旅行先が気に入り、「いつかここで暮らしてみたい」と思った経験がある人は少なくないでしょう。しかし、いきなり移住を決断することは簡単ではありません。仕事や住まい、家族の事情など、さまざまな課題があるからです。
そこで近年注目されているのが「二地域居住」です。
都市部に生活の拠点を置きながら、地方にももう一つの生活拠点を持つという暮らし方で、観光と移住の間をつなぐ新しいライフスタイルとして関心が高まっています。
今回は、二地域居住とは何か、地域や観光にどのような影響を与えるのかについて考えてみます。
二地域居住とは
二地域居住とは、一つの住まいだけではなく、都市部と地方など二つの地域を行き来しながら生活する暮らし方です。
例えば、
平日は都市部で仕事をする
週末は地方で過ごす
季節ごとに滞在先を変える
長期休暇は地方で生活する
といった形があります。
完全な移住ではなく、それぞれの地域の良さを生かしながら暮らすことが特徴です。
なぜ注目されているのか
二地域居住が注目される背景には、人々の価値観の変化があります。
テレワークの普及によって、仕事をする場所を柔軟に選べる人が増えました。
また、
自然の豊かな環境で暮らしたい
子どもをのびのび育てたい
地域とのつながりを持ちたい
災害時の生活拠点を分散したい
といった理由から、都市だけに生活を集中させない暮らし方への関心が高まっています。
「住む場所は一つ」という考え方が、少しずつ変わり始めているのです。
観光との違い
旅行は数日から1週間程度の短期滞在が一般的です。
一方、二地域居住では、数週間から数か月、あるいは年間を通じて何度も同じ地域を訪れます。
そのため、
地域のスーパーで買い物をする
地元の飲食店を利用する
地域行事へ参加する
近所の人と交流する
など、旅行では得られない体験が生まれます。
地域にとっては「お客様」ではなく、「地域を支える仲間」に近い存在になっていく点が大きな違いです。
地域経済への効果
二地域居住者が増えると、地域経済にもさまざまな効果が期待できます。
宿泊施設だけでなく、
住宅の利用
商店街での買い物
地域交通の利用
医療サービス
地域イベントへの参加
など、生活に関わる消費が増えます。
観光客より滞在期間が長いため、地域経済への継続的な効果も期待できます。
また、空き家の活用や地域サービスの維持につながる可能性もあります。
関係人口を増やす役割
近年、「関係人口」という言葉がよく使われるようになりました。
関係人口とは、移住はしていなくても、継続的に地域と関わる人たちを指します。
二地域居住者は、その代表的な存在です。
何度も地域を訪れることで愛着が生まれ、
地域活動へ参加する
地域産品を応援する
知人を地域へ紹介する
地域の情報を発信する
など、多様な形で地域を支えるようになります。
人口減少が進む地域では、こうした人々の存在がますます重要になっています。
定着には課題もある
一方で、二地域居住を広げるためには課題もあります。
住居の確保
交通費の負担
仕事との両立
医療や行政サービスの利用
地域住民との交流
など、解決すべき点は少なくありません。
また、地域側も、短期滞在者を受け入れる住宅や生活環境を整える必要があります。
利用する人と受け入れる地域の双方が工夫を重ねることが求められます。
観光から定住への入り口になる
二地域居住の大きな特徴は、「観光のその先」があることです。
最初は旅行で訪れた地域でも、
何度も通うようになり、
一定期間暮らしてみて、
地域とのつながりが深まり、
最終的に移住を選ぶ人もいます。
すべての人が移住するわけではありませんが、「住んでみたい」という気持ちを育てる機会になる点は大きな意義があります。
観光を一度きりの交流で終わらせず、長期的な関係へ発展させる可能性を秘めています。
結論
二地域居住は、都市と地方を行き来しながら暮らす新しいライフスタイルです。
観光のように地域を訪れるだけではなく、地域社会との継続的な関わりを築くことで、地域経済やコミュニティに新たな活力をもたらすことが期待されています。
人口減少が進む日本では、「移住するか、しないか」という二者択一ではなく、「地域と関わり続ける」という新しい選択肢が重要になっていくでしょう。
二地域居住は、観光と定住を結ぶ架け橋として、人と地域の新しい関係を育む可能性を持っています。その積み重ねが、持続可能な地域づくりにつながっていくのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞 2026年7月27日 朝刊
ソフトバンク系、免税対応を一括代行 訪日客にキャッシュレス返金