非上場株式の評価額を引き下げる方法として、これまでさまざまな手法が考案されてきました。その中でも近年注目されているのが、「オペレーティングリース」を利用した株価対策です。
本来、オペレーティングリースは航空機や船舶などの高額資産を効率的に利用するための金融商品です。しかし、その仕組みを非上場株式の評価額引下げに利用するケースが見られるようになり、国税庁の有識者会議でも具体例として取り上げられました。
今回は、オペレーティングリースとはどのような仕組みなのか、そしてなぜ株価対策として問題視されるようになったのかを分かりやすく解説します。
オペレーティングリースとは
オペレーティングリースとは、リース会社が資産を保有し、それを利用者へ貸し出す取引形態です。
対象となる資産には、
航空機
船舶
コンテナ
工作機械
発電設備
など、高額で長期間利用されるものが多くあります。
企業は購入資金を一度に準備する必要がなく、必要な期間だけ利用できるため、資金効率を高める手段として広く活用されています。
本来は、設備投資や資金調達を支えるための経済合理性を持つ仕組みです。
なぜ株価対策に利用されるのか
非上場株式の評価では、会社が保有する資産や負債が株価に影響を与えます。
そのため、資産や利益の状況が変化すると、自社株の評価額も変動します。
オペレーティングリースを利用した取引では、契約内容や会計処理、資産構成の変化によって、一定期間、会社の財務内容が変化することがあります。
この仕組みを利用し、自社株評価を低く抑えようとするケースが見られるようになりました。
つまり、リース取引そのものではなく、評価額を引き下げることを主な目的として利用される場合が問題となるのです。
国税庁が問題視する理由
国税庁の有識者会議では、オペレーティングリースを利用した株価圧縮スキームも具体例として示されました。
問題とされているのは、
会社の実質的な企業価値が大きく変わっていないにもかかわらず、
評価制度の仕組みによって株価だけが大幅に下がるケースです。
税法は、企業の実態を適切に反映した評価を目的としています。
そのため、評価方法だけを利用して税負担を軽減する取引については、制度の公平性を損なう可能性があると考えられています。
リース取引そのものが問題なのではない
誤解してはならないのは、オペレーティングリース自体が問題なのではないということです。
実際には、
設備投資資金を抑える
資金繰りを改善する
リスクを分散する
事業の柔軟性を高める
といった目的で、多くの企業が利用しています。
これらは企業経営として十分な合理性があります。
問題となるのは、実際の事業目的よりも株価引下げだけが前面に出ている場合です。
税務では「目的」と「実態」が重要になる
近年の税務行政では、「形式」だけではなく「実態」を重視する考え方が強まっています。
例えば、
事業上必要な投資だったのか
通常の経営判断として説明できるか
企業価値向上につながる取引だったか
といった点が重視されます。
オペレーティングリースについても、経営上の合理性が明確であれば問題となるものではありません。
一方で、税負担の軽減だけを目的とした利用であれば、制度見直しの対象となる可能性があります。
今後の制度改正への影響
国税庁では、非上場株式評価制度全体の見直しを進めています。
その背景には、
会社規模操作
株主構成の変更
子会社の利用
オペレーティングリースの活用
など、評価制度を利用したさまざまなスキームが存在することがあります。
今後は、個別の手法を規制するだけではなく、制度全体として実態をより反映できる評価方法へ見直しが進む可能性があります。
企業としても、短期的な評価額対策より、長期的な事業価値の向上を重視する姿勢がこれまで以上に重要になるでしょう。
税理士に求められる視点
税理士は、制度上可能な手法を紹介するだけでは十分ではありません。
オペレーティングリースを検討する際にも、
事業上の必要性
資金調達への効果
経営戦略との整合性
税務リスク
を総合的に判断することが求められます。
また、制度改正によって従来の評価手法が見直される可能性もあるため、最新の動向を継続的に確認することが重要です。
結論
オペレーティングリースは、本来、設備投資や資金調達を支えるための有効な金融手法です。しかし、その仕組みを利用して非上場株式の評価額を引き下げることだけを目的とした取引が行われる場合には、制度の公平性を損なう可能性があります。
そのため国税庁では、有識者会議で具体的な事例を示し、評価制度の見直しを進めています。今後は、リース取引の形式だけではなく、事業目的や経済合理性を備えた取引であるかどうかが、これまで以上に重視されることになるでしょう。
企業経営や事業承継においては、目先の株価対策だけではなく、企業価値の向上につながる資産活用を意識することが、長期的な成長への近道となるのではないでしょうか。
参考
税のしるべ 2026年7月13日号(1面)
取引相場のない株式の評価に関する有識者会議に現評価方法を濫用したスキーム8事例、次回8月の会合に議論の「たたき台」を提示
国税庁「財産評価基本通達」