を大きく減らせます。
労務相談では判断ではなく整理に使う
ハラスメントや休職相談などは、企業にとって法的リスクが高い分野です。
生成AIに最終判断を任せることは適切ではありません。
しかし、
- 相談内容の整理
- 確認すべき事実
- 一般的な対応手順
- 社会保険労務士や弁護士へ相談すべきか
といった一次整理には非常に役立ちます。資料でも、AIには「判断ではなく選択肢を示す」役割を担わせることが推奨されています。
退職や組織変更でも効果を発揮する
退職者が発生すると、
- 引継書
- 社内通知
- 辞令
- FAQ
- 組織図
など、多数の文書作成が必要になります。
生成AIはヒアリングメモや録音データから、
- 業務手順
- 注意事項
- 使用システム
- 関係部署
などを整理した引継書を自動作成できます。
また、
- 離職理由分析
- 定着率改善
- 異動通知
- 組織再編時のFAQ作成
まで支援できるため、人事担当者はより企画的な仕事へ時間を使えるようになります。
AI活用では情報管理が最重要
人事部門では、
- 氏名
- 給与
- 評価
- 健康情報
- 面接内容
など、企業で最も重要な個人情報を扱います。
そのため、生成AIを利用する際には、
- 個人情報のマスキング
- 社内利用ルール
- 利用履歴の管理
- セキュリティ対策
を十分整備することが不可欠です。
資料中でも、面接データや相談内容では氏名や部署のマスキングを前提としたプロンプト例が紹介されており、情報管理への配慮が重視されています。
結論
生成AIは、人事担当者に代わって判断を行うツールではありません。しかし、求人票の作成、給与データの点検、人事評価、労務相談の整理、退職時の引継書作成など、人事業務の多くで大きな効率化を実現できます。
特に、情報整理や文書作成を伴う業務では高い効果が期待できます。一方で、人事部門は機密情報を扱う部署でもあるため、個人情報保護や適切な運用ルールを整備したうえで活用することが重要です。生成AIを「判断者」ではなく「優秀な実務アシスタント」として活用することが、人事DXを成功させる鍵となるでしょう。
参考
企業実務 2026年8月号
「中小企業のためのCopilot実務活用講座 第5回 人事の生成AI活用 無料版から始める管理部門のAI仕事術」 公認会計士 加藤勲 著