非上場会社の株式は、証券取引所で売買されていないため、市場価格が存在しません。そのため、株式を譲渡したり、会社が買い取ったりする場面では、「いくらが適正な価格なのか」が大きな問題になります。
特に、譲渡制限株式の譲渡承認請求で会社が譲渡を承認しない場合には、株式の買取価格を決定する必要があります。この価格決定は、会社と株主双方にとって重要な問題であり、実務では慎重な対応が求められます。資料でも、非上場株式には市場価格がないため、価格決定の考え方を理解しておくことが重要であると説明されています。
協議による価格決定
会社が譲渡を承認せず、自らまたは指定買取人が株式を買い取る場合、まず当事者同士で売買価格について協議します。
会社と株主が価格について合意できれば、その価格で売買が成立します。
このため、実務では会社の財務状況や株式の価値などを踏まえ、双方が納得できる価格を話し合うことが基本となります。資料でも、売買価格はまず会社または指定買取人と請求者との協議によって定めるとされています。
裁判所による価格決定
当事者間の協議がまとまらない場合には、裁判所へ価格決定の申立てを行うことができます。
資料では、買取通知の日から20日以内に価格決定の申立てを行うことができると説明されています。裁判所は、会社の資産状態やその他一切の事情を考慮し、公正な価格を決定します。
つまり、価格は一方的に会社が決めるものでも、株主が希望する価格になるものでもありません。
第三者である裁判所が客観的な事情を総合的に判断して決定します。
税務評価額とは異なる
実務で誤解されやすいのが、税務上の評価額との違いです。
相続税や贈与税では、非上場株式の評価方法が定められています。しかし、その評価額がそのまま株式の売買価格になるわけではありません。
資料でも、税務上の評価額は相続税や贈与税の計算に用いられる指標であり、譲渡承認請求後の売買価格とは当然には一致しないと説明されています。
税務評価額だけを前提に買取資金を見積もると、実際の価格との差が生じる可能性があります。
近年はDCF法が用いられることもある
裁判所が価格を判断する際には、企業価値をより適切に反映する評価方法が採用されることがあります。
資料では、近年の裁判例ではDCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)などの評価手法が用いられることもあると紹介されています。
DCF法は、将来生み出す利益やキャッシュフローを現在価値へ換算して企業価値を算定する方法です。
このように、非上場株式の価格は会社の将来性や財務内容なども考慮しながら決定される場合があります。
買取資金の準備も重要
会社が株式を買い取る場合には、価格だけでなく資金を準備できるかも重要な課題になります。
想定より高額な価格となれば、会社の資金繰りに影響する可能性があります。
そのため、事業承継や株式集約を検討する際には、価格の見込みだけでなく、資金調達の方法についてもあわせて検討しておくことが重要です。資料でも、価格だけでなく買取資金をどのように確保するかを同時に検討する必要があると説明されています。
結論
非上場株式には市場価格が存在しないため、売買価格はまず当事者間の協議によって決定されます。協議がまとまらない場合には、裁判所が会社の資産状態やその他の事情を総合的に考慮して価格を決定します。
また、相続税評価額や贈与税評価額が、そのまま売買価格になるわけではありません。会社は価格だけでなく、買取資金の確保まで含めて事前に準備しておくことが、円滑な事業承継や株式譲渡への対応につながります。
参考
- 『企業実務』2026年8月号付録「事業承継・M&A・紛争リスクを見据えた中小企業の株式実務ハンドブック」