「売上は増えているのに、なぜ利益が増えないのか。」
中小企業の経営者からよく聞く悩みです。
売上だけを見て経営していると、この疑問に答えることはできません。
利益の仕組みを理解するためには、「限界利益率」という考え方が欠かせません。
限界利益率を理解すると、自社がどの商品で利益を生み出し、どこに改善の余地があるのかが数字で見えてきます。
今回は、管理会計の基本となる限界利益率について考えてみます。
限界利益とは何か
限界利益とは、
売上高から変動費を差し引いた利益
のことです。
変動費とは、売上の増減に応じて変化する費用です。
例えば、
・商品の仕入原価
・材料費
・外注加工費
・販売手数料
などが該当します。
一方、家賃や人件費、減価償却費など、売上が増減しても大きく変わらない費用は固定費です。
つまり、
売上高-変動費=限界利益
となります。
この限界利益で固定費を回収し、その残りが営業利益になります。
限界利益率が利益構造を教えてくれる
限界利益率とは、
限界利益÷売上高
で求められる割合です。
例えば、売上が1,000万円、変動費が600万円なら、
限界利益は400万円
限界利益率は40%
になります。
つまり、売上が100万円増えるごとに、およそ40万円が固定費や利益に貢献することになります。
この割合を知るだけで、経営判断は大きく変わります。
売上だけでは見えない「利益を生み出す力」が数字で把握できるからです。
売上より限界利益を見る会社は強い
売上が大きくても、利益が少ない会社は珍しくありません。
例えば、利益率の低い商品ばかり販売すると、売上は伸びても利益は残りません。
逆に、高い限界利益率の商品やサービスを販売すれば、売上がそれほど増えなくても利益は増えていきます。
つまり、
「どれだけ売ったか」
よりも、
「どれだけ限界利益を生み出したか」
の方が、経営では重要になります。
数字を見る視点を変えるだけで、会社の戦略も変わってくるのです。
限界利益率は価格戦略にも役立つ
価格競争になると、多くの会社は安易な値下げを考えます。
しかし、限界利益率を理解していれば、値下げが利益に与える影響を冷静に判断できます。
例えば、販売価格を5%下げても販売数量がほとんど増えなければ、利益は大きく減少します。
逆に、価格を維持しながら付加価値を高めることができれば、限界利益率は改善します。
価格を決める際には、「売れる価格」だけではなく、「利益が残る価格」であるかどうかを考える必要があります。
商品ごとの限界利益率を比較する
管理会計では、会社全体だけではなく、商品やサービスごとの限界利益率も分析します。
すると、
利益率が高い商品
利益率が低い商品
利益率は高いが販売数量が少ない商品
売上は大きいが利益を生まない商品
などが見えてきます。
この分析結果をもとに、
販売を強化する商品
価格を見直す商品
販売を終了する商品
を判断できるようになります。
経営資源を利益率の高い分野へ集中できることは、大きな競争力になります。
税理士は利益構造を見える化する役割を担う
税理士は決算書を作成するだけではなく、管理会計を活用して利益構造を経営者へ伝えることも重要な役割です。
試算表を見ながら、
利益率は改善しているか
変動費が増えていないか
利益率の高い商品は何か
固定費は適正か
こうした分析を継続的に行うことで、経営者は数字に基づいた意思決定ができるようになります。
利益を増やすためには、売上だけではなく、利益が生まれる仕組みそのものを理解することが欠かせません。
結論
限界利益率は、会社の利益構造を映し出す重要な経営指標です。
売上だけを追いかける経営では、本当の利益は見えてきません。
限界利益率を継続的に分析することで、利益を生み出す商品やサービス、改善すべきコスト、適正な価格設定など、多くの経営課題が明確になります。
管理会計とは、過去の数字を記録するためのものではありません。
未来の利益を生み出すために数字を活用する経営の道具なのです。
参考
企業実務 2026年7月号
猫と学ぶ「経理力」の磨き方 第7話 予算、つくったはええけど誰も見てへんやん