会計不正はなぜ起きるのか 現場で防ぐための実践的チェックポイント編

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企業で会計不正が発覚すると、多くの人は「一部の悪意ある社員が問題を起こした」と考えがちです。しかし、実際には一人の不正だけで終わることは少なく、組織風土やガバナンスの弱さが背景にあるケースが少なくありません。

近年の大型不祥事を振り返っても、不正は突然発生するものではなく、小さなルール違反が積み重なり、やがて重大な会計不正へと発展しています。企業経営では、不正を発見すること以上に、不正が起きない組織をつくることが重要になっています。

会計不正が起きやすい組織の特徴

会計不正には一定の共通点があります。

その一つが、経営トップの権限が極端に強い組織です。トップの意向が絶対視される環境では、社員が異論を唱えにくくなり、不適切な処理が行われても誰も止められない状況が生まれます。

また、過度な業績目標も危険な要因です。

「今期だけ何とか数字を作ろう」
「来月には取り戻せる」

このような考えから、小さな不正が始まり、それが繰り返されることで感覚がまひしてしまいます。

組織にとって本当に怖いのは、一度始まった不正が「当たり前」になってしまうことです。

不正は正当化から始まる

会計不正は、多くの場合、「会社のため」という正当化から始まります。

例えば、

「雇用を守るため」

「取引先に迷惑をかけないため」

「一時的な調整だから問題ない」

このような理由を自分自身に言い聞かせることで、不正への心理的な抵抗感が薄れていきます。

さらに、それが繰り返されると罪悪感が失われ、「これくらいなら問題ない」という意識へ変化します。

この状態はモラルハザードと呼ばれ、会計不正だけでなく、品質不正やコンプライアンス違反など、より深刻な問題へ発展する可能性があります。

社内ルールだけでは不正は防げない

不正防止というと、厳しい規程やチェックリストを増やすことを思い浮かべるかもしれません。

しかし、ルールだけでは限界があります。

重要なのは、「不正を正当化しない」という価値観を組織全体で共有することです。

上司であっても間違いを指摘できる職場風土や、疑問を安心して相談できる環境づくりが、不正防止の基盤になります。

制度と組織文化の両方が機能して初めて、不正は防ぎやすくなります。

事業の実態を理解すると異常が見える

会計数字だけを見ても、不正を見抜くことは容易ではありません。

重要なのは、事業そのものを理解することです。

例えば、

・誰に販売しているのか

・何を販売しているのか

・なぜ購入されるのか

・いつ納品しているのか

・どこで提供しているのか

・どのような方法で販売しているのか

・いくらで販売しているのか

・どれくらいの数量なのか

このような視点で事業を分解すると、不自然な単価や販売数量、納期などの違和感が見えてきます。

数字だけではなく、事業の実態を理解することが、不正発見への近道なのです。

管理会計の数字にも注目する

財務諸表だけでは把握できない情報もあります。

例えば、

・工場の稼働率

・生産数量

・在庫の増減

・受注件数

・顧客数

・契約件数

こうした管理会計上のデータは、事業の実態を映し出します。

生産量が減っているにもかかわらず売上だけが急増している場合や、稼働率が低いのに利益率だけが改善している場合には、その背景を確認する必要があります。

現場のデータと財務データを組み合わせることで、不正の兆候をより早く発見できます。

新規事業ほどリスクは高い

新規事業や新しいビジネスモデルは、不正リスクが高くなりやすい傾向があります。

社内に十分な知識を持つ人が少なく、担当者に情報が集中しやすいためです。

新しい分野ほど、

「担当者しか分からない」

という状況を避けることが重要です。

複数人による確認や定期的なレビューを行うことで、不正の発生を抑えることができます。

現場の「違和感」を見逃さない

不正を行う組織では、独特の言い回しや隠語が使われることがあります。

本来の処理を曖昧な言葉で表現したり、不適切な取引を別の名称で呼んだりするケースです。

こうした違和感は、現場に慣れた担当者よりも、他部門や社外取締役など第三者のほうが気付きやすい場合があります。

「何となくおかしい」という感覚を軽視せず、確認する姿勢が不正防止につながります。

結論

会計不正は、一部の社員の問題ではなく、組織風土やガバナンスの問題として捉える必要があります。

厳しいルールを整備するだけでは十分ではありません。不正を正当化しない企業文化を育て、事業の実態を深く理解し、管理会計のデータや現場の違和感にも目を向けることが重要です。

企業価値を守るためには、「数字を見る力」と「現場を見る力」の両方を備えた組織づくりが求められています。

参考

日本経済新聞 2026年8月3日 朝刊「現場をむしばむ会計不正 予防と見破りの方法は」

公益社団法人日本監査役協会「内部統制・内部監査に関する各種資料」

COSO「Internal Control – Integrated Framework」

一般社団法人日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN) 不正対策関連資料

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