債権には、契約書に記載された金額があります。しかし、その金額がそのまま債権の価値になるとは限りません。
例えば、1億円の貸付金があっても、債務者に返済能力がなければ、その債権を全額回収することはできません。法律上は1億円の債権が存在していても、経済的な価値は大きく下がっている可能性があります。
近年の公表裁決でも、求償債権の額面ではなく、その実際の価値が争点となりました。
今回は、税務で重要となる債権評価の考え方について解説します。
額面と時価は異なる
債権の額面とは、契約や借用書などに記載された金額です。
一方、時価とは、その時点で実際に回収できると見込まれる経済的価値をいいます。
健全な企業に対する貸付金であれば、額面と時価はほぼ一致することが多いでしょう。
しかし、経営悪化や債務超過が進んだ会社では、額面どおりに回収できないことも少なくありません。
そのため、税務では額面だけでなく、実態に基づく評価が求められます。
債権評価の基本的な考え方
債権の価値を評価する際には、まず債務者の財務状況を確認します。
資産が十分にあり、利益も安定していれば、回収可能性は高いと考えられます。
一方で、多額の赤字や債務超過が続き、返済資金の見込みも乏しい場合には、債権価値は低下します。
また、担保や保証人の有無も重要な判断材料になります。
担保から十分な回収が見込める場合には、債権価値は高く評価されることがあります。
回収可能性が評価を左右する
税務では、債権が存在するかどうかではなく、「どの程度回収できるか」が重視されます。
例えば、返済期限を迎えても長期間返済がなく、資産もほとんど存在しない会社に対する貸付金は、額面どおりの価値があるとはいえません。
今回の公表裁決でも、求償債権は法律上存在していました。
しかし、債務者には返済能力がなく、資産を処分しても弁済は著しく困難であると認定されました。
その結果、求償債権の価値はゼロ円と評価されています。
税務上の実務では何を見るのか
税務調査では、債権の評価根拠が確認されます。
具体的には、次のような資料が重要になります。
・決算書や試算表
・財産目録
・不動産の評価資料
・担保設定の内容
・返済実績や返済計画
・事業継続の見込み
これらの資料を総合的に検討し、回収可能性が判断されます。
帳簿に貸付金が計上されているだけでは、税務上の価値まで認められるとは限りません。
裁判例や裁決も実態を重視
裁判所や国税不服審判所も、一貫して実態を重視する傾向があります。
形式的に債権が存在するという理由だけで額面どおり評価するのではなく、債務者の資産状況や支払能力を踏まえて、経済的価値を判断しています。
今回の公表裁決も、その考え方を改めて示したものといえます。
法律上の権利と、経済的価値は必ずしも一致しないという点が重要です。
実務で注意したいポイント
債権評価では、楽観的な見込みだけで価値を判断することは避けなければなりません。
反対に、必要以上に低く評価すると、別の税務問題が生じることもあります。
そのため、客観的な資料に基づき、評価の根拠を明確に残しておくことが重要です。
企業再編や事業再生、債務整理では、この評価が法人税や第二次納税義務など、さまざまな税務判断に影響します。
結論
債権の価値は、契約書に記載された額面だけで決まるものではありません。
税務では、債務者の財務状況や返済能力、担保の有無などを総合的に検討し、実際に回収できる経済的価値によって評価されます。
今回の公表裁決も、求償債権の額面ではなく回収可能性を重視し、その価値をゼロ円と判断しました。
債権評価は、第二次納税義務だけでなく、貸倒損失や債務免除など多くの税務問題に共通する重要な考え方であり、実態に即した判断が求められるといえるでしょう。
参考
税のしるべ
2026年7月27日
「【公表裁決】求償債権の回収不可能な特別な事情認められ、納付告知処分は違法」
国税徴収法第39条(無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務)
法人税基本通達9-6-1〜9-6-3(貸倒れに関する基本的な考え方)